6−10 模擬戦 2
※ このお話の中には過激な表現の描写があります、ご注意下さい。
地上に戻った私に対して眷属の集団が盾と槍を構えて突撃してきた。
二十人前後の眷属が横一列に並んで巨大な盾を構え、その盾の隙間から槍を突き刺してくる。その列が何重にも重なり一つの集団になって私に襲いかかってきた。
これは古代ギリシア時代から用いられたファランクスという密集陣形だ。
私は切断の神霊術を使って、眷属が構えていた槍を全て切断し、そのまま右足を振り下ろした。するとファランクス陣形をとっていた眷属達の足元が崩れ始め、地面に大きな亀裂が発生して眷属達を飲み込んでいった。眷属の中には浮遊術を使って地面の崩壊から逃れた者達もいたがそうは問屋が卸さない。私は小型の石礫を創ってガトリング砲の様に連射して浮かんでいる眷属達を撃ち落としていった。まるで空中で気絶したカラスの様に無様に落ちていく眷属達を見ながら、更に前に進み眷属達の軍勢と相対していった。
「さあ、次は何をしてくれるのかしら?」
眷属達は一瞬たじろんでいたがすぐに持ち直し、私の前に武器を持った二人の眷属が現れた。
「この先は冷気の炎、アフーム・ザーの名にかけて通しはしない!」
「同じく青い稲妻であるフサッグァが相手になろう!」
また暑苦しい輩が出てきたな。見た目的には三国志の武将みたいな格好をしているが、何だかやたらと暑苦しい感じがするんだけど。持っている武器が青龍偃月刀と蛇鉾だから余計にそう見えるのかな?
私は『煤竹の笛』を吹き鳴らし、私専用の武器を創造した。
私はタカアマハラにいる時に様々な武器の訓練をしてみたが、私が最もしっくりと馴染んだ武器は薙刀だった。相手も長物の武器だから丁度いいだろう。
私は八相の構えをして二人に相対した。
「ふむ、見た目は子供だが構えに隙がない、相当な修練を積んできたと見える……」
「まあ、教える人が神様ですからね、手加減という物を知らない人なんですよ」
私はお姉様に叩き込まれた地獄の特訓を思い返しながら呟いた。
そして三人は阿吽の呼吸で通じ合っているかの様に、同じタイミングで激突した。
薙刀の動きは槍術に似ているが槍術と違って突きを多用しないのが特徴だ。薙刀の穂と言われる刃の部分はほぼ日本刀と同じものでとても繊細だ。アフーム・ザーが使っている青龍偃月刀とは形状が似ているが使い方がまるで違うのだ。
眷属の二人は長物の武器を振り回してまるで旋風のように立ち回っていたが、私はその攻撃をするりとかわしていく。さながら両手をブンブンと振り回す二匹の熊の周りを優雅に飛ぶ蝶の様に、二人の攻撃は私にはかすりもしなかった。
「……美しい、まるで優雅な舞を見ているようだ」
観戦席から漏れ出る感嘆の声を尻目に私はひらりひらりと二人の攻撃をかわしていく。
その様子に焦れてしまったのかフサッグァが神霊術を使って青色の雷を次々と落としていった。
……なるほど、彼の二つ名は得意な神霊術を指していたのか。厨二病患者じゃなくて良かったよ。
私は無数の稲妻を躱しながらフサッグァの懐に飛び込み、そのまま両足を薙ぎ払った。フサッグァの膝から下が切り落とされ、フサッグァは崩れ落ちた。そして私はそのままフサッグァの両腕も切り落とし戦闘不能にしていく。
……まあこれくらいなら簡単に治療できるでしょ。
「……フサッグァをいとも容易く切り捨てるとは、神とはやはり無慈悲なものだな」
「貴方達は死を超越しているのでしょう?手足を切り落とされたくらいでどうという事でもないでしょうに」
アフーム・ザーが青龍偃月刀を構え突進してその勢いのまま私の胴体を真っ二つにしようと真横に薙ぎ払った。
私は青龍偃月刀をギリギリ掠めるくらいな程度にバックステップを踏み、すかさず前にダッシュして石突でアフームの顎を砕いた。
アフームの顎の骨は砕け、口からダラダラと血を流している。
「……きゅ、きゅさみゃー!」
今のは「貴様」と言いたかったのかな?顎の骨が折れたせいか上手く喋れないみたいだ。
すると、アフームの青龍偃月刀の刀身に青くゆらめく炎がまとわりついて更にアフームの周囲の気温が急激に下がり始めた。
……これが冷気の炎ってやつかな?けど、これに何の意味があるんだろう?
アフームは青龍偃月刀を上段に構えて私めがけて振り下ろしてきた。私は当然それを避ける。アフームが振り下ろした青龍偃月刀が刺さった地面がかなりの範囲で凍っている。
なるほど、あの炎は触れた対象を瞬間冷凍するのか。……それでも炎の形にする必要性は謎なのだが。
「まあ、ありきたりですね……」
古今東西、漫画にもゲームにもアニメにも魔法剣みたいな術は多く知られている。武器で物理攻撃をして神霊術で属性攻撃をするみたいな事なんだろうが、漫画なんかに出てくる魔法生物とかそういった類の化物には効果があるかもしれないけど?
「その神霊術って何の意味があるかはわかりませんが本当に必要な行動なのでしょうか?私一人相手に、しかも中身は神とはいえ人間相手にはその攻撃はオーバースペックすぎて意味があるとは思えませんね。例えるのなら、蚊を叩くのにエクスカリバーを使っているのと同じですよ……」
「にゃ、にゃにー(な、何ー)」
「……何を言っているのかわかりにくいので顎の負傷は治してあげましょう」
私は治療術を使ってアフームの顎の骨折を治した。……いちいち頭の中で翻訳するのも疲れるしね。
「先程の続きですが、貴方が繰り出す攻撃が当たれば簡単に致命傷になります。わざわざその青い炎を付与するなんて神霊力の無駄使いですよ。やるなら別々の攻撃にして絶え間なく攻撃した方が効率的でしょう」
「……む、むう」
「私が貴方の立場なら身体強化を高めてスピードを上げますね。要はやられる前にやるですよ」
私は身体強化の強度を高めて瞬間移動したかのような高速移動をしてアフームの胴体を真っ二つにした。
「ぐわっっっーーー」
「このように相手の目に見えない速さで……って聞いていませんね?」
まあいっか。私は別に彼の先生でも何でもないしね。
それにしても、ここまで戦って戦闘不能にしたのは百人には届かないな。
まあ普通の軍隊なら損耗率が三割を超えると集団としての機能はほぼ停止するのだけど、全滅の定義は結構幅広いからな。それにあちらはまだ戦意を失ってはいないみたいだしね。
でも、このまま戦っても効率が悪い事は確かだ。もっと効率が良い方法はないものかしら?
次回も模擬戦の続きとなります。




