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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第三話 国王陛下との謁見

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3−9 簡易型対魔物用神霊術の披露

「ジャスパー副団長様。私はまだ未熟ですので、ダグザから人に向かって攻撃魔術を撃つことだけは禁じられています。そこはご了承くださいませ」


 私の神霊術を人に向かって撃ったら、殺人事件どころの騒ぎじゃなくなってしまう。それだけは、絶対に阻止しなければならない。


「……わかりました。でしたら、あの的に向かってアルウィン殿が仰っていた魔術を撃ってみてください」


 やはり攻撃魔術は使わないといけないか。

 アルウィン兄さんが煽っちゃったしなー、仕方が無いか……。


「副団長様、アルウィン兄さんが言っていた術は、この訓練場では同じ条件が整いませんので少し違う事をご了承ください」

「ああ、それは勿論です」

「では、参ります……」


 私は仕方なく右手を上げて岩塊を創り出した。

 アルウィン兄さんを助けた時の対魔物用神霊術は、キボリウム山脈に豊富にある鉄鉱石や砂鉄を使って創った純鉄の塊だったが、今回は創造の権能で創った岩塊なので、あの時よりも多くの神霊力を使っている。

 この訓練場では素材の調達が難しいので、あの時よりも小さくても言い訳が出来るだろうと考え、岩塊の大きさは約二メートル程の大きさにしてみた。

 そして、巨大な岩塊を大砲が弾を撃ち出すような速さで的にぶつけてみた。


 ドゴォォォォォォォォォン!


 あの時と違って周りに樹木がないので、純粋に岩の塊が的に当たった音と衝撃だけが鳴り響く。

 うーん、やっぱり大きさが足らないので音は大きいけれど、派手さはあまり無いね。岩もバラバラに砕けちゃってるし。

 まあ、他の魔術師達も石礫をぶつけていたのでこの位は許容範囲だろう。

 と思っていたが、周りの魔術師達を見てみると全員呆気に取られた顔で私を見つめている。父さんに至っては、手を額につけて天を仰いでいる。

 あれ?やっぱり派手さが足らないせいで呆れちゃったかな?


「……アリア嬢、今の魔術がアルウィン殿が言っていた魔術で間違いありませんか?」

「そうですね、概ねその通りです」

「……概ねというと?」

「あの時は、キボリウムの山中でアルウィン兄さんが魔物に襲われたので、それを助ける為にキボリウムに豊富にある鉄鉱石などを使って創った純鉄の塊を魔物にぶっ放したのです。大きさも今の岩塊の倍程の大きさがありましたから、もっと派手だったと思いますよ」

「……派手……ですか」


 あれ?派手さは関係なかったかな。だとしたら、一体みんなは何を驚いているのだろうか?

 そして私の周りには、まるで信じられない物を見たかのような顔をした魔術師達が囲んでいた。

 その時、私は魔術師連中が片方の手に短い杖を持っているのに今更ながら気がついたのだった。


「ジャスパー副団長様。皆さん、片手に杖をお持ちみたいですが、この杖にはどういった効果があるのでしょうか?」

「……ああ、そういえばアリア嬢は魔術師の杖もなしで魔術を使っていましたね」

「魔術師の杖ですか?」

「はい。この杖は魔術具でして、この杖を使うと効率的に魔術を扱える様になるので魔術師は全員携帯しています」


 ほうほう。これはいい事を聞きましたよ。

 あの杖は魔力の集中を補助したり、魔力の流れを整えたりすることが出来る魔術具みたいだ。

 私は神霊力が有り余っているので、効率的に神霊力を使う必要はないし、あの無駄をとことん嫌うクリスが神霊力の使い方を褒める位なのだから、そこそこ神霊力の最適化には成功しているのだろうと思う。

 しかし、杖を使うということは別の形で役に立ちそうだ。

 まあ、今はじっくりと考え事が出来る環境では無いのでオウルニィに帰ってから考える事にしよう。


「……アリア嬢は、今の魔術を使っても魔力は枯渇していないのですか?」


 ジャスパーさんは、例のドリンクを差し出して、私に質問してきた。

 ジャスパーさんってば質問が多いなぁ。国王陛下から私を探る様に命令されているのかな?それとも、ただの好奇心だろうか?

 ……どうせ、いずれバレるだろうし、そのくらいのネタばらし位は構わないだろう。


「そうですね。あの程度の魔術でしたら然程問題ありませんね。もう何度か披露しましょうか?今度はもう少し大きな岩塊でド派手に撃ちましょう」

「いえ、もう十分です!これ以上はアリア嬢の負担になりかねませんので……」

「そうですか……。残念ですけど、仕方がありませんね」


 うーん、もう一発撃って、拍手喝采のスタンディングオベーションを受けたかったけど、私の事を考えて遠慮されたんだからこちらからは無理は言えまい。

 ……それにしても、このドリンク、意外と美味しいな。


 それから私達は、訓練場で一通りの魔術を見学して王宮に戻る事になった。


「ジャスパー副団長様。本日はご案内いただきましてありがとうございました」

「いえ、こちらこそ貴重な体験をさせて貰いました。アリア嬢が、我らの仲間になるのを楽しみにお待ちしております」


 そうして、訓練場を後にしたのだった。

 帰る時にチラリと、私が撃った岩塊の破片を観察している魔術師の多い事に疑問を抱いたけど、まあ別に気にしなくてもいいか。

相変わらず、派手さに変なこだわりを持っているアリアでした。


次回は、今回の出来事をジャスパー副団長の視点から見たお話になります。

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