4−11 リチャードへの断罪 1
昨夜は遅くまで起きていたせいか、少々寝坊をしてしまった。
慌てて着替え、食堂に向かうと食卓には既に辺境伯閣下とヒル夫人が朝食を食べていた。
「おはようございます、閣下。急な話で申し訳ありませんが、朝食後に少しお時間を頂けないでしょうか」
「ほう、其方からの頼み事とは珍しいな。まあ、午前中なら大丈夫だが」
「できましたら、奥様も同席しては頂けませんか?そして、内密な話ですのでお二人だけでこちらにお越し願いますでしょうか」
「やけに勿体ぶるな。ヒル、君は大丈夫か?」
「わたくしも午前中でしたら、大丈夫ですわ」
「では、後程クリスを向かわせますので、よろしくお願い致します」
辺境伯夫妻は首を傾げていたが、私は朝食を手早く食べて食堂を後にした。
私の居る客間に辺境伯夫妻が入ってきた。
因みに、母さんは父さんと一緒に王都観光に出掛けてもらった。当然、父さんは私と辺境伯夫妻との会談に立ち会いたいと言ってきたが、たまのデートくらい二人で楽しめと言ってて無理矢理追い出した。……子供がいない間に、充分イチャイチャしていればいいよ。
「アリア、私達に話とは一体何なのだ?」
「……とりあえず、場所を変えます。ここでは出来ない話ですので」
私は辺境伯夫妻に近づき、全員を引き連れてモリガンの住処に転移した。
私の転移術に驚愕していた辺境伯夫妻は、しばらくパニック状態になっていたがようやく落ち着いたようだ。そして、ここが自分の屋敷ではない事にやっと気付いた。
「……ここは?」
「モリガンの住処です。さあ、入りましょう。あなた方のご子息がお待ちですよ」
辺境伯夫妻はここがモリガンの住処だと知って驚愕している。
そんなに驚いてばかりじゃあ、先に進めないよ。
私はそんな辺境伯夫妻を無視して、どんどん先に進んで行った。
恐る恐る後についてくる辺境伯夫妻を尻目に、勝手知ったるモリガン邸のホールに到着していた。
大きさで言うと、バスケットコートの半分位の広さだろうか。ここでパーティをやったら少し手狭か。ホームパーティで使えるくらいの部屋だが、今日の会合には丁度良い大きさだ。
私はこの屋敷の主人であるモリガンにエスコートされて、奥の一段上がった壇の中央に置かれていた椅子に腰をかけた。現在、この部屋には私が座る椅子以外に家具は無く、私が除く全員が立って待ちぼうけていた。
クリスは私の左脇に立ち、モリガン・ダグザ・ルーは私の右脇に立った。辺境伯夫妻は私の正面で呆然としている。
「ギャレット・ウェズリー、ヒル・ウェズリー、姫の御前である、控えよ!」
モリガンが一瞥し、それでも動こうとしない辺境伯夫婦にイラついたのか霊術を使って強引に跪かせた。モリガンは、こういった人を強制的に動かす術が得意なのだ。
「……うっ、動けない……」
ギャレットは自分の身体が動かない事に恐怖しているのか、真っ青な顔で私を見つめている。ヒル夫人は、全く状況が把握できていない見たいで呆然としていた。
「貴様ら!姫様の御前である、伏して控えよ!」
「モリガン、彼等は私の正体を知らないわ。少しは大目に見なさい」
「いえ、何事も最初の躾が重要ですので……」
クリス、辺境伯夫妻をペット扱いするんじゃありません。と言いたかったが、それを言うと、後々面倒な事になりそうなので黙っている事にした。
「ギャレット……。今はモリガン達の前なので、呼び捨てにする事を許してくださいね。ギャレット、ヒル、今日は貴方達にお話ししたい事があってこちらに来て貰いました」
「……アリア、其方は一体……」
「姫様を呼び捨てにするとは!」
「……モリガン、話が進まないから後にして頂戴」
モリガンは後ろに下がり、再び私の隣で控えた。
「ギャレット、貴方達には私の正体をはじめ、様々な秘密の共有してもらう事にしました」
「……秘密の共有……ですか?」
「はい、まずは私の正体からお話ししましょう。そろそろお気づきかと思いますが、私は普通の人間ではありません。ギャレットは貴族ですから、当然、聖典を読んだ事はありますよね?」
「……貴族学校では、聖典の授業があるので当然読んだ事はあります」
「ならば、最高神と創造神の名前を知っていますね」
「……確か、フーシとナクロールでしたか……」
ギャレットがお父様とお母様の名前を呼び捨てにしたら、私の周りで怒気が膨らんだが、この際無視だ。
「そう、そのフーシとナクロールが私の両親です」
ギャレットが目と口を大きく開いて驚愕していた。
「勘違いしないで欲しいのですが、ジョン・ニュートンとメアリー・ニュートンの娘である事も事実です。おおまかに考えて、魂の両親がフーシとナクロール、身体の両親がジョンとメアリーと思ってください」
と言われても納得できないのであろう。そりゃそうだ、私だってこんな説明を突然されたらパニックになってしまう。
「聖典に書かれていた神の名前は、フーシ、ナクロール、フリンでした。では貴方はフリン様なのですか?」
「フリンは私のお姉様ですね。私の名前が聖典に載っていないのは、私が産まれたのはまだ百年くらいしか経っていないからです。神様としてはまだ赤ちゃんみたいなものなのです」
実際、クリスの本当の役職は私の乳母だしね。その事は決して口に出さない!だって、私が恥ずかしいから!
「何故、私どもにお話になられたのですか。私どもではなく、国王陛下にお話しするべきなのでは……」
「まず、貴方達にこの事を打ち明けたのは、一つは貴方が私の後見人になった事です。私が言ってしまうのも何なのですが、私ってどうもあれこれと厄介事に巻き込まれやすいので、これからもあれこれと私について聞かれる立場になるでしょう。その時に私の事を知らなくては、色々と困ると思ったのです」
「……神である事を話しても良いと言う事ですか?」
「いえ、知った上で秘密にしなさいと言っているのです。憶測であれこれ言われると迷惑なので、あえて秘密を共有したのです」
貴方達だけにバラしたのに、貴方が言っちゃったら台無しになるでしょーが!貴方もクソ馬鹿野郎と同じく、お馬鹿なのかしら?
「そしてもう一つは、私の事を理解した上で、尋ねておかねばならない事が起きたからです」
「……何でしょうか?」
「……そうですね、これから話す内容は、どちらも貴方の息子であるリチャードに関する話です。貴方達にとっては聞くのが辛い内容になりますが、それでも私は話さねばなりません」
リチャードの名前が出た時、夫妻揃って顔を強張らせた。
「お聞かせください……」
辺境伯夫妻にあえて自分が神である事をバラしたアリア。
これから、辺境伯夫妻にリチャードが犯した悪行を次々とバラしていきます。




