4−13 リチャードへの断罪 3
今回、リチャードは登場しますがセリフはありません。タイトル詐欺ですが、お許しください。
その後の貴族の若者達は、すっかりとおとなしくなり、こちらの質問にも素直に答えてくれる様になった。……もうちょっと、私を楽しませてくれても良いんだよ。
ただ、若者達は反乱を起こす事までは知らなかったみたいで、数十年かけてケルト王国をトゥルー教の一大拠点にして、クン・ヤン教国の様に宗教国家にする様に言われていたらしい。そして、宗教国家になった暁には、若者達に国の重要なポストを約束されていたそうだ。
よく、こんな胡散臭い言葉を信じる気になったな。詐欺師の言葉よりも怪しさ満載じゃないか。
若者達がそんな胡散臭い話を信じた根拠と言うのがイタカの神霊術である。
確かに、普通の人間がイタカみたいな原初の眷属の神霊術を見ちゃうとコロっと騙されちゃうかもなぁ。前世でも、こういったインチキな手法で騙していた新興宗教の話は後を絶たないし。……こういうのは万国共通なのかもね。
「では、ギャレット。この若者達の処遇は貴方に任せます。国王に国家転覆の罪で突き出すも良し、この若者達の親に恩を売るのも良し、もちろん貴方が息子を唆したと言って処刑しても構いませんよ。どうなさいますか?」
辺境伯は考えた末、親の元に返す選択をした。……まあ、何人か顔見知りがいたみたいだし、まだ犯行は成立していないとも取れるし、だったら恩を売っておく方が後々で見返りが期待出来るかもしれないしね。
「親の元に返すのは承知しましたが、神である私に反抗した罪があります。ですから、このまま返しては精霊達に示しがつきません。よって、この場にいた期間の記憶の消去を行い、石像の状態で親元に返すのなら認めましょう」
「……彼等は一生石像のままなのでしょうか?」
「モリガン。彼等を石像にしてちょうだい。但し、一年後に元に戻れるように術をかけて。出来るかしら?」
「勿論です、姫様。妾が完璧にこなして見せましょう」
「辺境伯、彼等を親元に返すときは石像を傷つけない様に気をつけてください。もし、石像を破壊してしまったら元には戻りません。手足程度ならかろうじて生き残る事は出来るでしょうが、頭や胴体が壊れたら元に戻った時に即死します」
彼等の処遇が決まったので、モリガンに命じて彼等を石像に変えてもらい、この部屋から移動させてもらった。
石像になった仲間達を呆然と見送るリチャードとガーベラとオーエン。自分達がどの様な処分になるのかが不安なのだろう。彼等は一言も発せずに石像になった仲間達を見つめる事しかできなかった。
「では次にリチャードの愛人であるガーベラに関してですが、彼女は国王に引き渡して下さい。ギャレット達が彼女に関して含む所もあるとは思いますが、彼女がリチャードを唆した事が今回の犯行のきっかけになったとも言えます。主犯格である事は間違いないので、若者達の様に温情を与えるわけにはいかないのです」
はたして、先程の貴族達を石像に変えた事は温情になるのだろうか?
殺さなかったからと言われれば温情なのかもしれないが、この世界の基準に当てはめた場合、高位の者に対して侮辱した様な発言をしたら、無礼討ちをされても仕方がないだろう。そう考えると、神様に対して無礼を働いたのだから石像に変えるのは十分温情なのだろう。うん、きっとそうだ!
私は無理矢理納得して、ガーベラに関しての話を進めた。
「彼女がリチャードを唆した結果、リチャードは私達親子をはじめ、ギャレットに対しても刺客を差し向けています。私達が事前に情報を掴んでいたので、実行される前に刺客達を拘束する事が出来ました。その者達は事情聴取をされて、すでにモリガンによって石像となりリフィー川の川底に沈められています。彼等は若者達と違い、二度と元の姿には戻りません。あの姿のまま、川底にいる魚達の住処となり、やがて川の流れに少しずつ削られながら消えていく事になるでしょう」
刺客達の処遇を聞いたリチャードは頭を抱え込んでガタガタと震えていた。明日は我が身とでも思ったのだろうか。
「そして、ガーベラはリチャードの愛人となっていますが、先程の貴族の若者達の中に何人かと関係を持っています。他家に渡って関係性があるので、ウェズリー家だけの意向で処分するのは、他の家が納得しないでしょう」
子供の身体付きをしている私の口からこんな話をするのは憚られるが、私だって好きで言ってる訳じゃないんだよ。クソ馬鹿野郎、お前がだらしないから私が言う羽目になったんだよ!今更、ガーベラの浮気にメソメソするんじゃないよ!
「それにガーベラは、クン・ヤン教国とも関係があります。彼女はトゥルー教の宣教師の資格を持っていて、先程の貴族の若者達をトゥルー教に入信させています。その事自体は何の問題はないのですが、彼女はリチャードや若者達から聞いたケルト王国の情報をクン・ヤン教国に伝えています。どの程度、情報が漏れているのかはわかりませんが対処は必要でしょう」
まあ、あのリチャードが持っていた情報なんて高が知れている。けれど、他の若者達に関しては私はあまり知らない。ならば、やはり対処しておかないとね。
「彼女の罪は、貴族の殺人未遂の共謀、複数の貴族に対しての密通、国家機密の諜報活動と多岐に渡っています。よって、彼女の身柄は国王に引き渡す事とします。異論はありませんね」
「……ございません。御沙汰に従います」
本当にとんだ悪女だよ。いや、もしかしたら職務に忠実な才女なのか?いやいや、それはないか……。
彼女はモリガンによって、両腕を拘束された状態で腕だけを石に変えられていた。その変化は国王に身柄を引き渡された時にに元に戻るようにされているのだという。……モリガンって、器用に霊術を操るなぁ。参考になったよ。
お待たせしました。
次回、ついにリチャードの断罪が始まります。




