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アメイジング・グレイス  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第一話 オウルニィの少女

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1−13 領主の来訪 1

伯父さんの帰宅と一緒に何故か領主様までやってきました。

 ダグザとのお茶会から数日が経ち、伯父さんが領都から帰ってきた。……何故か領主様と一緒に。

 突然の領主の来訪に男爵邸内はパニック状態だ。

 私達は急いで着替え、玄関に並んで領主に挨拶を行った。


「初めまして領主様。ジョン・ニュートンの娘、アリア・ニュートンでございます」

「ギャレット・ウェズリーだ。皆、出迎え大義である」


 本来なら未成年である私は領主様の前で挨拶する立場ではない。……アルウィン兄さんは自室に篭っているし、今日の晩餐も出席しない。……全くもって羨ましい。

 だが今回の訪問の目的は私と会う為に領主がやってきたのである。だから、私は嫌でも領主に挨拶をしなければならなかった。

 ……せめて先触れが欲しかったと思う今日この頃。


「アリア嬢はまだ七歳と聞いたが、礼儀作法がとても優雅で洗練されているな。流石は神童と呼ばれたジョンの娘だな」


 ギャレット・ウェズリーはケルト王国でたった二人しかいない辺境伯の一人である。

 キボリウム山脈沿いに位置するウェズリー辺境伯と、その東隣に位置するカロタ半島全域を領地としているカロタ辺境伯が、ケルト王国の北部から来襲する魔物を撃退する役目を負っている。

 ギャレットの見た目は四十代前半だが、魔物撃退の役目の為かギャレットは全体的に均整の取れた身体付きをしていて、伯父さんがムキムキのマッチョ体型だとすれば、ギャレットはバランスの取れた細マッチョだ。




「突然押しかけて来て申し訳ないが、ウィリアムの報告が俄には信じ難い内容だったのでな、わしが確認しに来たというわけだ」


 私達は男爵邸の会議室に移動し、そこで領主様の側近の立ち合いの下、再度私の魔力量を測定することになった。

 確かに私が今までに聞いた魔力持ちの常識からすれば、とても信じられる内容では無かっただろう。

 私は魔術具の取っ手を握ってるだけだが、魔術具のメーターを見ていた領主一行は全員驚愕していた。

 ……どうだ、恐れ入ったか!とは思わないが、ちょっとだけ溜飲が下がった。


「素晴らしい魔力量だ。これならば文句無しで魔術師学校に推薦できるな」


 ギャレットは満足そうに頷き、ホクホク顔で席に戻った。


「ジョン・ニュートン準男爵、アリア嬢を私の養女にして魔術師学校に入学させたいのだがどうだろうか?」


 ……やはり、そう来たか!

 ギャレットの言葉は父さんが想定していた言葉通りで、逆にこっちがびっくりしてしまった。


「……大変名誉な申し出なのですが、些か問題がございます」

「むっ。其方はこの養子縁組を断るというのかね」


 父さんの返答にギャレットは気分を害したようで、顔を大きく顰めた。


「勿論、私の立場ではこの申し出に反対できないことはわかってはおりますが、アリアにはすでに後見人がおりまして、その方抜きでは養子縁組ができないのです」


 ギャレットはとても納得できなかったようで、顔を真っ赤にしながら怒り始めた。


「領主のわしに断りもなく、勝手に後見人をつけたと申すか!」

「申し訳ありません。後見人の届出を領主様に提出していなかった事はこちらの落ち度でございます。ですが、その方がアリアの後見人になったのは数日前の事でございます。書類を作成する前に領主様がこちらに来られて私共も困惑しているのでございます」


 本来なら、この様な事で領主が男爵家に来るような事はあり得ない。

 こちらから領主の下へ訪れるのが一般的なのだ。

 それに、父さんはダグザ達が後見人になる書類は作成していたが、伯父さんが帰って来て了承をもらった後に領主に提出するつもりだったのだ。まさか伯父さんの帰宅と同時に領主が来る事は想定していなかった。


「その後見人は認められない。断りなさい」

「申し訳ありません。私共の立場ではお断りする事が出来ないのです。大変恐縮なのですが領主様のお力添えをいただけないでしょうか」

「……よかろう。すぐにその者を連れて来なさい。数日前に後見人を選んだのなら、そう遠くに住んでいる者ではないのであろう?」


 えっ、このまま領主様はここで待つつもりなの?

 たとえすぐ近くに住んでいたとしても、移動に丸一日以上かかることなんてざらにあるのに。

 ……本当にダグザを呼んでいいの?と思いながらも念話術を使ってダグザにこちらに来るようにお願いした。


「……アリア、すぐに連絡は出来るだろうか?」

「今、お願いいたしましたから、すぐに来ると思いますよ」


 ギャレットは気分を落ち着かせる為か、お茶をゆっくりと飲んでいた。

 すると、会議室の一角の空間がゆらゆらと揺れ始め、その中からダグザが現れた。

 今日はいつものヘラジカの様な姿ではなく、初めから人間の姿での登場だった。

 ギャレットはダグザの登場に言葉を無くし、カップを持ったまま固まってしまっていた。


「アリア嬢、領主が来たからすぐに来てほしいと連絡を受けたが……」


 ギャレットはまだ呆然とダグザを見ている。というか信じられない物を見た様な有様だ。

 おそらく、自分ですぐに連れて来いと命令しながらもお茶を飲み終えるまでの間に相手が来ることは想定していなかったのだろう。

 しかも、会議室の扉からではなく転移術を使って会議室に直接現れたのだ。


「我輩を呼びつける無礼な人間はどこにおるのだ?」

「ダグザ……様。そこで固まっているお方がこの地の領主様でいらっしゃるギャレット・ウェズリー辺境伯閣下でございます」

「アリア嬢……我等は後見人になった故、敬称なぞ付けなくても良いのではないか?」

「ダグザ……様がそう仰られるのであれば、これからはダグザと呼ばせていただきます」


 よかったー。ダグザに様付けで呼ぶのややこしかったんだよね。

 けど、私はこれからダグザって呼び捨てになるけど、クリスからはこれからもダグザ様って呼ばれるんだけど、そこは良いのかな?

 まあクリスは私と違って、こういうのを割り来るのが得意だから問題ないだろう。……ダグザ達、精霊の心労はこの際無視だ。

 そうこうしてるうちにギャレットが正気を取り戻したみたいだ。


「ダグザ様、お初にお目に掛かります。ウェズリー領の領主、ギャレット・ウェズリーでございます」


ダグザとの出会いにびっくり仰天のギャレット。


ギャレットは転移門以外の転移術を初めて見ました。

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