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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−17 ウェズリー家の家族会議 1 (ギャレット視点)

リチャードの事を、その妻であるガブリエルに告げるギャレット視点のお話です。

 今の私はまるで石を飲み込んでしまったかの様な重く憂鬱な気分だった。

 本当に私は家族運に恵まれない人生だ。幼少の頃に母親を失っただけでなく、今度は跡取り息子までも失ってしまった。どうやら神は、私の家族を嫌っている様だ。そう思った所で、そう言えば神とはアリアの事だったなと思い出し、あの娘が私の事を好いている訳がないかと妙に納得してしまっていた。

 だが、私には悲しみに暮れている余裕など無い。

 これからウェズリー家の将来について家族と話し合わなければならないからだ。

 私はモリガン様の住処から戻り、急いでアーサーを貴族学校からこちらに来る様に手紙を書いた。今はアーサーが帰ってくるのを居間でヒルと共に待っている状態だ。

 ヒルも顔色が悪い。

 仕方がないか、目の前で息子が石像に変えられてしまったのだ。リチャードの罪は余りにも大きいが、妻にとってはリチャードは自分が産んだ最愛の息子なのだから。


「ガブリエル様がお越しになられました」


 オーエンではない執事がリチャードの妻であるガブリエルの入室を告げてきた。

 オーエンはあのモリガン様の住処で行われた裁判で何の罪にも問われなかったが、クリス様からオーエンが長年に渡って我が家から横領を繰り返していた事を告げられた。その為、オーエンは地下の独房の中に監禁させていて、彼の一族も同様に捕らえている。

 彼等は取り調べの上で処刑される事が決定している。


「お義父様がお呼びだと伺いましたが、私に何か御用でしょうか?」

「ああ、ジェラルドの世話が忙しいのにすまないね。どうしても話さなければならない事があるのでね……」

「いえ、私などに遠慮などなさらないでください。けれど、リチャード様はお越しではないのですか?リチャード様抜きで私がお話をお聞きしても宜しかったのでしょうか?」

「ああ、そうだね。その事についてアーサーが帰ってくる前に話しておこう。席に座りなさい」


 ガブリエルが長椅子の端の方に身を寄せて座った。この娘はいつも遠慮しがちで、私達とは何処か線を引いてしまっている。此方としてはもう少し歩み寄りたいのだが、それはガブリエル次第か……。


「……ガブリエル、落ち着いて聞いてほしい。リチャードの事なのだが、リチャードをウェズリー領の次期領主から外し、廃嫡する事となった。本当にすまない」


 ガブリエルは、私の言葉を聞いて明らかに動揺し、オロオロと狼狽えていた。


「リーチャード様は、一体リチャード様はどうされたのですか?今、リチャード様がここにいらっしゃらない事と関係があるのですか!?」

「詳しい事は言えないが、リチャードは罪を犯し、決して怒らせてはいけない方を激怒させてしまったのだ。リチャードは罰を与えられ、リチャードに家督を譲る事を禁じられた」

「……怒らせてはいけないお方とは国王陛下の事なのでしょうか?」

「陛下の名誉の為に語るが、そのお方は陛下ではない。……陛下よりも遥かに上のお方だ」

「……そんな……」


 彼女の疑問はよくわかる。ケルト王国民にとって、国王陛下よりも上の人物なんてなかなか想像できないであろう。


「……では、ジェラルドは一体どうなるのでしょうか?あの子の将来は……」


 ガブリエルが狼狽えるのも無理はない。ましてや、ジェラルドはまだ生まれて間もないのだ。母親として、子供の心配をするのは当然の事だ。私とてジェラルドは念願の初孫なのだ、同じくらい孫の事は心配している。


「……ジェラルドは領主候補にはなれない。ジェラルドを領主候補に残したままだと次期領主に内定するアーサーの治世に影響を残す事になる。もちろん、アーサーの後継者問題にもだ。その様な事は今の領主である私が決して認める訳にはいかない。其方にとっては冷酷だと思われるかもしれないが、受け入れては貰えぬか」

「……そうですか。いえ、私はギャレット様の事を冷酷だなんて思ってはいません。本当なら、黙って私を実家に帰してもよかったのに誠実にお話なされているのですもの。私こそ、差し出がましい事を申しました」

「子供の事を心配するあまりに出た言葉を差し出がましいとは思ってはおらぬよ。母親として当然の言葉だ。私も其方と同じく孫であるジェラルドの将来は心配しているのだ。我が家の事情とはいえ、其方とジェラルドには申し訳ない事をしてしまった」

「ギャレット様、リチャード様が廃嫡となるのならば、私との婚姻関係はどうなるのでしょうか?離婚ならば、私は実家に帰る事になるのでしょうか?」

「……リチャードの場合、廃嫡と言っても平民になるわけではないのだ。むしろ、死亡扱いと考えた方がしっくりと来るだろう」

「……リチャード様に与えられた罰とは一体どういったものなのでしょうか?」


 さて、どう説明すれば良いものか……。


「……ギャレット様、ガブリエルには一度ちゃんと見てもらった方がよろしいのではありませんか?」

「ヒル……、ガブリエルにあの姿のリチャードを見てもらう訳には……」

「真実を見なければとても信じられないでしょう。私も息子のあの姿を見るのは辛いですが、私達はジェラルドやアーサーの為にもウェズリー家を途絶えさせる訳にはいかないのです」

「……確かに君の言う通りかもしれないな。……ガブリエル、リチャードの姿を見る前に、これから見る事を決して口外しない事を誓っては貰えないだろうか。誓えるのならリチャードの姿を見せても良い」

「……わかりました。これから見る事を決して口外しない事を誓います」

「……精霊に誓うか?」

「はい、精霊様に誓います」

「では、すまないが付いて来てくれるか。誰にも見られない様に地下に運び込んだのだ」

「……地下ですか?リチャード様のお部屋ではなくて?」


 私はまた石像になったリチャードと再会する為に、屋敷の地下にある倉庫に向かった。

 誰もが無口になって静かに廊下を歩いていく。普段はカーペットを踏み締めている足音など聞こえないのだが、今日は私の耳にも聞こえてくる。

 やがて廊下のカーペットが無くなり、使用人達が使っている通用路から地下に降りた。

 酷くジメジメした地下室の一角にある倉庫にたどり着いた時、私は後ろに振り返りドアを開ける事を告げた。本当は別の誰かがこのドアを開けてくれれば良いのにと思ったが、私の後ろに控える二人にこんな事を任せるわけにはいかなかった。


「……この彫像は?なぜこの様なところに……それに、どこかリチャード様に似ているような」

「この石像はリチャード本人だ。この様な姿になっても意識はあるらしい」

「…………そんな……、これがリチャード様……」


 その言葉を最後にガブリエルは意識を失った。

 やはり、ガブリエルには見せるべきではなかったのではないのか。

 私はガブリエルを抱き起こしながら、心の中で後悔していた。

次回は、このお話の続きとなります。

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