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アメイジング・グレイス  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第零話 アリア

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0ー3 プロローグ 3

「人間に精霊が宿るという事ですと、私が『瀬織ありあ』の魂となった訳ですね。でも、お父様は神と精霊は別物だと仰いましたが」

「ああ、確かに神と精霊は別物だ。通常ならば神がそのまま人間の魂として宿る事はないのだが、其方の場合は違った」


 神の出産はお姉様が初めてだったので他に例がないのだが、お姉様の場合は、出産後しばらくしてから神の権能の源である神霊力が発現したらしい。だが私の場合は、おそらく胎内で神霊力を発現していたのではないかという事らしい。しかしそれだけでは、私が『瀬織ありあ』の魂になった理由にはならない。


「これは推測なのだが、其方がナクロールの胎内にいる時に母体とフリンを守るために其方自身を膜か卵の殻のようなもので包んだのではないか……」


 強過ぎる他者の神霊力は、たとえ神であろうとも害のあるものらしい。普段なら自身の神霊力で相殺出来るが、お腹の中などの内側から神霊力の影響を相殺する事は非常に困難なのだという。ましてや神霊力の無い赤ちゃんのお姉様には危険だ。……なるほど、それで殻を被ったという推測になったのか。

 しかし殻のせいで私は母胎から栄養が上手く受け取れず、成長不良に陥った。お姉様はすくすくと成長し先に産まれたが、私は殻のせいでなかなか成長しなかった。それでも少しずつ成長していき、長い長い年月を経て私は誕生した。しかし、お母様は私が胎内にいるのが日常化してしまって、私の出産に気が付かなかった。しかも私は殻がついたまま生まれてきてしまった為、精霊的にはとても弱々しい精霊に見え、精霊界に、ましてや神のお側に仕えるような強い精霊にとっては存在していることすらわからなかった。だから私は自由に動きまわり、いつしか精霊界の端にある地球のある物質界に辿り着いたのではないかと。……いくら赤ん坊だからって、私ってばアグレッシブ過ぎないかっ!




「あの、食事はどうしていたのですか?赤ん坊ならおっぱいとか離乳食とかが必要ですよね?」

「ああ、神に食事は必要ではない。神にとって食事とは、娯楽や嗜好品のようなものだな」


 神様って、筋肉とか骨とかの成長した分の栄養を何処から補っているの?もしかして、仙人みたいに霞を食べて生きているって事なのかな?


「どう?このお菓子、とっても美味しいでしょ!お茶もお菓子も私が色々な世界から集めた超一級品ばかりなのよ!」


 嗜好品がゆえこだわっているのだろう。今飲んでるお茶はとても香り高く、一緒に食べているお菓子もとても美味しいが、今の私はあまりの衝撃的すぎる告白の連続でお茶やお菓子の味なんてわからなくなっている。


 私が殻を被っていたせいで、貧弱な精霊と勘違いされ人間に宿ることが出来た。このまま一生殻を被ったままだったら問題はなかったが、どうやら私が人間に宿ってすぐに殻が破けた。殻によって隠されていた神霊力が溢れ、私が人間に宿った事が発覚すると精霊界の宮殿である「タカアマハラ」は大パニックに陥った。強すぎる神霊力は人体にとってとても有害だ。お父様やお母様が直接介入できたらまだ何とかなったかもしれないが、昔の取り決めで物質界に神は介入出来ず、唯一介入できるのはその物質界を管理する精霊だけで、お姉様も叡智を与える事以外は何も出来ないそうだ。

 お父様達は、精霊達をサポートしつつ何とか私の神霊力を抑えようとしていたが、精霊では上位の存在である神の力を抑える事は出来ない。しかも、神霊力を抑えたとしても私の苦痛を長引かせるだけで、根本的な解決にはならない。私が死ぬことでしか解決出来ないが、娘を殺せと命じることは心情的に無理だっただろうし、精霊の側にも負担が大きすぎた。そうして手を拱いてる間に、私の寿命が尽きてしまった。


「私のせいですっ!私がしっかりと自分の身体のことを管理していれば、貴方にこんなに長い苦痛を味あわせる事はなかった……」


 そう言ってお母様は泣き崩れてしまった。家族の二人は何とも言えないまま押し黙ってしまった。

 ……私って、どこに行っても親を泣かせてばっかりだね。


「……えっと、お母様、お父様達もですけど、そんなに謝らないでください。赤ん坊の時とはいえ、自分からあの世界に行ったみたいですから、ある意味、自業自得です」

「しかしっ!」

「それに、お話を聞いて自分自身納得しているのです。ずっと自分の病気が何なのかも知りたかったですし、自分が人間の両親とあまり似ていないことも不思議でした。これは憶測ですけど、『瀬織ありあ』の容姿は両親の遺伝よりも魂……神としての私に引っ張られたのでは無いでしょうか?」


『瀬織ありあ』の容姿は黒い髪に金色の瞳で、肌はお母様譲りの真っ白な肌だった。……肌が真っ白なのは、ずっと病室にいて日に焼けなかったせいもあるんだろうけど。


「多分、その通りだろうな」

「私は、長年疑問に思っていた事に解決できて、とてもスッキリした気分です。確かに苦痛が続く日々は辛かったですけど、その事で人間の両親を恨んだ事は一度もないですし、ましてやお父様やお母様を恨むことなんてあり得ません。私の方こそ、赤ん坊だったとはいえ色々な方にご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」


 私は自覚がなかったとはいえ、方々の方に多大なご迷惑をかけてしまった。そのことを考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 親達が自身の行いに反省している中、自分達よりもしょぼくれていた私を見てお父様達は複雑な表情を浮かべながら私を見つめていた。




「あの、お姉様にお願いがあるのですけど……」

「なに?何でも言って」

「お姉様が地球に居られる精霊の方とお知り合いなのですよね?」

「お知り合いっていうか、上司と部下みたいな関係……かな」

「でしたら、そのお方に地球の両親や兄弟が心やすらかに過ごしてもらえるように頼んでもらえませんか?私の病気のせいで、苦労ばかりかけて、何も返せないまま死んでしまいました。せめてこれからの人生は、穏やかに過ごしてもらえたらと……」

「なんっっって良い子なのっ!お姉様に全部任せてちょうだい!」

「ほどほど……、程々で結構ですから……」

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