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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第六話 入学前の慌ただしい日々

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6−5 枢機卿達との面談 2

前回に引き続き、枢機卿達との面談のお話です。

「……私が発言しても宜しいですかな?」


 枢機卿達の最前列に鎮座しながら今まで一言も発してこなかった枢機卿が沈黙を破った。


「アリア様、私はトゥルー教の枢機卿筆頭のダゴンと申します」


 枢機卿筆頭?この人、ここにいる枢機卿連中のリーダーなのに今まで挨拶もしないで最前列で座っていたの?礼儀知らずにも程があるんじゃない?


「……貴方がこの連中のリーダーでしたか。今まで挨拶もせず座っているだけでしたのでただの置き物かと思っていましたが」

「……我々とは友好関係が構築されていないと考えていましたので」

「つまり、私達は敵対していると貴方は考えているのですね?」

「明確に口にはしませんでしたが、今までの経緯を考えますとそうなるのではないでしょうか」


 ダゴンはいきなり敵意をむき出しにしてきている。

 まあそれもしょうがないか、お父様が行った行為はこの人達にとっては敵対行為と思われていても仕方がないしね。


「私達、トゥルー教の目的は私たちの主人である原初の精霊様達の復活と、この地に再びドリームランドを創り出す事です。ケルト王国の工作もその一連の目的の為の一つに過ぎません」


 ドリームランド……、トゥルー教が掲げる理想郷だったと記憶しているけど。


「貴方方が言うドリームランドとはクン・ヤン教国だけの話ではないという事ですか」

「はい、この世界は元々我らの主人である原初の精霊様達が創り出した理想郷を設立するための世界です」

「つまり、トゥルー教とはこの世界を元に戻すために活動していると言う事ですか?」

「はい、ここまで言えばアリア様ならご理解できたと思いますが……」


 全く失礼なやつだな。お前の言う通り、さすがに分かりましたよ!

 つまり、トゥルー教はケルト王国やユピテル帝国を乗っ取ることではなく、この世界そのものを創り直すために活動しているのだ。


「理解はしました、ですが納得はしていません。もし仮にその願いが成就されたとしましょう。ですが、またお父様に破壊されるだけではないですか?今の貴方達を見ていればある程度貴方達の主人の実力も概ね把握できます。もし原初の精霊が全て復活出来たとしてもお父様に対抗するには役不足です。その辺りはどの様に考えているのでしょうか?」

「確かにこのままでは同じ事が繰り返されるだけでしょう。しかし、我らの主人がその事を失念しているとお考えですか」


 まあ、普通は対策を考えるよね。でも、対策と言っても相手はお父様だよ。絶対神とか全能神とか言われちゃってる人相手に対策なんてできるのかなあ?


「……本当にお父様に対抗できると考えているのですか?」

「我らが主人には自信がお有りの様です」


 へえ、ちょっと興味が湧いてきた。そんな対抗策があるのならば一度見てみたい。


「それは、私が確認することは可能ですか?」

「……アリア様、それを貴方に見せることは出来ません」


 ちぇ、やっぱり見せてはくれないか。


「では、本来の趣旨に戻りますが貴方方はケルト王国に対しての工作を止める事はないとお考えなのですね」

「いえ、この者達は納得していなかった様ですが、私はアリア様の提案に従っても良いと思っております」

「私達と敵対関係にあると言っていたのは貴方でしたが、今の言動は矛盾していませんか?」

「先程までの言葉はアリア様の質問に答えただけに過ぎません。いずれは敵対するとは思っていますが、私としましては現時点では神と敵対したいとは思っておりません」


 なるほど、このダゴンって人は現状把握がきちんと出来る人みたいだ。性格には難がありそうな人だがそこそこ有能みたいだ。


「では、ケルト王国に百年間ちょっかいを出さないでもらえるのかしら?」

「それにあたっては、こちらからの条件を飲んでいただけるのであれば……」

「条件?」

「はい、アリア様がトゥルー教を認めていただけるのであれば我々は今後百年間ケルト王国に対して全ての工作活動を停止いたします」

「……おかしな事を言いますね。私は一度も貴方達の宗教活動を否定した事はないのですが?」

「ならば言い換えましょう。アリア様は我らの活動をお認めいただけますか?」

「つまり、現状では神への対抗手段がないので私に保護をしてほしいと言っているのですか?」


 ダゴンは答えなかった。

 そこで私は考えてみた。私がこの条件を了承すると言うことは私がお父様の決定に反対するのと同意なのだ。行程が多少過激だったがお父様が彼等の世界を壊した事に異議はない。となると、私がこの条件を飲む事はあり得ない話だ。

 おそらく彼等もその事は想定しているだろう。なのにあえてこの様な条件を提示するのはなぜなのだろうか。あわよくばという淡い期待を込めて?いやいや、そんな不確定な要素をこの場に持ち込むだろうか。特にこのダゴンという男はこの場だけの印象だと相当な切れ物に感じる。だとすれば、何かこの発言には裏があるのではないだろうか。私はそれを見極めなければならない。


「……そうですね、当然ですが私はお父様の裁定に異議を唱える事はありません」

「……それでは交渉は決裂でよろしいのですか?」

「私の言葉は過去の決定を否定はしませんが、その言葉が未来にまで有効であることではありません」


 私は過去の原初の精霊の行いは正しかったとはとても思えない。けれど、これから行おうとしていることまで否定する気にはなれない。もしかしたら、どこか落とし所があるかもしれないし、もっと理想を言えば両者が和解する未来だってあり得るかもしれないと思っている。

 ダゴンは揺さぶりをかけることによって交渉を有利に進めようとしている。もしここで私が彼等を否定をすればケルト王国への破壊工作を加速させるかもしれないし、神への抵抗も本格化させるつもりなのだろう。トゥルー教内の結束も高まるだろうし、場合によっては精霊達の排斥運動を展開させてくるかもしれない。

 ここで、私の方針が決定した。


「でしたら、貴方達の価値を私に示してください」

「……価値?」

「ええ、そうです。私に貴方達がお父様に対抗出来る事を証明してください」

「それは、具体的にどのような……?」

「そうですね……、貴方達原初の眷属全員と私で模擬戦を行いましょう。もしその模擬戦で貴方達が勝利すれば私は貴方達の活動を認め、お父様に取りなしも致しましょう」

「それは誠ですか……」

「ええ、それ程の力を持っているのであれば敵対する事は愚策ですからね。私が間に立って和解できるのであればそれに越した事はありません」


 枢機卿達は明らかに動揺していた。ダゴンは顎に手を当てて深く考え込んでいる様だし、イタカはオドオドしながら模擬戦にならない様に周囲を説得しているみたいだ。


「アリア様と模擬戦をして勝てるはずがありません、模擬戦は辞退すべきです!」


 イタカが必死になって叫んでいる。……そこまで怯えるなんて、私、そこまでイタカに何かしたかな?


「イタカ、私相手に勝てない若しくは善戦出来ない様であればお父様への反抗は即刻中止すべきです。お父様に反抗するという事は精霊界にいる全ての神と精霊を相手にするという事ですよ。お父様以外にも神は私を含め三人いますし、精霊の数は兆を超えいまだに増え続けています。眷属に至っては無量大数の域に到達しています。これら全てと戦う事はないでしょうが、貴方達は空に輝く星の数ほどの軍勢と戦うことになるのです。もし、貴方達の主人である原初の精霊がお父様を越えたとしても、この軍勢に原初の精霊だけで勝てると思いますか?少なくとも原初の精霊がお父様を抑えている間に貴方達が他の神や精霊と戦わなくてはなりません。私相手に模擬戦を躊躇している様ではとてもとても……」


 私は枢機卿達を大いに煽ってみた。

 さあ、きちんと挑発に乗ってくれないかな。その方がその後の展開が楽しくなるからね。


「……アリア様、我々はその模擬戦の申し出を受理いたします」

「わかりました、ならばスケジュールは追って沙汰します。ただし場所だけは先に説明しておきましょう。模擬戦の場所は闘技場コロッセオです。闘技場への転移は私達で行いましょう」

「確かアリア様が創造された空間でしたな。それではアリア様が有利なのではありませんか?」

闘技場コロッセオはまだ産まれたばかりで、あるものといえば草原と空くらいなものです。それにそこならば強度がタカアマハラ並みに頑丈ですから多少の無茶をしても大丈夫なのです」

「……つまり、我々に本気を出せと仰っておられるのですね」

「何事も本気で取り組まないとつまらないでしょう?それとも手加減をして欲しいのかしら?」

「……わかりました。それではご連絡をお待ちしております」

「ええ、楽しい模擬戦にしましょうね」

言葉巧み?に枢機卿達を煽り、模擬戦の開催を強引に約束させたアリア。


次回はアリアの思惑についてのお話となります。

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