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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−7 ヴェニス商会の経営戦略

 アダムが辺境伯邸に訪れてから数日が過ぎた。

 クリスの話では、クソ馬鹿野郎がギャレットに無茶苦茶叱られてボコボコに殴られたらしい。その余りの激昂っぷりにヒル夫人が夫を止め息子に土下座をさせて謝らせたという。その時、ガブリエルはオロオロするだけで何も出来なかったそうだ。

 ひとまずリチャードはウェズリー領にて謹慎となり、次期領主からは外れ勉強のし直しとなった。次の領主の決定はアーサーが貴族学校から卒業してからになると言う事らしい。……廃嫡しなかったのは、親としての情けか、それとも飼い殺しにする為か判断が難しい。

 しかし、そんな両親の思いとは裏腹にリチャードは怪我が癒えた途端に辺境伯邸から失踪してしまった。ギャレットは放っておけと言って放置し、ヒル夫人はそんな夫を宥めようと必死だし、ガブリエルは相変わらずオロオロとしていただけだった。

 その為、ヒル夫人の授業は滞りがちになり、今では私達だけで自主練をするのみの日が続いていた。

 もうお披露目なんてどうでもいいから、オウルニィに帰りたいよ。




「姫様。アダムからヴェニス商会の今後の方針について質問があるそうです」

「……わざわざ馬車に乗ってきたの?転移で来た方が楽なのに……」


 私達はアダムがいる応接室に入り、向かいの席に座った。


「それで、ヴェニス商会の経営方針だっけ?」

「はい、主様には何やら考えがお有りの様でしたのでこちらに参りました」

「別にヴェニス商会に行ってもよかったのに」

「そんな、主様にそんなお手間をかけさせるわけには参りません」


 私が創った眷属なのに、私の性格には似ていないな。それとも、私ってもしかしたら根が真面目だったのかも……。


「ヴェニス商会は現在、ヨセミテ商会の事業をそのまま継承しております。ただし、主様の言葉通り高利貸し事業は廃業と致しました」


 銀行業をするならまだ良いが、高利貸しは必要ないだろう。せっかく商会を運営するのなら、グローバルでクリーンな総合商社を目指したい。


「ヴェニス商会は交易で儲ける事にしましょう」

「……交易ですか?」

「そう!アダム、私達の最大の強みとは何かわかる?」

「強み?旧ヨセミテ商会はカフカースきっての老舗ではありますが、強みと呼べるような専業といえば、テンサイ糖の専売くらいかと」


 テンサイ等はまろやかな風味とコクがある甘味が特徴で、料理に使うのには良いのだが、お菓子や飲み物なんかに入れる時はその風味が邪魔になる時がある。なので、砂糖としての知名度はログレス王国やクン・ヤン教国で作られている上白糖に軍配が上がる。

 ……テンサイ糖はオリゴ糖が多く含まれているから体に良いのにね。


「昔のヨセミテじゃ無くて私達の強みよ。私達の最大の強みは、世界中の精霊と通じているということよ!つまり、精霊を通じて世界中のありとあらゆる物を手に入れる事が可能なの。しかも、輸送費は転移術や転移門を使えばほぼゼロで輸送出来るの。支店も精霊の住処にすれば、土地の購入代や建築費も節約出来るし、税金も安く抑えられるしいい事尽くめね」

「……それは、ちょっとずるくないですか?」

「何を言っているのクリス。ちょっとじゃなくて、無茶苦茶ずるいに決まっているじゃない。しかも、真似をしようと思っても誰も真似が出来ない所が更にいいのよ」

「確かに良き案だと思いますが、今のヴェニス商会の資金ではすぐにショートしてしまう恐れがあります」

「それなら大丈夫。ヴェニス商会の株券を発行して精霊達に購入して貰いましょう。彼らはお金を溜め込んでいるだけで使う事が無いから、貯まったお金を有効活用しないといけないわ」

「ヴェニス商会を株式会社化するつもりですか。……この世界では、初の試みになるでしょうね」

「公にするつもりは無いから、気付くのは商業組合でもごく一部じゃないかな」

「この方法だと、ヴェニス商会が世界有数の資金力を持った商会になってしまいますが、それでよろしいのですか?」

「確かにヴェニス商会は相当に目立つ事になるかも。なら、私はオーナーから外れてただの株主になろうかな。アダムはCEO(最高経営責任者)とCOO(最高執行責任者)を兼任としようか」


 この方法なら私の事はそう簡単に勘付かれないだろう。


「それと、本店を王都に移転させましょう」

「オウルニィではないのですか?」

「オウルニィにはニュートン商会があるし、本店が王国の北の端ではやりにくいでしょう。店舗の確保が大変だけど、そのくらいなら何とかなるでしょう」

「ヨセミテ商会の王都支店を改装されてはどうでしょうか。大きさもカフカースの本店よりも大きいですし」

「……経営が傾いてたのに、王都の不動産を売却していなかったの?」

「カフカースの事件からまだ二ヶ月ほどしか経過していませんし、これほど急速に経営状態が悪化するとは予想していなかったと思われます」


 それ程、精霊の敵の悪評の影響力が凄かったという事か。

 実際に精霊が存在する世界だし、人間ではどうやっても太刀打ち出来ないからね。天罰を下されそうな所には近づきたくないか。


「……精霊の影響力が強いのなら、取締役にレイトン、カルノフ、アベルを入れましょうか?」


 今、ボソッと名前をあげた三人は、この異界を管理する大精霊達だ。

 魔術師の塔の名前の元になった精霊で、レイトンは智慧、カルノフは力、アベルは勇気の精霊と呼ばれている。

 この三人の精霊が人の前に現れたのはたったの一回のみで、特にレイトンが人間に話した物語を書き写した物が聖典と呼ばれている書物だ。

 そういえば、私が異界に来る前に初めて面会した精霊がこの三人だったな。……いやー、懐かしい。


「彼等を取締役に抜擢するのはやめておいた方が良いでしょう。混乱に拍車が掛かります」

「……そう?アダムが言うなら辞めておきましょう」




 後日、精霊達にヴェニス商会の株券を売り出したのだが、精霊達がこぞって買い漁り速攻で完売してしまった。

 え?追加販売して欲しい?……まあ、良いけど。あと、クレジットカードの上限とか関係ないから!大体、貴方達はクレジットカードなんて持ってないでしょう!

 え?会場は何処かって?……株券は握手券ではありません!私は握手会なんてしませんし、CDも販売していませんから!もうそんな時代じゃないから!

 え?株を買ったのにコメントを読んでもらえない?……株券はスーパーチャットでもありません!私は動画配信なんてやっていませんから!こらっ!株券にコメントを書き込むなっ!

 え?どの券がレジェンダリーかって?……株券はトレーディングカードじゃあありません!そこ!重さを比べるんじゃありません!貴方もライトを使って透かすんじゃありません!

 貴方達!何処でそんな事を覚えたのよっ!!




 さらに後日、私の写真入りのトレカを密かに販売していた罪で、カールはクリスにボコボコにされて、全てのカードをクリスに没収されたいた。

 ところでクリス、没収したトレカを渡しなさい。私の写真を貴方の個人的な欲求不満解消に使用する事を許した覚えはありません!

少し箸休め的なお話にしてみました。

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