6−4 枢機卿達との面談 1
人は嫌な事でもやらなくてはいけない時があります。
今回はそんなお話です。
そんなこんなで、あっという間にトゥルー教との面会日になってしまった。
私のスケジュールがギチギチに詰まっているせいで完全に時間の感覚がずれてしまっている。……まさかここに来て日常がブラックな環境になるなんて思わなかった。
「……姫様、お疲れなら面会を延期された方がよろしいのではないでしょうか?」
「ここで延期してしまったら、魔術師学校に入学するまで時間が取れないわ。強引でも早めに厄介事を済ませてしまいましょう」
このところの過密スケジュールのせいで少々イライラが募っている。本当なら、もう家に帰ってベットで泥の様に眠りたい心境なのだ。
ダグザに連れられて、ダグザの住処の応接室に通されると既にトゥルー教の枢機卿達が応接室で待ち構えていた。
またゾロゾロと大勢を引き連れてやって来たな。結構広いこの応接室に十人以上の枢機卿と住処の主人であるダグザと私達を入れたらかなりかなり狭く感じてしまう。
「遅くなってしまって申し訳ありませんでした。この所少々スケジュールがごたついてしまっていまして……」
「いえ、こちらこそ急に面会を申し込んでしまって申し訳ありません」
全くだ……とは思いながらも顔には出さず、席に座りクリスから出されたお茶の飲んだ。
「それで、本日はどういったご用件なのですか?トゥルー教の皆様が私に会って話すことなんて思いつきませんが?」
「……先日、アリア様からイタカに託された伝言の趣旨を説明していただきたく存じます」
やはりそれか……、やっぱり思いつきで行動するのは碌な結果にはならないなと反省していた所、視界の隅の方でイタカが恐縮したかのように縮こまっているのが見えた。
「趣旨も何も、言葉の通りケルト王国におけるトゥルー教の活動を百年程自粛していただきたいと申しているだけなのですが、それにどの様な疑問がおありなのですか?」
「……アリア様は我々がケルト王国でどれだけの時間と労力と資金を費やしてきたかご想像頂けませんか。ここでケルト王国から手を引く事はそれら全てを無駄になってしまいます」
「……理解できません。貴方達が行ってきた事柄が社会的に意義があるものならいざ知らず、ケルト王国で行ってきた行為は内乱誘発の罪で裁かれてもおかしくはない行為だったではありませんか。それを潰した所で私に何か咎があるとお考えですか?私の行動はケルト王国民の賛同を得ると思いますが、貴方達が行った行為は平和と繁栄を謳うトゥルー教の教義に反するものではなかったというのですか?それとも、その教義は見せかけだけで本当は破壊と殺戮を楽しむカルト宗教だったとでもいうのでしょうか?」
「そんな事はございません。我々は真に平和と繁栄をながっております」
「では、なぜこんな大勢の人が死ぬような計画を推し進めるのです。それにケルト王国だけではなく他の国々にも同様の計画を進めているとも聞きましたが」
「アリア様はイタカから我々の真なる目的を聞き出していると伺いましたが」
「貴方達は原初の精霊を封じている封印の礎を探したい様ですね。でもお父様がそんな大事な礎を星の地表に設置するかしら?ましてやこの箱庭の中に設置していたら間違いなくそこは神殿なり聖地として崇められたりしているのではないかしら?」
「我々もそう考え、封印の礎は王宮の中にあるのではないかと推測しています」
「……なるほど、それでケルト王国にちょっかいを出していたのですね。建国以来、王宮の位置を変えていない国はケルト王国とユピテル帝国ぐらいですし」
ケルト王国は初代国王以来代々ダナーン王家から国王を選出していて比較的安定した歴史を辿っている。その為、内乱らしい内乱も起こった事はなく、外国からの戦争も北部諸国とケルト王国の南側にあるログレス王国だけだった。しかもログレスとの戦争は国境沿いで両軍睨み合いの最中ログレスの当時の国王が病気で亡くなった為、ログレス軍は撤退してそのまま終戦してしまったのだ。両軍共に死傷者ゼロで唯一亡くなったのはログレスの国王のみという変わった戦争だった。それに元々ログレスの首脳部はケルト王国との戦争は反対だったらしく、亡くなった国王が強引に開戦してしまったために頭を抱えていたのだという。もしかしたら、ログレスの国王は暗殺されたのかもしれないけど真相は闇の中だ。ケルト王国とログレス王国が戦争したのはその一回のみで、今ではこの世界では珍しく友好国として国交を結んでいる。
一方ユピテル帝国は箱庭中央にあるこの世界最古の国家だ。
ケルト王国と違って箱庭の中央にある国家ということで、昔からユピテル帝国は四方八方から戦争を挑まれてきた。特に北方と西方からの戦争はほぼ数年から数十年間隔で何度も戦争になったがユピテル帝国は常勝無敗、建国以来一度も戦争で負けたことがないのだ。もちろん王宮にも攻め込まれた事はなく建国以来同じ場所に建っている。
「勿論、王宮に封印の礎があるとは限りませんが可能性は高いと思っております。それ故にアリア様がケルト王国に手を出すなというご命令に納得いかない者が多いのです」
「私は神でもありますが、今はケルト王国の貴族の一人でもあります。もしケルト王国で内乱が起こる様な事態が行われているのであれば止めるのは当たり前ではありませんか」
「アリア様がケルト王国の貴族の一人と仰られるのであれば、内政干渉になるのではないのですかな」
「クン・ヤン教国では他国を貶める事が政治だというのですか」
「……それも政治の一面である事に否定はしません」
「確かに普通の国であれば他国を貶める工作がある事も否定しません、ですが貴方達の国は宗教国家です。トゥルー教の教えでは他人を貶めることも是とするのですか?それとも異教徒ならば弾圧しても良いという考え方なのであれば、それこそお父様が貴方達に課された行為を正当化することになりますが、貴方達はそれでも構わないのですか?」
「……アリア様は、フーシ様が行われた行為は非道であるとお考えなのですかな?」
「論点のすり替えはやめてください。今は、私が貴方達に問いかけているのです」
そこからしばらく沈黙の時間が始まった。
誰も言葉を発さず時間だけが過ぎていった。
アリアはこの所の忙しさのせいでイライラが募り言葉が尖りまくっています。
次回は枢機卿達との面談の続きとなります。




