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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第四話 辺境伯家のお家騒動

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4−2 辺境伯邸の変化

お披露目パーティー開催のために辺境伯邸に滞在する事になったアリア及びニュートン夫妻。


父さんは陞爵の準備や根回しなどのために、忙しく駆け回っています。(自分のと兄の分も一緒に行っているので忙しさは二倍です)

 あれから私達ニュートン一家は王都の辺境伯邸で、私のお披露目パーティーの準備や母さんの教育の為に滞在をし、伯父さん達の一家は一度オウルニィに帰郷し、お披露目の前に再び王都に戻ってくる事になった。

 私のお披露目パーティーの準備は、本当に準備済みだったみたいで私達がやる事は殆どなく、当日着る予定のドレスのお直しをする程度だった。

 私とは別メニューの母さんは辺境伯夫人から社交を中心に勉強をしているみたいだ。

 これまでは、準男爵夫人だったし社交も苦手だったのでパーティーや夜会などに出席する事はなかったが、男爵夫人ともなるとそうも言っていられなくなる。

 今回の陞爵によってニュートン男爵家はダナーン派に入る事になり、国王主催のパーティーや舞踏会などに出席しなければいけなくなった。

 ニュートン男爵家は、ダナーン派の中では一番の下っ端で新人になるので大変な立ち位置になるだろう。

 母さんは、一応結婚前に養祖母の実家の男爵家で教育を受けてきた筈なので基本は出来ていると信じたいが、あれから十年近く経っているのだ、忘れている事も多いだろう。

 だが、私の心配していたものとは別の問題が浮上するとは思ってもみなかった。




 最近、どうも屋敷の使用人達の態度が変わった気がする。

 少し前までは、私達をお客さんとして接していたのに、最近は妙によそよそしい感じがする。

 この頃にはクリスや母さん達の侍女が王都に到着していたので生活には支障はないが、辺境伯邸の空気感が冷え冷えしていて居心地が悪い。

 私はもうちょっとでおさらばするしどうでもいいかと考えていたのだが、どうやら母さんはこの空気感に耐えられなかったみたいで、日頃のストレスも相まって熱を出して寝込んでしまった。

 ヒル夫人は一応お見舞いに来てくれたが、それ以外は誰も来ない。仮にもお客様が倒れたというのに使用人が顔を全く出さないのだ。

 私がその事に憤慨していたら、母さんが目を覚ました。


「母さん、大丈夫?喉は乾いてない?それとも何か果物でも食べる?」

「ありがとう。じゃあお水を貰える?」


 私は水差しからコップに水を注ぎ、母さんに渡した。


「……ふうっ。駄目ね、こんな程度で倒れるなんて」

「体が弱っている時に無理は禁物だよ。今はお休みしないと……」


 母さんが涙を流してシクシクと泣き始めた。どうやら、メンタルもかなり弱っているみたいだ。


「……私には、やはり貴族の生活に向いてないみたい」

「そんな事ないよ。オウルニィではきちんと出来てたと思うけど」

「でも、何度やってもヒル様の合格が頂けないの……。結婚前に教わった時もそうだったの。私はやっぱり貴族にはなれないのよ……」


 うーん、母さんはすっかり自信を喪失してしまっている。

 母さんを励ますのは父さんや伯母さんが得意なんだけど、父さんは陞爵の件で朝から晩まで出掛けていて今はちょっと無理っぽいし、伯母さんはオウルニィで留守番になるからこっちには来れないし。


「じゃあ、私と一緒に勉強しようよ!」

「……アリアと一緒に?」

「そう!私も男爵令嬢になったし、いつかやらなくちゃいけない事だから。母さんも、私と一緒に頑張ろっ」

「……そうね、アリアが頑張るんだから、私も頑張らないとね」


 少しは元気が出たのか、顔色が少し良くなった。


「でも今日はちゃんとお休みしないとね。後で、食べられそうな物持ってくるね」


 母さんは、ベットに横になり再び眠り始めた。

 ……なんだか、親子関係が逆転しちゃってるね。まあ、病気の時は仕方がないか。

 私は、母さんの侍女に母さんがおきたら知らせてもらえるように頼んで、私にあてがわれている客室に戻った。


「……奥様のお加減はいかがでしたか?」

「疲れて熱が出ちゃっただけだと思う。私が治療してもよかったけど、今日はちゃんと休んでもらう為にそのままにしておいた」


 クリスは頷いて私にお茶を差し出した。


「その方がよろしいでしょう。もし明日もお辛そうでしたら、私の方で対処いたします」

「……お願いね。それにしても、ここの使用人達の態度はどういう事なの?辺境伯の使用人なのに碌におもてなしもできないなんて」

「その辺りは調査が済んでおります」

「へっ?いつの間に調べたの?」

「主の疑問に即答できてこそ、一流の侍女ですから」

「……そうなの?そんな事、初めて聞いたけど?」


 私の疑問にクリスは答えなかった。

 どうやら、自分なりのポリシーとかがあるのだろう。


「今回の使用人の態度の急変の原因はリチャードにあるようです」

「……リチャード?あの次期辺境伯のボンボンね」

「はい、そのボンボンが使用人に向かって「メアリーは元平民の孤児だから相手にしないように」と命令したようです」

「はあっ!?確かに事実だけれど、今は辺境伯家の客人のはずよ。もしかして、辺境伯自身もそう思っているって事なの?」

「いえ、ヒル夫人は奥様のお見舞いにいらしたので辺境伯夫妻は関与していないでしょう。しかし、黙認した可能性は捨てきれません」

「黙認もどうかと思うけど、もし知らないのだとしたら辺境伯夫婦の統治能力を疑わざるをえないわね。使用人すら把握出来ていないのに、領地なんて統治できるはずないじゃない」


 多分、本当に知らないのだろう。もし知っていたら、例えフリだったとしてもお見舞いなんて来ないだろうし。


「……あと、確定したわけではありませんが、ボンボンはメアリー様を恋人にしたいみたいです」

「……あいつ、奥さんも子供もいるし、母さんの事を孤児だと蔑んでいるのに?」

「家の外にも愛人がいるみたいですので……。その愛人も出自は不明で、恐らくですが娼館の出かと……」

「最低のクズ野郎じゃないの!どうしてそんな奴が貴族なんてしているのよっ!」

「貴族は基本的に世襲制ですから。辺境伯の子供が、偶々あのクズ野郎だっただけです」


 私は世襲の制度自体は否定はしないけど、統治者の世襲は慎重に判断してほしいと考えている。

 あんなクズ野郎が領主になったら、ウェズリー領は無茶苦茶になりはしないだろうか。不安で堪らない。


「クリス、母さんに貴方の眷属を護衛としてつけなさい。それと、モリガンと協力してあのクズ野郎を徹底的に調べなさい。必要な資金は貯金箱からいくらでも持って行って構わないわ」

「かしこまりました」


 はあっ、なんでこんな事を私がやらないといけないのよ。

 今の私は自分や母さんの事で手いっぱいなのだから、自分の息子の教育くらいは辺境伯家できちんとしておきなさいよね、全く!

リチャードが母さんを狙っているという悍ましい報告を聞いたアリア。


アリアの中で辺境伯の株はストップ安になる程、評価が下がっています。

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