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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−14 リチャードへの断罪 4

ようやく、リチャード本人の断罪が始まります。

「さて、それではリチャードの話をしましょうか。そうですね、私が体験した順番に沿って話していきましょう」


 辺境伯夫妻は、緊張した面持ちで私の話を聞き始めた。


「ギャレット。私達親子が辺境伯邸に滞在する事になった時、私達はどの様な待遇だったのですか?ギャレットの家臣?それとも客人?もしかしたら、ギャレットは私の後見人になったのだから、家族の様な待遇だったのかも知れないわね」

「……私は客人としてもてなす様に話を致しました」

「……私も夫からその様に聴いております」

「では、リチャードとの初対面の時、私への態度が悪かったのはどういうつもりなのかしら?それとも、ウェズリー家では、客人をもてなす時はあの様な態度で接してきたのかしら?」


 辺境伯夫妻は黙り込んでしまった。


「……俺はお前達の事を聞いていなかったんだ。知っていたらあんな態度は取らなかったさ!」

「リチャード、貴方に発言を許してはいません。あまりひどい様だと、その場で石像に変えるので気をつけなさい。ではオーエン、貴方はウェズリー家の執事長でしたね。貴方からリチャードに伝えなかったのですか?」

「……申し訳ありません。伝えそびれておりました」

「晩餐を一緒にするというのに、客人の情報を伝えていないの?よくそれで執事としてやってこれましたね?」


 オーエンは、自身の執事の職務に文句を言われた事に対して怒りを感じた様であった。これは推測なのだが、多分、オーエンは私達の事をリチャードに伝えていた。ただ、リチャードがあまりにも低脳過ぎた為、晩餐の席に着いた時には忘れてしまっていた。だけど、主人に恥をかかす訳にはいけないと思った為に咄嗟に庇った、というのが真相ではないだろうか。……ちょっと強引な推理だけど、真相としては概ね正しいのではないだろうか。


「ヒル夫人も、リチャードが客人に対して無礼を働いたのであれば、その場で息子を叱り客人に詫びるべきです。貴方達はリチャードに対して甘すぎますし、客人に対しても無礼が過ぎます」


 ギャレットは、あの時リチャードを叱っていたが、叱ると言うよりもリチャードの言動に対して不快感を口にしただけで、私達に謝罪をしたわけでもないしね。


「その後、私達に対して辺境伯邸の使用人の態度が硬化しました。あからさまに私達を避ける様になったのです。不審に感じたので、クリスにその辺りの事を調べてもらいました」

「リチャードがオーエンを通じて使用人達にクーパー家並びにニュートン家の者の態度を改める様にと命じていた様です。リチャードは、姫様の母親であるメアリー様が元平民の孤児であった事が気に入らなかったみたいです」

「オーエン、今のクリスの報告は正しかったのかしら?」

「……私は存じ上げておりません」

「本当にその答えで良いのですね?後に虚言だと判明した時は、それ相応の罰を受けてもらいますよ」

「……その侍女が言った事に間違いはございません」

「オーエン!貴様、俺を裏切るつもりか!」

「裏切るも何も、オーエンは泥舟から降りただけですよ。まあ、降りた所は泥沼の上ですけどね」


 主人が泥舟なら、使用人は泥沼。本当にドロドロのぐちょぐちょだね。


「ヒル夫人。貴族社会では女主人が家政を取り仕切り屋敷を管理するのでしたよね。夫人の授業でそう習いましたもの。なのに、使用人達が主人の意向に沿わず、客人を蔑ろにするなんて、授業の内容とは、ずいぶんと違うと思いませんか?」

「……その通りです。使用人達に代わり謝罪いたします」


 オーエン、よく見とけよ。お前のせいで、ヒル夫人が頭を下げてるんだからな。


「そしてリチャード。貴方は、母さんの事を平民の孤児である事が気に食わないようですが、私には、そこまで貴方が平民の孤児を嫌う理由がわかりません。……いえ、具体的に言うと、貴方が持つ貴族感というもの自体がわかりません。リチャード、私にもわかる様に説明して下さい」


 リチャードはどう説明すれば良いのかがわからなかったみたいで、なかなか話出さなかった。


「……俺たち貴族は、生まれからして違う。先祖代々、ケルト王国に忠誠を誓って来た由緒正しい人間なんだ」

「生まれから違う?リチャードは生まれた時は人間ではなかったのですか?それに、ケルト王国に忠誠を誓っていたのなら、反乱を起こす様な事を考えていた事と矛盾していませんか?」

「くっ……」

「リチャードが答えられないのなら、ギャレットでもヒル夫人でも構いません。私にリチャードと平民の違いを教えて下さい」


 私の質問に、誰も答えられなかった。

 ただの貴族と平民の違いならばギャレットは答えられたかも知れないが、貴族として何の功績も仕事もしていないリチャードと、汗水流して日々の生活を守る為に頑張っている平民とは比べ物にならないのだろう。


「リチャード、誰も私の質問に答えてくれないのです。つまり、リチャードと平民との差は何もないのでしょうか?」

「……俺は由緒正しい貴族だ……」

「貴方のご先祖様はそうなのかもしれませんが、貴方はその血を受け継いだだけのただの人間です」

「……ならお前はどうなんだ?俺に偉そうに講釈を垂れている、お前はどうなんだ!」

「……私は生まれた時から神ですよ。強い神霊力を持ち、貴方達が想像も出来ないくらい長い時を生きる事ができます」

「姫様は、その上でお美しくてお優しく、それでいて可愛らしい。さらに努力家で、家族思いで、更に可愛らしい」


 クリス!可愛いって二回も言わないで!私だって、もうちょっと大人になったらお母様の様なナイスボディな美女になる予定だから!


「今、言った様に私と貴方とでは種族が違います。とても比較対象にはなりません。ですが、貴方と平民との間には何の隔たりも無いのです。そして、貴方達人間は、私のお母様がお造りになった生物の一種族にすぎません。私にとって、貴族とか平民とか言われても全然ピンときません」


 ここにいる精霊以外の人達が呆気に取られていた。今、私が言った言葉は、この国の貴族そのものを否定する言葉に等しかったからだろう。

 けれど、所詮身分なんてものは国や組織の運営上に必要なだけで、最初から存在していたわけではない。貴族も平民も生まれた時は同じ人間に過ぎないし、死んだ後も身分を知っているのは生き残った人達だけで、本人は死んだ時点で全てを失っているのだ。

 そう考えると、身分にこだわる事はなんて虚しい行為なのだろうか。


「それを踏まえた上で、何か反論はございますか?」

「…………くそっ」

「反論が無いのならば、貴方と平民との差は無いと考えても良いのですね?」

「…………種族的に、俺と平民とは変わらない者だ。その答えで満足か」

「ならば聞きましょう。貴方は、私の母さんに向かって元平民の孤児と言っていましたね。では、その言葉はどの様な意図で発言したのですか?」

「……何の意図もない、ただポロッと口から出ただけだ」

「本当にそうなのですか?貴方が貴族という優位な立場で、下位の者を蔑む様な意味で発した言葉ではないのですね?」

「姫様、この者の話は信用できません。何故なら、この男とガーベラが密会している際に姫様の話題になりました。その時、この男は姫様を口汚く罵っておりました。こちらが証拠になります、お聞きください」


 クリスの神霊術によってリチャードとガーベラの会話が流れ始めた。

 口調からして酔っ払っているのだろうか。呂律が回っていない。

 それにしても、私の文句をこうやって聞かなくてはいけないなんて、ある意味拷問に近いのではないか?

 周りを見てみると、クリスを筆頭にモリガン、ダグザ、ルーも怒り心頭のようだ。


「出鱈目だ!この女は魔術を使って俺を嵌めようとしている!」

「お前は何故私が魔術を使っている事に疑問を抱かない?この国では魔術師しか魔術が使えないのだろう。だから貴様の足りない頭でもわかる様に説明してやる。私は姫様と同じく、タカアマハラより降臨した精霊の一人だ。姫様の補佐とサポートをする為にナクロール様に命じられてこの異界にやって来たのだ。その私が、姫様を謀る?誰に対してそのような戯言を言っている!」


 クリスの言葉に辺境伯夫妻も息を呑んでいる。

 まさか、クリスまで精霊だとは思ってもいなかったのだろう。


「クリス、少し控えなさい。今は審議の最中ですよ。今、クリスが発言した事は事実です。クリスは、タカアマハラでも私の侍女をしてくれていたのです」


 あくまでも侍女。本当は乳母という事は秘密にしておきたい。……ちょっと、恥ずかしいからね。

 でもクリスは、私の侍女発言にご満悦の様だ。


「……私の侍女……。わ・た・しの侍女……ムフフ」


 ……クリス、その発言は気持ち悪い……。


「……先程のリチャードの発言ですと、貴方にとって平民とは侮蔑の対象である様ですね。では、貴方は私や母さんを侮辱していたと判断いたします」

「……たとえ、侮辱していたのだとしてもそれに何の罪になる。事実を口にしただけではないか!」

「確か貴族の様な特権階級の者に無礼な事を言った場合、多くの世界では不敬罪が適用されますが、この国でも同様だったはずです」

「たとえ其方の父親が陞爵して男爵になったのだとしても、我が家の方が爵位は上なのだ!上位の者が下位の者を侮辱したのだとしても不敬には当たらないはずだ!」

「まあ、それも程度によるとは思いますが、この国の貴族としてなら確かにそうでしょうが、貴方が侮辱したのは神を産んだ私の母親です。下位の者が上位の者に無礼を働いた、不敬罪が成立する要件に充分適合しているではありませんか」

「……あの時は、お前が神だった事を知らなかったんだ」

「では、もしも貴方が平民に貴方の父親であるギャレットが侮辱されているのを聞いたとしたら、貴方は笑って見過ごしますか?その平民が何度も貴方とギャレットの身分を知らなかったと訴えても、貴方はその平民を許すのでしょうか?貴方の気性ならばその場でその平民を殺したとしても不思議ではないでしょう。ならば、貴方基準で考えると私の気持ちも理解できるのではなくて?」


 リチャードはガックリと項垂れた。

 ……リチャード、お前の罪はこれだけじゃ無いんだからね。

リチャードの断罪は更に続きます。

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