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虐げられ令嬢と三体の魔物の話

作者: 山田 勝

「小娘!この森は魔王軍のシマやで、ワイは魔王軍魔物部隊の狐軍師やで!」



 どうしよう。森で食べ物を探していたら、狐に話しかけられた。

 茶色の毛並みにフサフサの尻尾、二本足で立っているわ。

 謝って逃げよう。


「ごめんなさい。魔王軍の森だとは知らなくて、今すぐ退散しますわ」


「待てや、魔王軍は鬼ではないんやで、魔物や、みかじめ料を払ってもらえばいいんやで」


「みかじめ料?」


「金貨100枚やで!」


「ヒィ、そんなお金はございませんわ!」


「『そんなお金はございません』って、言う事は、あれば払えるやろ?ケーコンコン!」


 目を細くして笑い出したわ。怖いけど何か可愛い。



「なら、手に持っているお魚で手を打とうか?」


 グゥウウウウ—-


 と狐がお腹を鳴らしているわ。お腹をすかせているのね。


「一尾でええで・・・・たった魚一尾で森で自由に食べ物を・・特別キャンペーンや。半分でええで、もってけ泥棒、今なら・・」


「はい、キツネ軍師様、お魚をどうぞ。まるごと一尾差し上げますわ」


「何やと!・・・ジュルリ、美味いやんけ!」



 美味しそうに食べているわ。

「フフフフ、私はルイーサ、この先の村の元商家の娘ですわ」


「フン!これで済むなと思ったらアカンで」

「はい、毎日、来たら分け前を差し上げますわ」



 それから、毎日、木の実やお魚をあげました。


 ええ、狐軍師ちゃんはとても頭が良いとのこと。


「ワイは軍師やで、何か困ったことがあれば言うんやで!」


「はい、頼りにしていますわ」


 膝の上にチョコンと丸まって座っているキツネ軍師ちゃんの毛繕いをしたら、まるで笑っているように目を細めている。


「自分、感心だから舎弟を紹介してやるで、この後、森の奥に行こか?森の愉快な仲間たちやで、皆、ルイーサを気に入ると思うで」


 キツネ軍師ちゃんはお仲間を紹介してくれるらしい。

 だけど、断ったわ。



「ごめんなさい。今日、お城で舞踏会がありますわ。だからいつもよりも早く帰ってお留守番をしなければいけないわ年頃の娘は着飾って来なさいとの伯爵夫人の命令なの」


「なん?ルイーサは15歳やろ?行かへんのか?」


「お父様が亡くなってから、後妻のお義母様は厳しくなったの。行くのはお義母様とお義姉様たちね。私は掃除と洗濯をしなければいけないわ」


「フン!やで!」



 とキツネ軍師ちゃんと別れて、

 着飾ったお義母様とお義姉様をお見送りしたわ。


「ルイーサ!帰って来るまでに掃除と洗濯終わらすんだよ!」


「ルイーサ、刺繍もやっといてね」

「そうよ。手紙の代筆もよ!」


「はい・・・」


 お父様が亡くなるまでは優しかったのに・・・

 お母様が流行病で亡くなった後、同じ商人の未亡人と結婚したわ。



「グスン、悲しいけども、森に行けばキツネ軍師ちゃんに会えるわ・・・」


 と思っていたら、お仲間を連れてやってきたわ。




「ルイーサ、来たで、これが舎弟の反逆の魔アナグマや」


「ギャ!ギャ!」


 一メートルくらいのアナグマがいたわ。瘴気にあてられ魔物化したのかしら。

 二本足で立ち。前足の爪が怖いわ。


「こいつな。アナグマのくせに農作物を荒らすのが嫌で群れからハグレたんやで」


「じゃあ、感心なアナグマさん・・」


「ギャ!ギャ!」


「そして、次はハスキー大王や!転移犬やで」


「ワン!ワン!」

「ワンちゃん・・・」


 狼みたいな見た目の灰色と青の犬・・・りりしそうだけど。


「ワン!ワン!ワン!」


 舌を出して屋敷中を走り回るわ。落ち着きのないワンちゃん。


「キツネ軍師ちゃん!ワンちゃんを止めて、散らかっていたら怒られるわ」


「大丈夫やで、何故ならルイーサはこれから舞踏会に行くのやで」


「ええ!ドレスと宝石ありません。皆、お義母様に取り上げられましたわ」


「大丈夫やで、反逆の魔アナグマ、やるんや!」


「ギャ!ギャ!」


 すると、アナグマちゃんは爪で鍵のついたクローゼットを壊してドレスを、宝石箱の鍵を壊して・・・


 お母様から私に受け継ぐハズだったドレスと宝石をとりだしてくれた。


「はよ。着替えるやで、ワイらは外で待ってるやで」




 着替えたら、外で荷車にハスキー大王がつながれていたわ。


「これでいくのやで!」


「ワン!ワン!」


「ええ、ハスキー大王ちゃんに荷車を引かせるのは可哀想です」


「大丈夫やで、元はソリを引いていたんやで、魔物化してパワーアップしたんやで、ほら、喜んでいるやで」


「ワン!」


「本当?」


 ええ、ハスキー大王が引く荷車でお城に着き。


 奇怪な犬の引く荷車で来た私を門番様はいぶかしげに見ながら通してくれた。


「ご夫人から着飾った娘は入れろとの命令を受けている。しかし、そのドレスは貴族の令嬢のものです。

 失礼ながら、どこかの家門ですか?今日は平民の娘限定です」


「いいえ、平民のルイーサですわ。お伴は森で出会った・・」


 魔王軍と言ったら仰天するだろうと想ったが、


「あら・・・:」


 三体はいなくなっていたわ。


「どうして、平民限定なのですか?」

「それは・・・夫人が人を探しているようだよ。詳しいことは知らない」




 ・・・・・・・・・・


 そして、パーティー会場に入ったら、伯爵夫人に呼び止められたわ。





「そこのお嬢さん。そのドレスと宝石は私のお姉様のものですわ。ルイーサと言ったわね。母の名は?」


「はい・・平民のハイネリーゼですわ」


「ああ、何て言うことを・・・」



 私は涙ぐんだわ。

 私が想い人と結ばれるために自ら身を引いたハイネリーゼお姉様。

 病弱だったわ。・・・長生き出来なかったのね。でも、娘は生きていると、今日の舞踏会を主催したわ。お姉様のドレスを着たルイーサがやってきてくれたわ。


 商人と結ばれたのね。


「お姉様は幸せだったのかしら・・」


「はい、生前、お父様と仲良く笑っていました」


 私はルイーサを抱き寄せ抱擁したわ。

「それで、今の状況を教えて」


「はい、義母と義姉に・・・」



 その時、パーティー会場に乱入者が現れたわ。


「魔王軍や、キツネ軍師やで、食べ物よこさんかい!」:

「ギャ!ギャ!」

「ワン!ワン!ワン!」



「何だ!魔物だ!」


「キツネ軍師ちゃん!」


 三体は、迷わずルイーサの義母、義姉に襲いかかり、


 キツネ軍師はバックをくわえて引っ張り。

 反逆のアナグマは爪でドレスを破き。

 ハスキー大王は彼女らの周りをクルクル回った。


「「「キャア—――!」」」

「犬、犬を見ているだけで目が回るーー」


「ケーコンコン!好物の瘴気の匂いがするコン!」


 


 蹂躙した後。


 ルイーサのところに来たわ。もしかして、ルイーサは顔見知り?


「キツネ軍師ちゃん!そんなことする子じゃないでしょう?」


「ケーコンコンコン!我は魔王軍やで、ルイーサに近づいたのはこれが目的よ。食べ物をゲットするんやで!・・・」



「ワン!ワン!」

「ギャ!ギャ!」


「君たちも、そんな子は嫌いだわ!」


 ルイーサが怒ると。



「・・・何や。この美少女から聖なる気を感じるで、そうや。ワイ、魔王軍の幹部と会う約束があったんや。逃げるで、いや、転進するで、この美少女は手強いで!」



 わざとらしい小芝居だわ。でも、ルイーサのおかげで退散したようにしたいのね。

 背を向けると。

 ルイーサはキツネをだきかかわたわ。


「グスン、コラ、ダメでしょう」


「アカン!聖女と魔王軍は仲良くなれないやで!ワイは畜生道を進むケダモノやで!」


 すると、


 ピカッ!


 ルイーサとキツネは聖なる青い光に包まれたわ。


 まさか、本当にルイーサは聖女?


 そして、キツネも光に包まれた。神獣に裏返ったのかしら。


「コーン!コン!何や、ワイ、悪い事をしてはいけない気になったや!何でや!」


「ワン!ワン!」

「ギャ!ギャ!」



 その後、旦那様に報告し、ルイーサを保護した。

 正式に伯爵家の養子にした、

 子供達との仲も良好だ。


「ルイーサ、ダンスの相手をするよ」

「いいえ、お兄様、ルイーサお姉様に絵本を読んでもらいますわ」


 彼女の清純な気が家中に良い方向に導いている。


 一方、元魔王軍三体は神獣として領民に慕われているわ。


 キツネ軍師は、


「アカン!それはネズミのように連鎖する講やで、いつか破綻するんやで、手を出したらアカン!」


「はあ、なら、投資はやめます」


 領民の商売の相談事をし。


 反逆のアナグマは、アナグマなのに穴を掘り土木工事を手伝う。


「ギャ!ギャ!」

「アナグマさん。ありがとう。ご褒美の野菜だよ」

「ギャ!」


 ハスキー大王だけはクルクル回って走り回っている。


「ワン!ワン!ワン!」

「ハスキー殿、お食事ですよ!」

「ワオーン!」


 いずれも当家の保護を授けた。



 そうそう、ルイーサをイジメた義母たちは。


領主権限を用いて財産を没収し、ルイーサの遺産にして。


ルイーサにしたことと同じことを命じたわ。


「そ、そんな、魔の森で食べ物を探させなんて・・」

「無理ですわ。そんなことはしたことありません!」

「ルイーサは?謝罪をするわ!」


彼女らは魔物が出る森にルイーサを行かせたわ。それはとてつもなく残酷なことよ。


「お前達がしたことだわ。やりなさい。どこの家中もメイドとして雇わないように触書を回したわ」


実質、死刑宣告に等しいが、このことはルイーサには黙っておく。

貴族の裏の顔は見せなくても良いだろう・・・・・


それが姉に出来る精一杯の恩返しだわ。









最後までお読み頂き有難うございました。

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