5−1 トゥルー教の悪巧み
第五話「お披露目パーティー開催」のスタートです。
とうとう私のお披露目パーティーの前日まで日付が進んでしまった。
私も神様になった事で、結構色々と経験してきたがどんな場面でも緊張をしないメンタルは獲得出来なかったみたいだ。
「姫様、大事なパーティの前日に申し上げるのも気が引けるのですが、前回のクソ馬鹿野郎の事件でウェズリー家や貴族連中には罰をお与えになられましたが、クン・ヤン教国に対しての罰をお与えになられないのですか?」
「……クン・ヤン教国か。別にどうでもいいと言えばそれまでなんだけど、与えないと駄目かな?ガーベラは国王陛下に引き渡したし、私に対するクン・ヤンの関与は間接的な感じだしね。けれど、ケルト王国貴族の義務として警告ぐらいはしておこうか。取り敢えず、私がここにいる間は大人しくしておいてほしいからね」
「警告ですか。私としましてはもうちょっと過激な感じの方がより効果があると思いますが、如何でしょうか?」
「……ちなみに聞くけど、過激ってどんな感じの事を言っているの?」
「そうですね……。トゥルー教の総本山であるルルイエを破壊してみてはどうでしょうか?」
「どこのテロリストなのよ、私は!そんな破壊活動なんてしないわよ!」
「そうですか……、残念です。では、警告と言うことはルルイエがあるグレートプレーンズを管理しているニグラスをメッセンジャーとして派遣いたしますか?」
「……そうねぇ、それでもいいけど、原初の眷属相手だとニグラスだと舐められちゃうかもね」
精霊の眷属は場合によって主人と同格扱いをする事がある。
トゥルー教を牛耳っているのは、精霊の中でもトップクラスに位置付けされていた原初の精霊の眷属達なのだ。
単純な力関係ではニグラスの方が上なのだが、序列で比べたら原初の精霊の眷属達の方が上になる時がある。これは、時と場面によって変動する時があるので一概にどちらかが上とは言えないが、今回の様な事例だとそのあたりの事で揉める可能性もある。……精霊でも柵からは解放されないのね、不憫……。
「ニグラスにそんなストレスがかかる仕事を振るのも気が引けるから、別の人を代わりに派遣しましょう」
「代わりというと、私の事でしょうか?ならば早速、行って参ります……」
「明日、私の大事なパーティがあるのに貴方を行かせる訳がないでしょう!」
「そうですね、姫様の可愛らしい晴れ姿を拝む方がもっと重要事項ですものね。そんな瑣末な仕事などに私が関わる必要はないですよね」
「……その言い方は何だか気持ち悪いけど、私をフォローしてくれる人が少しでも多い方が重要だからね。丁度、クン・ヤンに帰りたがっている人がいるので、その人に頼みましょう」
「……そんな人いましたっけ?」
所変わってここは闘技場。
元は何も無い空虚な空間だったが、遊びに来る度に色々と弄っていたら広大なサバンナのような草原になっていた。
そのサバンナの一角にある丸太小屋のような建物に住んでいる黄色眷属ことイタカを見つけ近づいた。
「どうイタカ、ちょっとは修行をして私の遊び相手が出来るくらいには強くなってる?」
「ご冗談はおやめください。ここにいる時間程度の修行ではアリア様の足元にも及ばないでしょう。何か御用がございましたか」
イタカもすっかりと角が取れて丸くなっちゃたな……。あの頃のイケイケでやんちゃなイタカも嫌いではなかったのだが、これは惜しいキャラクターを失ってしまったのかもしれない。
「イタカ、貴方クン・ヤン教国に帰りたがっていたでしょう。私のお願いを一つ叶えてくれたらクン・ヤンに帰ってもいいわよ」
「本当でございますか!」
「ええ、トゥルー教の仲間達に暫く大人しくしておいてとお願いしてくれるだけでいいわ」
イタカの喜色満面な表情が見る見るうちに青ざめていった。オノマトペで表現するなら「サーーー」といった感じだろうか。
「えっ?そんなに難しいお願いだったかしら?」
「……私達、原初の眷属の悲願は主人様達の復活です。それを諦めろと仰るのは皆が納得しないでしょう」
「原初の精霊の復活は、貴方達の目的である事はわかっていますが、それとクン・ヤン教国が悪巧みをするのはどう結びつくのかしら?」
「…………それは……」
「姫様が質問しておられるのだ、きちんと答えんかっ!」
「封印の礎を探すためです!クン・ヤン教国にある南部地方にはありませんでしたので他の地域を探すために他国にちょっかいを出しておりました!」
背筋を伸ばしてハキハキと質問に答えるイタカ。すっかりクリスに心を折られちゃっているな。
「それって、お父様の赦しもなく元に戻るって事?それじゃあ、また同じ事を繰り返す事になるのではないの?」
「私にはわかりませんが、教皇猊下がそう仰っておられました。主人様達には何やら対抗手段があると」
「ふーん、無策ってわけでも無いのね。でも、お父様の力はこの宇宙そのものよ?原初の精霊が何人いるのかわからないけど、その力に匹敵するほどなの?」
精霊界が宇宙の半分程しか広がっていないのは、余りにもお父様の力が強すぎるせいだ。精霊界とは、お母様によってお父様の力を中和された領域にしか広がっていないのだ。そして、原初の精霊のみで創られたこの異界は宇宙全体から見ればミジンコ並みの大きさに過ぎない。それ程の力の格差があるのに、対抗する術があるというのだ。これはきっと面白……いや、厄介事になりそうな予感がする。
「イタカ、取り敢えずケルト王国に関しては百年ほど手を出さなければ後は好きにしても構わないわ。他の国に関しては私は取り敢えずは関与しないから」
「姫様、本当にそれでよろしいのですか?」
「クリス、私達は神であり精霊でもあるけど、基本的には異邦人よ。あまりこの世界の事にちょっかいを出すのは控えた方がいいと思うの。それに、お父様に匹敵する様な対抗手段とやらを見てみたいじゃない!」
「……姫様、お戯も程々になさってください」
いかんいかん、最後に本音がポロッと溢れてしまった。
「……建前として、ここで原初の眷属達の計画を阻止をした場合、その対抗手段の手段や方法が失われる可能性があるので、今後の為にも知っておくべきではないかと考え、敢えて今は放置をするという事で、どう?」
「……フーシ様に相対するような手法があるとは考えられませんが、情報は集めるべきでしょうね。イタカをトゥルー教並びにクン・ヤン教国への間諜として使うのを了承いただけるのであれば私も異存はございません」
「イタカ、聴きましたね。クリスにも納得して貰えたみたいなのでクン・ヤン教国に帰っても良いですよ。イタカの管理はクリスに任せても良いかしら?」
「かしこまりました。……イタカ、姫様の為に粉骨砕身の決意で仕事に励むように」
「ありがとうございます。誠心誠意御奉公させていただきます」
こうしてイタカはクン・ヤン教国に帰っていった。
イタカが居なくなった事で闘技場が無人になてしまったな。
そうだ!スピルバーグの映画のように、魔物をここに住まわせてテーマパークでも作ってみるか。
クン・ヤン教国並びにトゥルー教の目的の一部が明るみに出ました。
どの様にしてトゥルー教は原初の精霊達の復活をさせるつもりなのでしょうか?




