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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第五話 お披露目パーティー開催

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5−13 黄色眷属の帰郷 (イタカ視点)

イタカがクン・ヤン教国の首都ルルイエに戻り、他の枢機卿達との会議に臨みます。

 俺はルルイエに戻るや否やすぐに他の枢機卿達を招集するように指示を出し、そして招集が完了するまでのわずかの間に、湯浴みをし衣服を着替えてようやく人心地がついた。


「イタカ様、今までどちらにいらしたのですか?ずっと連絡もなかったので心配いたしましたよ」

「ああ、心配させてすまなかったな。それも会議で説明する。さあ、大会議室に急ぐとしよう」


 普段、俺の世話をしてくれている助祭達は不思議そうな顔をしながら俺の後に付き従った。……何故そんな顔をする?そんなに俺が謝った事が不思議か?

 そんな事を考えながら廊下を歩き、大会議室に入ってみると半分程席は埋まっていた。急遽、枢機卿達を招集したためこの場に駆け付けられなかった者も多いだろう。


 ……かつてはこの会議室では入りきれないほどの眷属達がいたのだがな。


 さっきまで昔の事を思い出していたせいか、妙な寂寥感を感じる。

 だが、この先の選択を間違えてしまうとより多くの仲間達を失いかねない。同じ過ちを繰り返さない為にも、今はどうにかして仲間達を説得しなければならない。


「この会議は枢機卿以外の者には聞かせられない内容だ。枢機卿以外は退出するように」


 枢機卿達に従っていた司祭や助祭はゾロゾロと退出して行って、この会議室に残ったのは枢機卿達……原初の眷属達だけになった。

 大会議室の重たい扉が大きな音を立てて閉まり、少しばかりの沈黙が続いた後に枢機卿の一人が言葉を発した。


「イタカ、一体この会議は何の目的で招集された?お前の失踪の件と関連があるのか?」

「ああ、それを今から説明する」


 俺はケルト王国での事件とアリア様の事を包み隠さず全て打ち明けた。


「新しく生まれた神だと……。聞いていないぞ」

「この地は精霊界からは隔離されているからな、情報が入ってこないのは当然なのだが、ニグラスは何も言ってこなかったのか?」

「ニグラスは我々とは敵対はしていないが友好的とまでは言えまい。ただ我々を黙認しているだけに過ぎないのに、そんな情報をわざわざ教えるはずがないだろう」

「イタカ、其方はそのアリア様とどの程度親密になった?アリア様の人となり等、其方の感想を聞かせてくれ」


 アリア様の人となりか……。


「あくまでも俺の感じた印象だが、彼女はまだまだ子供で我儘だ。神としてはまだ成熟してはいないだろう。だが、その力はその我儘を許容出来る程の強さを持っているのは間違いない。神霊力だけで比べたら、フーシ様に匹敵するかそれ以上だと考えられる」

「フーシ様はその様な子供をこの元ドリームランドに送り込んだのか?この地を彼女の遊び場にでもするつもりなのか」

「いや、私も数回しか会ったことはないが、フーシ様は冷徹な独裁者だ。たとえ家族だとしてもその様な理由では子供など派遣はされないだろう。それよりも、この件にはフリン様が関与しているのではないか?」

「フリン様が……?」


 フリン様はこの世界の誕生より後に生まれた神だ。ここにいる連中でフリン様に会った事がある者はいない。しかし、フリン様はアリア様と違って誕生したのは既に数十万年前の話だ。流石にそれだけの年月が経過しているのでフリン様に関する情報はこの世界にも流れてきていた。


「フリン様は権謀術数に長けた人物だと聞いている。アリア様を使って何か企んでいるのではないか?」


 それはどうだろう?アリア様は他人の指示に疑いもなく従う人物だろうか。彼女はどちらかと言うと人を使う事に長けた人物に感じる。


「今はその様なことよりも、アリア様の提案をどうすれば良いか議論すべきだろう」

「……そうだな、確かケルト王国に百年間手出しをしないだったか」

「ケルト王国の担当はイタカだったな」

「ケルト王国における計画はほぼ失敗し、人材、資金、情報の全てを失いました。既に王宮にも情報が回っているでしょう。クン・ヤン教国としてケルト王国に弁明をしなければ国交を断絶されかねません。そうなれば、他の国の計画にも支障が出かねません。計画を失敗させた張本人が言うのも何ですが、ケルト王国の計画は白紙に戻す方が良いのではないでしょうか」

「もし、アリア様の提案を反故した場合、敵対する事は可能か?」

「アリア様と敵対するのは断固反対です!無謀過ぎます」

「だが、アリア様と戦った経験があるのはイタカ、其方だけだ。私が言うのも変だが、其方は戦闘は得意ではないだろう。もしかしたら過大評価をしているやもしれん」

「確かに俺は戦闘向きの眷属ではないですが、そう言う次元の話ではありません。そもそも俺とアリア様では戦闘にすらなりませんでした」

「どう言うことだ?其方はハスター様と同じ風の力を操って攻撃したのだろう?」

「その通りです。ですが、俺の攻撃はなす術も無く消え去りました。彼女が対抗術や防御結界を使う事なく攻撃が霧散したのです」

「霧散……?消えてなくなったとでも?」

「はい。術の全ての効力が失われ、光の粒となり周囲に降り注ぎました。非常に抽象的な表現かもしれませんが、術自身がアリア様を攻撃する事を拒んでいるかの様な感じで、勝手に術が分解され、光の粒となってしまったのです」

「……あらゆる攻撃神霊術が通用しないと言うことか。それが彼女に与えられた権能なのか?」

「アリア様にも分かってはいない様です。彼女が生まれたまだ百年程しか経過していないのです、その程度では神の権能は身につかないのかもしれませんが、彼女の権能に関わりがあると考えられます」


 精霊と神との決定的な差は権能の有無だ。そしてこの差がとてつもなく大きい。

 その力によってフーシ様は宇宙全体を支配し、ナクロール様は万物を創造され、フリン様は叡智を授けられる。何人にも変わる事は出来ない唯一無二の能力、それが神の権能なのだ。


「そして、彼女の力は攻撃が通じないだけではありません。俺は彼女との戦いに敗れとある所に幽閉されていましたが、その幽閉場所というのが彼女の恐ろしさを物語っているのです」

「イタカ、其方はダグザやモリガンやルーの所で拘束されていたのではなかったのか。ではアリア様の家で軟禁でもされていたか?」

「アリア様は私を拘束する場所を別の空間に創造されたのです。皆さんも知っての通りこの世界はフーシ様によって創られた特別な世界です。他の精霊界や物質界とは違い非常に強固な神霊力によって守られております。その様な世界の中に、また別の世界を創造された、その光景を見た時俺は絶望を感じましたよ。あの力は、かつてこの世界を破壊された時に見た神霊力よりも、遥かに強大な神霊力でしたからね」

「この世界の中に、また別の世界を創るだと……。本当にそんな事が可能なのか?」

「他の物質界では観測された事はあるが、この世界はいわば監獄だぞ。そんな事が許されるのか」


 枢機卿達は様々な意見を言い合ってはいるが、その誰もが信じられない様な表情だった。……まあ実際、俺自身も信じたくはない話だが、事実だからしょうがない。


「アリア様の神霊力はフーシ様よりも強いのではないか?」


 やはりその結論になるか……。

 俺もあの闘技場コロッセオの中で幾度もたどり着いた結論なのだ。そして、今では確信に変わりつつある。

 ならば、今アリア様と敵対するという事は絶対に阻止しなければならない。もし敵対したら今度こそ全ては泡の様に弾けて消えてしまうだろう。


「俺はアリア様の提案を受け入れるべきだと思う。ケルト王国方面での計画はかなり遅れる事にはなるが高々百年程度だ、さほど支障はあるまい。ダゴンはどう思う?」


 俺はこの会議が始まってから一言も発していなかったトゥルー教の枢機卿の筆頭であるダゴンに意見を求めた。


「ふむ、私が考えるに我々にはアリア様に対しての情報が不足している。アリア様の提案に乗る事は吝かでは無いが、こちらからの提案を呑んでもらえるのであればという事に訂正してもらえるのであれば私から教皇様に上申しても良い」

「アリア様に提案か……、その内容は?」

「アリア様が我らに出された提案は一つだ。ならばそれ以上を求めるのは無理だろう。私が提案する内容はたった一つ、我らトゥルー教を認めるか否かだ」

「……そ、それは……」


 トゥルー教の最終目的は主人である原初の精霊の復活だ。ダゴンはアリア様にこれを認められるかを問い詰めようとしている。


「イタカ、私とて新しい世界を創造されるような神とは敵対などしたくはない。しかし、我らの目的を否とされるのであれば敵対は避けられまい。この条件は我らの覚悟の表明だと受け取ってもらえれば良い」

「……ダゴン、ハスター様は俺に間違えるなと仰った。再びあの時のような過ちを繰り返さない為にだ」

「……イタカ、クトゥルフ様はたとえ全てを失ったとしても守らなくてはいけないものがあると私に仰った。私は其方と同じく、主人様の言葉に従っているだけにすぎん」


 どちらも多分間違ってはいない。……だがダゴン、それは強者の考え方だ。そして、今回の我々は果たして強者なのか?あの圧倒的な神霊力を前にしても強者でいられるのか?

 結局、枢機卿筆頭であるダゴンの提案が採用され、アリア様の元に使者を送る事が決定したのだった。

今回のお話で第五話は終了となります。


次回から第一章の最終話である第六話がスタートします。

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