5−4 お披露目パーティー 2
前回に引き続き、お披露目パーティーの続きです。
「ギャレット、そろそろ精霊のお弟子様を紹介してはくれないか」
私達の近くに辺境伯と同年代の貴族が挨拶にやって来た。
「おお!トマスではないか。貴様と会うのは息子の結婚式以来ではないか?」
「そうか、もうそんなにもなるか。お互いに歳をとったな。ほらっ、私の髪も随分と抜け落ちてしまったわ」
「それを言うなら、私の髪も髭も白髪混じりになってしまった。今度からは髪を染めないといけないな」
おおう、怒涛の中年トーク……。
どの世界に行っても、中年男性の悩みは髪の毛に集約してしまうのだろうか。
髪の話題の後はお腹周りの脂肪の話や、朝起きたらどこどこが痛いなどの健康の話題に変わった。
……うわー、まったく興味がないわー。
別の場所に移りたいと思っても、今は辺境伯が私のエスコート役になっていたので、本来のエスコートであるアルウィン兄さんは近くにはいなかった。それなら父さんはというと、伯父さんと一緒にどこかの貴族と話し込んでいた。父さん達も陞爵のせいで注目の的だし人が集まるのも仕方がないか。
よく見ると、トマス様が一緒に連れてきた若い女性の二人が所在なさげにこちらをチラチラとこちらを伺っている。
仕方がない、とめどがない中年トークを子供の私が空気を読まずに止めてやろうではないか。
「あの辺境伯閣下、こちらの殿方のご紹介をしてもらえませんか。私達ずっと置いてけぼりなんですけど」
「ああ、それは申し訳ない。アリア、こちらはトマス・メイヨー伯爵。私の貴族学校時代の同期の一人だ」
「ニュートン男爵令嬢、主役である貴女を蔑ろに話し込んでしまったのは無作法であった。申し訳ない」
「いえ、それは構いませんが、メイヨー伯爵様、そちらのお嬢様方を私に紹介されるのではないのですか?お嬢様方が困っていらっしゃいますよ」
「ああ、そうだった、懐かしい友との再会ですっかり忘れていた。この二人は私が後見人となり、この冬から魔術師学校に入学するシーラとマーベルです。男爵令嬢とは同期生になりますな」
「まあ、そうでしたの。初めましてお姉様方、アリア・ニュートンと申します。ぜひ私の事はアリアと呼んでくださいませ」
私の挨拶を受けたお姉様方の二人は面を食らったかの様な表情で呆然としていた。……あれ?私、何か失敗しましたか?
「こらっ!男爵令嬢が挨拶をしているのにボーッと突っ立っていてどうする!申し訳ありません男爵令嬢、二人はご存知の通り平民の出でありましてまだ礼儀を熟知しておりません。二人に成り変わり謝罪いたします」
伯爵が頭を下げたのを見て、お姉様方は慌てて頭を下げた。
「伯爵様、頭をあげてくださいませ。私もつい先日までは準男爵の娘だったのです。私とてこの様な華やかな場所に連れて来られたら呆然としてしまいます。彼女達を責めないでくださいませ。それと、私の同期生の後見人になるお方ですもの、私の事はアリアとお呼びください。そして、私もトマス様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「勿論ですとも、何ならおじ様と呼んでもらっても構わないよ。さあ、二人ともアリア嬢に挨拶をしなさい」
「……先程はすみませんでした。私、シーラって言います。私の事もシーラと呼んでください」
「えっと、私はマーベル。さっきは挨拶が返せなくて悪かったな。こんな煌びやかな所に来たのは初めてだったんで頭の中が真っ白になってたんだ。あ、私の事もマーベルで構わないぜ」
トマスは頭を抱えていたが、私は逆に親近感を持った。この所、対貴族用の会話ばっかりで堅苦しくてストレスが溜まりまくっていたのだ。
「わかりました。シーラさん、マーベルさん。これからもよろしくね」
「ええ、こちらこそよろしくね」
「本当はさん付けもやめて欲しい所なんだけど、こんな貴族だらけの所じゃ無理だもんな。けど、学校じゃ敬語なんて使わなくてもいいからな」
「二人とも!アリア嬢が許しているからといって、言葉が砕けすぎだ」
「トマス、まあ良いではないか。魔術師学校は貴族よりも平民が圧倒的に多い場所だ。こうやって砕けた口調ができる友達がいると言うのは貴重な事だぞ。だが、魔術師学校に入学したら気をつけなさい。其方達は魔術師学校に入学するのと同時に貴族社会で生きていく事になる。その事を忘れない様にな」
シーラとマーベルはギャレットの話を真剣な面持ちで聞いていた。
魔術師学校に入学したら、嫌でも貴族との会話が必須になる。今の様な口調は通用しなくなるのだ。
「それにしても、二人も同時に入学させるのか?大変だろう……」
「ギャレット、其方がそんな事を言うのか……。今年の魔術師学校の入学者はおそらく二十人近くになるという話だ」
「二十人だと!例年では十人も満たないのに、何故今年に限って入学者が増える?」
「簡単な話ではないか。アリア嬢が入学するからに決まっている」
「アリアが……、なるほど。精霊の弟子と懇意になりたいという事か」
「正確に言えば、精霊様とお近づきになりたいと言う事だな。私は元々この二人を入学させる気で早めに願書を提出していたが、アリア嬢の噂が流れると同時に様々な貴族達が真偽を確かめに王宮に駆け込んだそうだぞ」
「よくもまあそれだけの魔力持ちを隠していたものだ。近い将来、破産する貴族も出てくるかもしれんな」
「それだけ精霊とお近づきになれるとなれるという事は魅力的に見えるという事だ。アリア嬢、お気をつけなされよ」
つまり、これからは私に群がってくる輩が増えるって事なのかな?
別に普通の友達としてならそういう目的であろうとも構わないけど、私を利用しようと考えて近付くのはご遠慮いただきたいなぁ。
私が顰めっ面をしていると、私の顔を見た二人は笑い出した。
第二章でアリアと同級生になるシーラとマーベルの登場回となります。




