表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第六話 入学前の慌ただしい日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/121

6−2 魔術師の杖

 久しぶりの自宅での晩餐は、我が家の料理人が腕によりをかけて御馳走を用意していたが私達の胃袋があまりコッテリとした味付けを求めていなかったせいでみんな少ししか食べれなかった。……ごめんね、美味しかったけど今はあっさりとした物が食べたかったんだよ。あー、お茶漬けが食べたい。

 両親や伯父さん達もお疲れ気味だったのもあって晩餐の後の団欒もあっさり風味だったし、最後の方になるとアル兄さんは半分瞼が閉じている様な状態だった。その為、私達は早々に自室に戻ってきた。けれど、私にはもう一仕事残っているんだよね。自分で言い出した事だし、今更やらないなんて事は出来ないか。




 私とクリスは自室に戻り早速闘技場コロッセオに転移した。厄介ごとは早めに済ませておきたかったのだ。


「所で、姫様の神霊術の威力を下げる方法なんてあるのですか?姫様の神霊力が強すぎて限界まで制御しても岩山一つぐらい吹き飛ばす様な威力だったではありませんか」


 私は以前ダグザの住処で神霊術の練習をしていた時、威力減衰の方法を色々と模索していたのだが、ことごとく失敗してしまった。神霊力の蛇口を限界まで絞るとか、ピタゴラ装置の様に多数の術を経由してから発動するとか色々やってみたのだが、そもそも私の神霊力の性能というか純度が良すぎて多少の対策では攻撃力は落ちなかった。蝋燭に火を灯すためにマッチやライター程度の火の魔術を使うのが普通なのだが、私が行うと、同じ火の魔術を使ってもドラゴンのファイアブレスみたいな炎になってしまう。これでは、いくら蝋燭に火は灯せても辺り一体焼け野原になってしまうだろう。


「確かに今までは私が神霊術の威力を絞ろうとしてことごとく失敗してしまいました。しかし、私と同じ神霊力を持っているイタカは人間の魔術よりは多少威力は高めでしたが同程度の魔術を行使していました。つまり神霊力で魔術を行使出来るのです」

「そういえばそうでしたね。では姫様とイタカでは何が違っていたのでしょうか?」

「……これは憶測だけど、肉体の性能の違いが大きいと思う。私やクリスはお母様が創造した特別性の肉体なのでタカアマハラで使っていた神霊術をそのまま使うことが出来るけど、イタカや私達の眷属達はそこまでの性能を持った肉体ではないの。実際、アダムやカールが使う神霊術はクリスよりも格段に術の性能は落ちている。つまり肉体が神霊力のフィルターの様な役割を持っていると思う。私はこれを利用できないかと考えているの」

「となると、姫様が魔術を行使しようとする度に肉体を創り変えるという事でしょうか?」

「出来なくはないけど、現実的では無いわね。魔術を使う度に肉体を入れ替えるのも大変だし不自然よ。肉体を毎回入れ替えるくらいなら分身を創ってその子に魔術を使ってもらった方が自然じゃ無いかしら」

「……それだと、姫様の替え玉疑惑が出てくるのでは無いでしょうか。そんな疑惑が噴出したら辺境伯やご両親にご迷惑がかかるのではないでしょうか」

「それは断固拒否したいわね。まあ、分身なんて最初から考えていなかったから使わないけど、今後魔術をマルチで展開したい時には重宝するかもしれないわね」


 分身を使ってマルチキャストで魔術を行使する姿はかっこいいかもしれないけど、私は分身なんか使わなくても普通に複数の魔術を同時に展開できるから、分身分の神霊力が無駄使いになってしまう。


「そこで思いついたのは、この世界の魔術師なら誰もが持っている杖を使って分身と同じ効果を得られないかなって」

「杖の形をした分身のような物でしょうか?」

「クリスは察しがいいわね。別に魔術くらいの威力なら私本人が術を行使しなくてもいいのよ。分身だったら替え玉が疑われるかもしれないけど、杖ならそのリスクは減らせるし多分誰にもバレないと思う。それに分身といえど杖の形にする事によって私の肉体よりも相当性能は落ちるでしょうし、思考も私と直結すればほぼ私が魔術を使ったのと変わらないと思うの」


 分身に別人格を持たせれば、魔術を行使する時にタイムラグが発生するかもしれないし、私の意図した魔術を行使するとは限らない。なので杖に思考回路を持たせず私と直結する事で私が意図した魔術を使えるようにするのだ。


「取り敢えずは実際に杖を創造してみましょう。何度もトライアンドエラーを繰り返してブラッシュアップしていくのよ!」


 それから私は、何度も杖を創っては失敗を繰り返し自分が理想した完璧な自己分身杖を創り出した。

 試しに何度も攻撃魔術を使ってみて威力を確かめる。強過ぎても弱過ぎても駄目なのだ。私は精霊の弟子として名が通ってしまっているし、魔術師の塔で対魔物用魔術も披露してしまっているので魔術の威力が弱過ぎると疑われる可能性がある。かといって威力を強くし過ぎると本末転倒な事態に陥る。

 その繰り返しの作業は明け方近くまで続いた。




「……これでどうかしら?」


 私は何百回目かの杖の創造をして、ようやく納得出来る杖の創造に成功した。試しに攻撃魔術を使ってみたが、魔術師の塔で見た攻撃魔術よりかは若干強めな威力だったが然程違和感はない様に思える。

 私はクリスに確認を取ってみたが、クリスの表情は非常に不愉快な表情を浮かべていた。


「……必要だとはいえ、姫様がこんな貧弱な神霊術を使わなくてはならないなんて」


 ……うん、クリスのことは放っておこう。


 それにしても、もうちょっと小さくしたかったな。私の右手に握られている杖は魔術師の塔で見たタクトのような短杖ではなく、長さが一メートルくらいあるような物だった。形状は違うがステッキぐらいはあるだろうか。


「この杖だと持ち運びには不便ね……」


 私の身長は百二十センチメートルに届いていない。日本人の七歳の女の子の平均身長よりも若干低めなのだが、ケルト王国の人達は日本人よりも背が高く、スラリとしている。なので私はこの世界でも身長がかなり低い女の子になってしまった。そして杖は私の身長と比較すると身長の約八割の長さになる。とても携帯できる様な物ではない。この大きさだと背負い込まないと持ち運びはできないね。

 となると、杖を使う度に『貯金箱』からカールに転送してもらう?うーん、それだと使いたい時に咄嗟に取り出せない気がするし、それに面倒臭い。

 だとすると、この杖を使いたくなったらその都度杖を創造してみるか。試しに一度創ったばかりの杖を壊し、再び杖の創造をしてみた。『煤竹の笛』と『叡智の書』のお陰でスムーズに杖を創造できる。神霊力の消費も思ったほど消費していないみたいだ。

 その後、何度も破壊と創造を繰り返してみた結果、完全に杖の創造をマスターしたみたいで一瞬で杖を創造できる様になった。


「姫様、その杖に名前をつけてみてはいかがでしょうか。おそらく、他の魔術師の方の杖と形状や大きさが違い過ぎますし、後であれこれと尋問されるのではないですか?その前にその杖の由来や名称を設定しておいた方がスムーズに答えられるのではないでしょうか」

「うーん名前か……、別に魔術師の杖でいいんじゃないの?面倒だし『メイガスの杖』にしましょう。単純明快この上なし!由来はそうね、これも精霊達からプレゼントとして貰ったでいいんじゃないかしら」

「……随分と投げやりな感じですね」

「どうせ、凝った設定を考えたとしてもみんな興味を持たないわよ。それにうっかりミスを無くすには単純な設定の方が色んな解釈を広げられるしね」

「……なるほど、ご自身の迂闊さも考慮された設定だったのですね。これは思いもよりませんでした」

「……なんだか、うっすらと馬鹿にされた様な気がするけど、まあいいわ」


 そう、私は寛大な心の持ち主なのでその程度では怒ったりはしない。……心の中で愚痴を言うくらいで許してあげよう。

 それに、さっさと帰らないと完全に世が明けてしまう。

 色々と試していたら熱中し過ぎてしまった。

 一応私には睡眠は必要では無いのだが、これからのスケジュールを考えると少しでも休息は取っておきたい。


「今から戻っても寝る時間はありませんね……」

「言われなくてもわかっているから!」

「本日も、姫様のスケジュールは盛りだくさんですよ」

「それも、言われなくてもわかっているから!」


 新しい朝は、果たして希望の朝になるのだろうか?

一応、これでアリアの神霊術強すぎ問題は解決しました。


魔術師の杖のデザインは、魔法少女が持っているような装飾が派手なデザインではなく、お伽話の魔女が持っているような古臭い木製の杖の姿と思ってもらえたらと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ