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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−8 田舎娘に報復を! (リチャード視点)

辺境伯に叱られた後のリチャード視点のお話です。

 何故、父上に借金の事がバレたのだ!

 俺は現在、窮地に陥っている。

 父上から次期領主から外され、ウェズリー領にある離宮に蟄居が言い渡された。この俺があんな田舎で暮らせるかっ!しかも、もう一度勉強をやり直せだと、ふざけるなっ!

 私は幼少の時から信頼している執事のオーエンを呼び、事の真相を聞いていた。


「では、そのヴェニス商会とやらが父上に全部バラしたと言うのか」

「はい、ヴェニス商会はヨセミテ商会を買収したようです。そこから坊ちゃんの借金の事が明るみになったのではないでしょうか」


 ヨセミテ商会か。あのまま潰れていれば、俺の借金はチャラになっていた筈なのに。本当に腹が立つ!


「ヴェニス商会の会長のアダムなる者の話ですと、ヴェニス商会の実質的なオーナーはアリア・ニュートンだそうです」

「……あのガキはまだ子供だぞ。何処にそんな金があるんだ?」

「アリアの父親はニュートン商会の会長、ジョン・ニュートンです。父親からの資金援助があったのではないでしょうか」


 ジョン・ニュートンか、また忌々しい名前が出てきたな。

 俺よりも少し年上だが、父上はやたらとこいつと比べてくる。子供の頃、神童だったのかは知らんが、所詮は準男爵に過ぎんこいつと、次期領主である私と比べる事自体間違っているのだ。ジョンなど所詮は田舎貴族の一人に過ぎないではないか!

 それにアリアがヴェニス商会のオーナーだと。貴様には俺の臣下という自覚は無いのか!商会を買えるような金があるなら、あの位の借金などチャラにして更に俺に貢ぐ位の事をしても良いだろうに!

 だが、顔立ちは母娘共に非常に整っている。ドレスのセンスはどれも田舎臭いが、それは俺が磨けば良い話だ。近い将来、あの母娘を俺の愛人にしてやろう。そうすれば、アリアが所有しているヴェニス商会も手に入るし一石二鳥だ。


「このままでは、アーサーが次期領主になるかもしれない。どうにかならぬか、オーエン」

「旦那様の怒りが解けなければ難しいでしょう。今は間を空けられた方が良いかと思われます」


 あの父上の怒りが、本当に解けるのか?……確かに時間を空けた方が良さそうだ。


「とりあえず、俺は屋敷から出る。あんな田舎に引き篭もりたくは無いからな」

「かしこまりました。ガブリエル様はどうなされますか?」


 ガブリエルか……。まさか、あんなにグズグズした奴だとは思わなかった。

 貴族学校時代に親から勧められた婚約者候補の中から容姿だけで選んで結婚したが、俺の顔を碌に見ようともしないし、かと言って不満も口にしない。愛想もまるで無いし、いつもオドオドとして鈍臭い奴だ。正直、俺の妻には相応しくないな。


「ガブリエルはこのままでいい。ガブリエルはどうでも良いが、ジェラルドには母親は必要だろう。まだ、ジェラルドには居てもらわんと困るからな」

「かしこまりました。滞在場所はお決めになられていますでしょうか」

「ガーベラの所に行くつもりだ。あそこは居心地が良い」


 ガーベラはなかなか賢い女だ。そして、男の喜ばせ方をよく知っている可愛い奴だ。確か、元男爵夫人とか言っていたな。私よりも多少年増だが、ガブリエルの代わりに私の妻にしてやってもいいかもしれん。まあ、それは後で考える事にしよう。今はこの家から出ていかなければ、田舎に閉じ込められてしまう。


「オーエン、父上とアリアを見張れ。俺に何かしようとしてきたら邪魔をして、時間を稼いでくれ」

「かしこまりました」


 そうして、俺は屋敷を後にした。




 ガーベラに与えた屋敷の遊戯室の窓ガラスに大粒の雨が叩きつけている。

 天気といい、父上といい、本当に気が滅入る。

 何杯目かの蒸留酒を飲み干し、大きなため息を吐いた。


「リチャード様、もうお酒はおよしになったらいかがですか?」

「この程度で酔うはずがないだろう。本当に鬱陶しい天気だ……」

「仕方がありませんわ。雨はトゥルー神からのお恵みですもの。人である私達にはどうにもなりません」

「ふん、神は俺の心の内側をよく見ているらしい。この雨のように、何もかも水に流してしまいたい事ばかりだ!」

「ギャレット様がリチャード様をお怒りになるのは、リチャード様に期待しておられるからですよ。期待していない人に怒ることはありません。無視すれば良いのですから」

「……父上が俺に期待?そうかもしれんな、俺は次期領主だしな」

「ええ、ギャレット様はリチャード様に試練を出されたのです。それを達成出来たら、きっとお許しになられますよ」

「なるほど、試練か……。考えてみれば、俺はそういった挫折とかは経験してこなかったからな、たまにはそういった趣向も一興か……」

「はい。頑張ってくださいませ、リチャード様」


 俺は、アーサーの様な軟弱者とは違う。その事を父上にわからせてやるのだ。


「……それにしても、アリア様はカフカースの大商会を買収できる程のお金持ちなのですね」

「ガーベラ、あの田舎娘に様などつけるな。母娘共々、顔立ちは良いがどうも田舎臭い。我が家に居るだけで肥やし臭くてたまらん!」

「申し訳ありません、リチャード様」

「どうせ、父親から金をせびったのであろう。欲深いガキだ!」

「けれどリチャード様、その程度の子供ならば、簡単に騙して金を毟り取る事が出来るのではないですか?お金はいくらあっても良いではないですか」

「騙す?ガーベラはあの田舎娘を口説いて来いと言っているのか?俺はあんな奴の子守りなどしたくは無い!」


 初めてあの田舎娘に会った時、アイツはこの俺を見下した目で見つめてきやがった。あんな女に騙すとはいえ甘い言葉をかけたくない。


「申し訳ありません。でしたら、脅してはいかがでしょう。たかが子供、ナイフの一本も見せれば泣き出すでしょう」

「それは面白いかもしれんな。是非、あの田舎娘が泣き喚くのを見てみたい」

「かしこまりました。では、私の伝手を使って、その娘を脅してきましょう」

「いや待て、ガーベラ。その者たちをここに連れて来い。どうせなら色々と頼みたい事がある」


 金などどうでもいい。あの田舎娘は、この俺にこんな屈辱を与えた事を後悔させねば気が済まん。母娘共々嬲り者にした後、殺してしまおう。

 ついでに父上も同罪だ。この俺に楯突いた報いを受けて貰おうじゃないか。

 そんな事を考えていたら少し気分が晴れてきた。

父親の殺害とアリア母娘の誘拐を企てたリチャード。


次回、アリアの反撃が開始されます。

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