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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−19 ウェズリー家の家族会議 3 (ギャレット視点)

ウェズリー家の次男であるアーサーにリチャードの事を話すギャレット視点のお話です。

 ガブリエルとの会話をした日の夕刻、ようやくアーサーが帰宅した。

 アーサーはリチャードとは犬猿の仲だったから、帰宅するのを躊躇っていたのかもしれない。

 私達は晩餐の後、アーサーを私の私室に呼び出しヒルの隣の席に座ってもらった。


「学業で忙しい所、急遽呼び出す事になってすまないな、アーサー。成績の方はどうだ?しっかりとやっているのか?」

「父上、私は兄上とは違って学校の成績に問題はありませんよ。それよりも兄上が不在の様ですがどちらに行かれたのです」

「今日はそのリチャードの事について其方に話す事があったので帰宅させたのだ」

「兄上が何かやらかしたのですか?金ですか?女ですか?」

「アーサー、もう少し言葉を慎みなさい。兄弟揃って言葉に遠慮というものがないのかしら……」

「母上、リチャードと一緒にしないでください。普段ではもうちょっと気をつけていますよ。それと父上、早く本題に入ってください。明日には学校に戻りたいと思っているのです」


 本当にアーサーは親に向かって遠慮をする事を知らないな。そうやってズケズケとモノを言うからリチャードが其方を煙たがるのだ……。


「……リチャードに関しての話だが、正にアーサが指摘した通りだ。それに付け加え、国家への反逆や精霊様への侮辱行為も重なって精霊様から不興を買った。ウェズリー家にとっては最悪の事態だ」

「もしそれが本当なら、父上はどうして生きておられるのですか?連座で処刑されていてもおかしくはないでしょうに」

「あるお方の慈悲のおかげだ。実際、この国を滅ぼすとも言われたのだ。正直、あの場で話を聞いていた時は、リチャードと共に死ぬ覚悟をしていた」

「へえ、父上が死ぬ覚悟をしていたのは意外でした。父上は、決死の覚悟とかと縁遠い人生を送っていたのに、どこで主旨を変える決断をしたのですか?そういえば、ウェズリー領で珍しい魔術師の卵が発見されたそうですね。もしかして、その事と何か関係がおありで?」


 アーサーの奴、妙に感が鋭いな。

 それにしても、アリアの噂は貴族学校にまで広がっているのか。だとすれば、アリアの噂は王都にいる全ての貴族に広まっている可能性があるな。


「リチャードが次期領主ではなくなったのだ。アーサーが次の領主になれば、嫌でもアリアと関わる事になる。其方は次のウェズリー領の領主になる覚悟はあるか?」

「……私はまだ学生ですよ。そんな決断、早すぎませんか?」

「関係ない。長子が失われたのだ。ならば、次の領主候補は次子であるお前の番だ。しかし生半可な覚悟でアリアと関わるつもりなら辞退せよ。リチャードで私達は間違えてしまったが故に、次に間違えれば今度こそウェズリー領だけでなく、この国の破滅になる。よく考えなければならない事は承知しているが、時間が無い。なのでこの場で決断するのだ」


 親として、子供にこんな重大な決断を迫るのは非常に不本意なのだが、私はリチャードの親としてあの子がやらかしてしまった事に対して責任を取らなくてはならない。


「……もし、私が領主になる事を拒めば、どうするつもりですか」

「その時は、ウェズリー領を国王陛下に返上し、私は引退して家督を其方に譲る。もし、承諾したとしても引き継ぎが終わり次第、引退する事になる」

「父上はまだ引退を考える歳ではないでしょう。それに、厄介事は全て私に投げ出して逃げるおつもりですか?」

「誰かが責任を取らなくてはならない。もし、あのお方や国王陛下が私の命を望まれるのであれば私は黙って従う覚悟だ」

「母上!父上を止めてください!そんな責任の取り方は、私にとって迷惑極まりないですよ!」

「……アーサー、それが人の上に立つという立場なのです。リチャードにはその事を教えてあげられませんでした。貴族と言う特権だけに酔い痴れ、間違えた時の責任の取り方を学ばせていませんでした。私達は、あの時にそれを痛感したのです。アーサー、貴方がどちらの道を選んでも非常に困難な人生になるでしょう。貴方にそんな道を選ばせなければならない私達を許してちょうだい」


 もし、アーサーが領主になる事を拒めば、領地を返上した貴族として晒され貴族の息子として失墜は免れないだろう。そして、徐々にウェズリー家は没落していく事になる。

 アーサーが領主になることを承諾したら、アーサーは嫌でもアリアや精霊と関わる事になる。アーサーの振る舞いは国中、いや世界中に注目され非常に窮屈な思いをする事になるに違いない。


「母上、頭をあげてください。父上、わかりました、私が領主になります。しかし、せめて二十歳までは待っていただきたい。その条件を認めてもらえるなら引き受けましょう」

「……わかった、其方の条件を受け入れよう。すまんな、アーサー」

「……父上も頭をあげてください。手紙を受け取った時に嫌な予感がしたけど、まさかこんな事になるとは想像もしていなかったですよ」

「……アリアと関わる様になれば、そうも言っていられなくなるぞ。あの娘は次々と厄介事を持ち込んで来る。覚悟しておくのだな」

「……父上、アリアとは私が先程言っていた魔術師の卵ですよね?アリアとはどの様な娘なのでしょうか?」

「近いうちにアリアのお披露目がある。其方は必ず出席しなさい。何、遠くで見ている分には可愛らしい女の子だ。いきなり噛みついてくる事はないだろう。多分……」

若い領主は舐められるので、本当は三十歳までは領主になりたくなかったアーサーでしたが、両親の様子を見て二十歳での引き継ぎで妥協しました。


次回はアリア視点のお話に戻ります。

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