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アメイジング・グレイス  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第二話 カフカース事件

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2−3 ケネス・パーネル 2

ケネスによる誘拐未遂事件の続きです。

「取り敢えず、まずは情報収集をしなければなりませんね」


 現在判明している事は全てケネスからの証言だけだ。しかも裏も取れてないので、信憑性は低いと言わざるをえない。

 全てはケネスが捏造した証言で、ケネスの単独犯という線もあり得るのだ。


「私は嘘なんか吐いていません!信じてください!」

「私もケネスさんが嘘を吐いているとは思ってませんよ。しかし、客観的な証拠がない以上、ケネスさんの言葉だけを信じる訳にはいかないのです」


 つまり、ケネスの証言に出てきた人物から、ケネスを信じるに値する証言を引き出さなくてはいけない。


「クリス、直ちに男爵邸に戻り、使用人達からケネスさんに私が精霊の弟子になった事を話した事があるのかを確認してきてください。そして、今回の事件はまだ誰にも内緒にしておくように」


 クリスは私の命令を受け、すぐさま部屋から転移していった。


「クリスは優秀ですから、すぐに証言を集めてくるでしょう。後はカフカースの領主とヨセミテ商会ですが、これは今すぐ事情聴取という訳にはいきませんね」

「ケネスはカフカースの領主の命令書を見たと証言しておりました。それを押収してはどうですかな」

「そうね、すっかり忘れてた。ケネスさん、領主の命令書は今もありますか?捨てたりしていないでしょうね?」


 犯罪を示唆する命令書だ。ヨセミテの商会長が一度だけケネスに見せて焼却処分をしても不思議ではない。私なら間違いなく処分するだろう。


「あ、持っています。上着の内ポケットに入っています」


 私はダグザに命じてケネスのポケットに入っている手紙を回収してもらった。

 一々命令するのが面倒臭いが、淑女が男性の身体を弄る事はハレンチなのでクリスにバレたら怒られる案件になってしまう。そんな恐ろしい体験はしたくないので、面倒でもダグザにやってもらわなくてはならないのだ。


「ふむふむ。確かにこの封蝋の紋章はカフカース侯爵の紋章ですね」


 紋章の偽造は結構重い犯罪になる。ヨセミテ商会が懇意にしている貴族の紋章を偽造しようとする事は考えられない。


「内容も確かに私の誘拐と書かれていますね。……おや?私の誘拐に成功したら大金貨十五枚ですか。結構、太っ腹ですね」


 大金貨一枚で、普通の平民なら三年は余裕で暮らせる金額だ。つまり十五枚もあったら暫くは遊んで暮らせるし、行商人ではなく何処かに店舗を持つ事だって出来るだろう。

 もしかしたら、このお金もケネスが私を誘拐する切っ掛けになったかもしれない。


「さっきの証言には、このお金の事は言いませんでしたね?何故ですか」

「……成功しても報酬が支払われるとは限らない。アリアちゃんを渡した途端に殺される事だって……」


 ケネスさんが言っている事は間違っていない。

 貴族の令息や令嬢の誘拐なんて大事件を引き起こした犯人を野放しにするという事は情報の漏洩のリスクを抱えるという事だ。そんなリスクをカフカースの領主や大商会の会長が抱え込むとは考え難い。


「ケネスさんは私を誘拐して、ヨセミテ商会に引き渡し、お金をもらった後どうするつもりでしたか?」

「……家族と国外に逃げるつもりでした。カフカースにはニヴルヘイムの国境があるので」


 確かにヨセミテ商会から貰ったお金を使えば不法入国も出来るだろう。しかしその行き先は地獄だ。

 ニヴルヘイムは長い内戦があったせいで、いまだに国土の復興は遅れ気味だし政情も不安定だ。周辺国はニヴルヘイムをいまだに敵視しているから他国からの援助も少ない。ニヴルヘイムの最大の援助国が南方のクン・ヤン教国なのだから、いかに周辺国との軋轢が大きいのを感じる。

 そんな中、余所者の外国人がひょっこりと現れたら、迫害の対象になるのは間違いないだろう。身包み剥がされるだけなら御の字で、最悪、命を落とす可能性は高い。


 この命令書を見てもケネスの証言は信用できると思ってもいいだろう。

 なら、家族が人質になっているのも信用してもいいかもしれない。

 私はここで考えてみる。

 ケネスは誘拐未遂の犯人だ。平民の誘拐ならともかく準男爵令嬢の誘拐となれば未遂といえども死罪が言い渡されるであろう。そうなればケネスの家族はどうなる?ケネスが死んだからといって素直に解放してもらえるだろうか?私の考えではノーだ。恐らくケネスの家族も殺されるだろう。

 ケネスはともかく、ケネスの家族は巻き込まれただけに過ぎない。そんな人間を、そのまま見捨てても良いのか?


「ケネスさん、最後に聞きたい事があります。……家族を助けたいですか?」


 私はケネスの目を正面から見て質問した。


「当然だ!……アリアちゃんには悪いことをしたが私は家族を見捨てられない!その為にアリアちゃんを誘拐しようとしたんだ!」


 家族を助けたい。

 その正直で真っ直ぐな瞳は、今でも家族の所に戻りたいと必死に訴えかけてきた。


「わかりました。……じゃあケネスさん、私と契約を交わしましょう」

「……契約?一体何のために?」

「互いに裏切らないためですよ。ケネスさんは商売人ですから、契約を反故にした者の末路がどうなるかを一番承知しているでしょう?」


 私はケネスに契約内容を伝えた。

 一つ、私がケネスに誘拐された様に偽装する事。

 二つ、私をヨセミテ商会に引き渡した時に渡された報酬の内、七枚をケネスが受け取り、私が誘拐の偽装の報酬として七枚を受け取る。残りの一枚は私の誘拐未遂の慰謝料として私に支払う事。

 三つ、今回の事件で起こった事を他人に口外しない事。これには家族も含まれる。

 四つ、事件中及び事件後に私達に関して詮索することを禁じる。

 五つ、事件解決後もケネスは、オウルニィ及びウェズリー領で商売を続ける事。


「待ってくれ、アリアちゃん誘拐されるってどういう事なんだい!」

「そうですね、目的は主に二つです。まずはケネスさんの家族の救出です。強引にヨセミテ商会に乗り込む事も可能ですが、今回はより安全性の高いこの方法を選びます。二つ目は、事件の全容の把握ですね。カフカースの領主がなんの目的で私を誘拐しようとしているのかを知るためです。こういうのは本人から聞くのが一番手っ取り早いですから」


 ケネスが驚いた表情で私を見つめている。

 そんなに驚くことかな?まあ、七歳の発想ではないかもしれないが。


「……アリアちゃん達の事を誰にも話さないのも約束するよ。色々と詮索しない事にもね。だけど、最後の行商人を続けるというのは?」

「これは、ケネスさんが急にウチとの取引が無くなったら、父さんの商会に迷惑がかかるかなと思っただけです。だから、別にこの項目は削除しても構いませんが、ですが、ケネスさんもご家族が助かった後、行商人じゃなくても生活が続けられますか?大金貨七枚もあったら行商人でなくても暮らしていけるとは思いますが、ケネスさんは行商人という仕事に誇りを持っていた様に見えましたから」


 大金を得て仕事を変えたからと言っても、それで成功する保証はない。寧ろ失敗するリスクの方が高い。ケネスは以前、行商人は自分の天職だと言っていた。その時の表情はとても晴れやかだったから、皮肉で言った言葉ではないはずだ。


「……わかった。アリアちゃんの慈悲に縋る事にさせてもらうよ。でも、だからと言ってアリアちゃんを領主に渡すというのは……」

「ケネスさんは、私が領主に引き渡されたら殺されると思っていますね」


 ケネスは驚いていた。

 どうやらケネスは、私を死ぬことを一度も考えた事の無い楽観主義者だと思っていたようだ。……残念、私はもうすでに一度死んだ経験がありますから。


「唯の地方領主如きに殺されるような私ではありませんよ」

「……こう言ってはなんだけど、君の強さは我が身を持って経験させられたよ。けれど……」

「ケネスさん、あなたは自分の家族の為に、その身を投げ打って犯罪者になる道を選びました。なら今度は自分の家族の為に、恥を忍んで七歳の子供に頭を下げ助けて貰う道を選択する事も出来るのではないですか」


 ケネスは目を大きく見開いて、全身の力を抜く様に息を吐いた。


「……わかった。アリアちゃんにお願いするよ。私の家族をどうか救ってもらえないかい」

「ふふっ、わかりました。これで契約成立ですね。ならクライアントの要望には出来るだけ叶えて差し上げないと。領主への復讐は丸焼きがいいですか?それとも串刺しがいいですか?」


 私の言葉に何故かケネスさんはドン引きしていた。……解せぬ?

アリアのカフカース領行きが決定しました。


カフカース領主は丸焼きや串刺しになってしまうのでしょうか?

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