3−7 諸々の手続きとアリアのお願い
人生って、手続きや申請しなくてはいけない事が多くて嫌になりますよね……
「陞爵のパーティの事も重要だが、ひとまずアリアの魔術師学校の入学の話をしようか」
そういえば、ここに呼ばれた理由って、そう言えば私の話をする為だったなね。
「まずは、ギャレットが後見人になる件を終わらせよう。……アリア、この書類にサインを」
私は机の上に置かれた書類にサインをして提出した。
「七歳が書いたとは思えない程、美しい書跡だな。大人顔負けじゃないか」
美しい文字を書く事は貴族の女性にとって重要なスキルだと言って、伯母さんが何度も練習をさせてきたのだ。綺麗に書けてないと伯母さんに申し訳がない。
「あとこの書類は、精霊様の後見人の書類なのだが、精霊様のサインはどなたがサインをされるのだ。確か全ての精霊様がアリアの後見人になられるのだったな」
「それは、ダグザとモリガンとルーが署名します。では、今から呼びますね」
「待て!今から呼びだすとは聞いていないぞ」
「前にダグザ達と話をした時に、書類のサインの話になったんです。そうしたら、みんなが中々譲らなかったんです。ですからこの国の精霊であるダグザとモリガンとルーが代表するって事になりました」
「いや、ここに呼び出さなくても、サインを貰ってきてくれたらそれでいいのだが」
「私もそう言ったのですけど、特にモリガンが譲らなくて……。あとで駄々を捏ねられても面倒ですし……」
国王陛下は仕方なさそうにため息をしてソファーから立ち上がった。
国王は、前回の会談の時に精霊がどの様な移動方法で来るのかを経験していた為、然程の驚きは無いみたいだが、やはり精霊の来訪というのは緊張するみたいだ。
私は念話で三人に来てもらうように指示を出した。三人には王宮に来る前に念話をしておいたので、既に準備は整っているみたいだった。
空間がゆらゆらと揺れてダグザ達が姿を現した。
国王をはじめとする私以外の全ての人が跪き頭を垂れた。
「久しいな、国王よ。変わりないか?」
精霊を代表してモリガンが挨拶をした。王都はモリガンの担当地域なので代表となったのだろう。
そして、国王を始めとする貴族達の長々とした挨拶が終わり、私達は再び席についた。
「この書類にサインをすれば良いのか?」
モリガン達は、国王が差し出した書類にサインをして満面の笑みを浮かべた。
これは……、一つの書類に私のサインと一緒に自分のサインがあるのを見て婚姻届と一緒とか、そういう気持ち悪いことを考えているな。
「アリア嬢の魔術師学校の入学ですが、通常通りに他の魔術師候補と一緒に入学してもらいます」
宰相さんが、国王陛下に代わって私の入学に関する話をしてくれた。
「学校の寮には生徒のお世話をする人を一人連れて行けますが、どなたか心当たりはございますか?なければこちらで使用人を用意する事はできます」
「では、妾が……」
「クリスを連れて行きますので、モリガンはついて来なくても結構です」
私は食い気味にモリガンの提案を却下した。
……モリガンに身の回りの世話を任せるなんて、別の意味で危険すぎる。
「……わかりました。その様に手配しておきます」
ほらっ!宰相さんも引いてるじゃない!モリガンは少し自重しなさい!
「私、国王陛下にお願いがあるのですがよろしいですか?」
「何だ?ああ、そう言えば謁見室でアリアに褒美をやるのを忘れていたな。何でも言ってみなさい」
「それでは、私が魔術師学校に入学する時の引っ越しと移動をモリガン達に協力してもらうのを許可してもらいたいのですが」
国王陛下達は私を見て唖然としていた。
やっぱり非常識な内容だったのか。父さん達の怒りは当然だったのね。
「……えっと、もうモリガン達には了承済みなので、国王陛下のお許しが頂けたら良いのですが、駄目だったでしょうか?」
「……モリガン様がお許しなられたのであれば、私達は依存はありません」
「ふむ、ではそのように」
何でモリガンが得意げなのかはわからないが、これで引っ越し問題も方がついた。もう父さん達に怒られる心配もないだろう。
「魔術師学校の入学に関しては以上です。他に気になる点はございますか?」
「今年、入学する生徒の人数は何人ですか?」
「今のところはアリア嬢を含めて五人の願書が提出されています。ですが、毎年入学ギリギリで願書を届け出る領主も多数おりますし、アリア嬢の噂もありますから、今年の入学者は増えるかもしれません」
まだたったの五人しか入学願書を出していないのか。
それにしても、私が入学するからってそんな急に魔力を持った人がひょこひょこと増えるわけ度もないだろうに、大袈裟だよ。
これは多く見積もっても十人は超えないかもしれないね。
「現在までに入学願書を提出している新入生の内訳は、十三歳と十九歳の男子が二名、十七歳と十八歳の女子が二名となっております」
……へえ、十三歳の子がいるんだ。
私が入学しなかったらその子が注目の的だったろうに、悪いことをしてしまったかもしれない。ここは不可抗力という事で勘弁してもらいたいものだ。
「アリアは魔術師学校が創設して初の十歳未満の新入生になる。貴族学校の入学も十歳からなので、こちらにとっても初めての事となるので不手際もあると思う。何か不都合があれば学校の教師か、魔術師団のジャスパーに連絡しなさい」
「はい、わかりました」
魔術師学校の件に関してはこのくらいだろうか。
「じゃあ、モリガン達は帰ってもいいよ」
「はあっ!ですが、まだ来たばかりですよ!」
「元々、サインを書くだけって言わなかった?」
「確かにそう聞いておりますが、ひ……アリアと一緒にいる機会はそうそうございませんので……」
モリガンがゴネ始め、ダグザもモリガンに同調して腕を組んでいた。……ダグザとは、ほぼ毎日会っているでしょうに。
「……モリガン、ダグザ、アリア嬢の言われた通りだ。帰るぞ……」
今日来た三人の精霊の中で一番常識人のルーがモリガン達に帰るように促した。ルーも本当はここに残りたそうな雰囲気なのだが私の言う事に従ってくれるみたいだ。
「モリガンには、魔術師学校に入学したら今よりも会える様になるから、今日は我慢してね。ルーも色々とありがとう」
モリガン達は、ここに来た時と同じ様に転移術を使って各々の住処に帰っていった。
「……アリアは、本当に精霊様達と気軽に話をするのだな……」
陛下は感心したように私を見つめた。
「……まあ、精霊達にそう頼まれましたので……」
……実は私の方が立場は上なんです……なんて言える訳ないじゃん!
精霊達が来たので、ちょっとドタバタとしてしまったが、私の入学に関する話し合いは終わった。
私達は帰る準備をし始めた。
「結局、アリアに対する褒美を決められなかったな。今度会う時にでもまた聞くとしよう」
「……それでしたら、ひとつ我儘をお許しください。今回の王都行きは、馬車を使っての移動ではなく転移門で移動したので、使用人達がウェズリー領に取り残されたままなのです。ですから、今夜はウェズリー領に帰る事になりますし、目的を果たしたので、もう王都に来る必要は無くなりました。ですが、私達が王都に来た時に王都の観光や学校の見学などをしようと思っていたんです。ですので転移門の使用許可を頂けませんか。それと、これは出来ればでいいのですが、魔術師団の見学もさせて頂きたいのですが、陛下の許可をいただけますでしょうか」
「ああ、そういえばギャレットからも同様の話を聞いていたな。しかしなぜ、魔術師団を見学したいのだ?」
「恥ずかしながら、私は人が使っている魔術をまだ見た事がありません。精霊達から魔術を習ってはいますが、精霊達も人が使う魔術と精霊が使う術は違うと言っておりますが、精霊達も人間が使う魔術を見た事がないみたいで……」
「なるほど、アリアは精霊の魔術は使う事ができるのか?」
「はい、使う事は出来ますが、私はまだまだ練習不足なもので……」
一応、何かをやらかしてもいいように予防線を張っておく事にしよう。
「それならば、アリアが精霊の魔術を見せてくれるのであれば魔術師団の見学を許可しよう」
「……精霊の魔術ですか?それはどの様なものでも構わないのでしょうか?お披露目するには少々危険な術もありますので」
「ふむ、その辺りは魔術師団の副団長のジャスパーに任せる事にしよう」
「かしこまりました」
その後、私達は国王陛下の計らいによりこのまま王宮に滞在する事になった。伯父さん達は顔を引き攣らせていたが、アルウィン兄さんは無邪気に喜んでいた。……アルウィン兄さんは、そのまま素直なままでいてね。
さて、魔術師団で披露する術を考えないと。……下手をすると魔術師団を全滅させかねないからね。
ようやく国王陛下とのお話が終わり、ホッと一息のアリア達。
次回は魔術の見学に出かけます。




