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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−9 リチャード捕獲作戦開始

 私がぐっすりと眠っていた深夜0時過ぎ、クリスがベッドの天蓋の中に入って来て私を叩き起こした。


「姫様、侵入者を拘束しました。この後はいかがなさいますか?」

「そう、父さんや母さんは無事?後ついでに辺境伯閣下も」

「全員、侵入者に気が付いていません。こちらの予定通りに進行しております」

「そう。それにしても随分あっさりと餌に喰らい付いたわね。堪え性がないのかしら?まあ私達にはそこまで余裕がある訳でもないから今夜中にある程度は済ませておきましょう」

「あの若造共はいかがなさいますか?」

「全員の居場所は特定できている?」

「都合の良い事に、全員目標の屋敷に滞在中です」

「夜会でも開催していたのかしら?かえって好都合ね。ついでにこっちも片付けましょう。今後の為に、国王陛下と辺境伯閣下に貸しを一つ作っておきましょうか」


 私達はそんな軽口を叩きながら、目的地まで転移していった。




 私達は、クソ馬鹿野郎が潜伏している、ガーベラとかいう愛人宅の前に転移した。


「なかなか、大きな屋敷ね。本当に大金貨百枚程度でこんな屋敷が買えたの?」

「この屋敷は所謂曰く付きの物件です。前の所有者が中で一家心中しましたし、その前の所有者は自殺しております」

「なるほどね。それで買い手が付かなかったというわけね。あのクソ馬鹿野郎、よくそんな物件に自分の愛人を置いておけるわね」


 リチャードにとってはどうでもいい存在なのか?それとも、そういった事に鈍感なだけなのだろうか?はたまた、不動産業者にババを引かされたのか?まあ、どれでも構わないか。


「まあいいわ。それよりも早く中に入りましょう。ご近所……には聞こえないと思うけど、迷惑にならない様に防御結界で屋敷を囲んでちょうだい。ネズミがご近所に逃げ出すとご迷惑だからね」

「それは妾にお任せあれ、姫様」

「モリガン、いつから一緒にいたの?ここは貴方が管理している領域だから私達がしている事は丸分かりか。では、ここは貴方に任せましょう」

「ありがたき幸せに存じます」


 人間基準で一番身分の低いクリスが屋敷の玄関に近づき、ノックもなしにドアを開いた。

 たまたま玄関ホールにいた執事のオーエンが私達を見つけ、近寄ってきた。


「こんな時間に淑女が出歩くのは感心致しませんが……、先触れも出さずにリチャード様が所有する屋敷に侵入するなんて無礼ではありませんか、アリア様」

「ウェズリー家の執事である貴方がどうしてここにいるのですか?ああ、ギャレット様には愛想をつかしましたか。そうですよね、担ぐ神輿は軽い方が操りがいはありそうですからね」

「……何をおっしゃりたいのか私には分かりかねますが」

「別に大したことではありません。貴方がコソコソとウェズリー邸の家財を売り捌いてネコババしていた事になんて興味はありませんから。確かに、リチャードが次の領主になった方がネコババしやすいでしょうね」

「…………」


 流石に長年執事をやっていた事だけあって、表情に出さないか。


「貴方が辺境伯家から横領した金額は後程辺境伯閣下の前で報告致しましょう。今は、別の要件で来たので、貴方には用はありません」

「……どの様なご用件かは存じませんが、ここを通すわけにはまいりません。お帰り願えますか」

「今、来たばかりですよ。茶の一杯くらい出してもいいのではありませんか?」

「主人の許しが無い侵入者は執事として認める訳にはまいりません。どうか、お引き取りを」

「なるほど、中々な忠誠心です。代々ウェズリー家に仕えてきただけはありますね。……実に欲に塗れた忠誠心ですが

「…………」

「貴様!姫様に対して無礼千万!妾がその首、落としてやろうか!」


 モリガンさん、激おこですよ。というか、モリガンの存在に気が付かなかったのかしら?オーエンの顔は真っ青ですよ。


「モリガン、首は落とさなくてもいいわ、後片付けも面倒でしょうし。それよりも、後で話を聞きたい事があるから黙らせておいて。やり方は任せるから」

「お任せください、姫様」


 モリガンは嬉しそうに頷き、次の瞬間にはオーエンを石像に変えてしまった。

 私が試しにコンコンと叩いて硬さを確かめてみた。……カッチカチですね。


「これ死んでない?」

「大丈夫です。殺してはいませんし、今も意識はあります」

「へぇー、こんなになっても私達の事は見えてるし、話も聞こえてるのかぁ」


 眼球が動かないから、見えてるのは同じ角度の物だけなのはちょっと可哀想だなと思ったから、モリガンに頼んで眼球は動かせる様に直してもらった。けど、石像の目玉が動くのって、かなりホラーな感じだな。


「それじゃあ、クソ馬鹿野郎の所に行きましょうか。今、あいつは何処にいるの?」

「現在、仲間達と共に遊戯室にて酒盛りを開いている最中です」

「お気楽極楽ねぇ。まあいいわ、案内よろしくね」


 私はクリスの後について、階段を上がり先に進んで行った。

 途中でこの屋敷の使用人と出会ったが、みんな私達の事は気にせずに通り過ぎた。酒盛りの参加者とでも思っているのだろうか?私はまだ七歳だぞ!

 後で騒がれても面倒だから、とりあえず使用人達も石に変化しておいた。まあ、使用人達は後で元に戻せば良いだろう。


「こちらが遊戯室になります」


 扉を開けた途端、遊戯室の中にいた大勢の若者が一斉にこっちに振り向いた。

 部屋の中は薄暗く、皆虚な目をしている。

 お香でも焚いているのか、変な香りがする煙が部屋の中に充満していて気持ち悪い。


「このような場所に姫様を入らせる訳には参りません」


 そう言って、クリスは霊術を使って遊戯室にある全ての窓を開け放ち突風を巻き起こして強制的に換気をし、天井に幾つかの光源を配置して部屋の中を明るく照らした。


「……姫様をこの様な下品な場所に入れるのは我慢なりませんが、仕方がありません」

「私も長居はしたくありませんから、手早く片付けましょう」


 中にいた若者達が何事かと騒ぎ始めたが、私達はそれを無視をして部屋の中央まで進んでいった。そしてビリヤード台の上に立ち全員の顔を見渡す。


「クリス、全員は揃っている?」

「はい、全員この場に集合しております」

「そう、皆さん初めまして、私はアリア・ニュートンと申します。貴方達は自称クン・ヤン派と呼ばれている貴族という事で間違いはないかしら?」

リチャード達はクン・ヤン教国の国教であるトゥルー教の信者の一員でした。


そして、部屋の中に充満していた煙は、麻薬を吸引していた際に発生した煙です。後のお話にこの煙の事が触れられていなかったので、後書きに載せておきます。

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