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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第五話 お披露目パーティー開催

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5−12 黄色眷属の回想 (イタカ視点)

第五話の冒頭で闘技場コロッセオから解放されて今まで出番が無かったイタカさん。


当初の高飛車キャラは崩壊し、ウジウジと悩んでいます。

 アリア様の元から離れて数日、俺はまだクン・ヤン教国に帰れないでいた。

 闘技場コロッセオからは解放されてはいるが、心の蟠りからは解放されていないのだ。


 ……仲間達になんと説明すれば良いのか。


 俺の行いのせいで、神に目をつけられてしまった。しかも、アリア様が出した条件は今後百年間程ケルト王国に工作活動を行わない事、そして俺にクン・ヤン教国の諜報活動をする事だ。

 ケルト王国の件は、高々百年程の遅れなど今更なのだが、クン・ヤンへの諜報活動は明らかな仲間達への裏切り行為だ。元々、原初の眷属同士結束力が高かった訳でもないが、それでも今まで同じ目的で繋がっていた同志なのだ。気が引けるのも仕方が無い。


 ……このままクン・ヤンに帰らないという手もアリか?


 いや、アリア様はともかくクリス様は納得されまい。アリア様は他者に甘い所はあるが、クリス様はアリア様を裏切ったともなれば容赦はされないだろう。俺は地の果てまで追いかけられ、あらゆる拷問を受けた後に再び闘技場コロッセオに放り込まれるのが関の山だ。

 それに、アリア様はクリス様や他の精霊達から甘いとよく言われているが、あの方はただ単に甘いだけではない。俺達が何をしでかそうが対処出来るだけの実力を秘めているから他者に関して寛容なだけだ。アリア様が闘技場コロッセオを創られた時の神霊力はかつて、我々が創り上げたドリームランドを破壊された時の神霊力に匹敵していると俺は感じている。おそらく、あれを見たクリス様も同様な感想をお持ちだろう。

 あの時の光景は今でも鮮明に思い出せる。

 そして、あの時以来会えなくなってしまった主人様の事も……。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 俺は、自分の主人様であるハスター様を探しにドリームランドを飛び回っていた。

 我々が精霊界から離れてどれ程の年月が経過したのであろう。あれ程の数の眷属達が身を粉にしながら働いても遅々として作業が進まない。しかも、このドリームランドは精霊界と大きさを比較したら砂粒の様な大きさでしかないというのに。


 ……これが神と精霊の差という事か……。


 精霊界を創っていた時にはそれ程困難とは思っていなかったが、神の力が偉大すぎて俺達には何もわかっていなかっただけだったのか。

 このドリームランドには、俺達がいるこの星以外には星々はなく昼間でも太陽は昇らないし夜になっても月どころか星の瞬きさえもない。この世界は常に暗闇で、極寒の世界だ。もちろん、俺達以外には生命体も存在しない。大地は岩と土しか存在していない。俺達は精霊の眷属なのでどの様な環境でも適応出来るが、物質界にいる生命体達は脆弱な肉体しか持たないのでこのドリームランドに来たら一瞬で死んでしまうだろう。この世界に生命を根付かせる事が出来るにはあと何千、いや何万年かかるのであろうか?気が遠くなりそうな話だな。

 あれこれと考えているうちに、ハスター様がお気に入りとされている丘陵に辿り着いた。

 このような何もない辺鄙な所に何度も来られるなんて、ハスター様も物好きだな……。


「ハスター様、探しましたよ。またこの様な辺鄙な所に来て、何を考えておられるのですか?」

「……ああ、イタカか。別に何も考えていないよ。強いて言うならどうしようも無い後悔の念かな?」

「……後悔ですか?」

「そうだね……。みんなには内緒にして置いてくれると助かるよ」

「ハスター様は何に後悔されておられるのですか?俺はハスター様の眷属筆頭です。主人の悩みを解決する為には努力を惜しみませんよ」

「ハハハッ、眷属である君に心配されるなんて僕は主人失格だね。それに僕の後悔は今に始まった訳でも無いしね……」

「お聞かせくださいませ。俺ではお役には立ちませんか?」

「……そうだね、話す事によって少しは気がまぎれるかもしれないしね。……僕達原初の精霊は神を裏切ってこの地にやってきた。そもそもそれが間違いだったのかもしれない。精霊界でフーシ様やナクロール様達と共に働き続けていた方が良かったのではないかとね……」

「フーシ様から離れ、理想郷を創り上げる事は原初の精霊様方の総意ではなかったでは無いですか。その様な後悔をなされるのなら何故最初から反対をなされなかったのですか?」

「原初の精霊はそんな一枚岩の様な連中ではないよ。その証拠に原初の筆頭と次席はこの集いには参加をしていないし、ナイアーラトテップだってそうだ。正確には、話を持ち掛けたら話にならないと一蹴されたみたいだ。そして、今は僕もその意見に賛成している」

「……それは知りませんでした」

「イタカ、フーシ様は僕達の行いを決して許しはしないだろう。フーシ様からしてみれば、僕達はフーシ様の庭に勝手に小屋を作って住み着こうとしているのだからね」

「では、今からでもフーシ様の所に戻られては……」

「それは出来ない。僕はすでにフーシ様達を裏切っている。その上で他の原初まで裏切ったら僕は誰からも信用されなくなる。この宇宙で身の置き場がなくなるよ」


 ハスター様は乾いた笑い声を上げながら言葉を続けた。


「僕は原初の精霊の中でもとても弱い精霊の一人だ。だから誰かに従って生きていくしかない。その生き方は一見楽に見えるかもしれないけど、従っている人が落魄れた時その元にいた僕の様な立場の人は更に下に落ちるしかない。情けない事にね……」


 ハスター様は自虐をする様に呟かれて、最後は私の目を見ながらこう言った。


「僕……、いや、原初の精霊達も所詮操り人形でしかなかった。甘言に乗せられ冷静な判断をしてこなかった。僕達は言葉の裏側にある真意を見抜けなかった愚か者に過ぎなかった。イタカ、もし次があるとしたら決して間違えてはいけないよ。破滅をしたくなかったね」

「……ハスター様、その時俺はどの様にすれば良いのでしょうか?」

「そうだね、失敗した僕がアドバイスした所で説得力は無いけれど、もし次があるとするならば物事をもっとよく知ってから結論を出すべきだろうね。間違った知識からは間違った結論しか出てこないからね。……そう、僕達は何も知らないままここまで来てしまったのだから」


 ハスター様は今の会話を決して他の者には漏らさないようにときつく俺に命じた。その時の顔はどこか寂しそうで、今でも忘れられないでいる。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 その後、ハスター様が予見していた通りドリームランドはフーシ様によって破壊され、ハスター様達原初の精霊は厳重に封印され今日に至っている。

 俺も憎しみとハスター様の救出で心の余裕が無くなり、視野が狭くなっていたと今なら素直に反省できる。……結局、俺もハスター様の懸念通りに行動していたんだな。

 アリア様の態度を見る限りでは、アリア様は俺達をそれ程不快には思っておられないようだ。ならば、アリア様のお力を頼ってもいいのではないか?

 だが、仲間達は俺の考えには賛同してはもらえないだろう。

 しかし、ここで選択を間違えたらまた同じ事の繰り返しだ。


「ここで、間違えるわけにはいかない、俺達はあの時よりも多くを知っているはずだから……、そうですよねハスター様……」


 俺はようやく決心がついてクン・ヤンに帰郷する事にした。

イタカの主人であるハスターが回想シーンで初登場。


次回はイタカがクン・ヤン教国に戻ったお話となります。

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