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アメイジング・グレイス  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第一話 オウルニィの少女

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1−11 ダグザとの会談 1

アリアが神霊力(魔力)を持っている事が判明し、精霊の弟子になったと聞かされた家族達。


父親であるジョンはダグザに会いたいと考えている様です。

 伯父さんが、私の事を領主様に報告する為に馬車に乗って領都まで出掛けていった。

 何でも魔術師になる可能性がある魔力持ちは領主に報告し、更に国王陛下まで報告しなければいけないそうだ。……大変なんだね。

 父さんが言うには、私はウェズリー領に久しぶりに現れた魔術師の卵だそうで領主様は大変お喜びになられるだろうとのことだ。

 まあ、嘆かれるよりも喜ばれる方が気分はいいか。




「アリア。一度父親としてダグザ様に御挨拶に伺いたいのだが、ダグザ様と連絡は取れるだろうか?」


 父さんは律儀な性格なので、挨拶なしで他所様の弟子になるなんて良いとは思わないようだ。


「連絡はいつでも出来るけど、別に挨拶なんか必要ないと思うよ」

「そうはいかないよ。可愛い娘を預かってもらうんだ、挨拶もしないなんて失礼な事はできないだろう。それに、ダグザ様に相談したい事もあるんだ」


 ダグザに相談、何だろ?


「ダグザ……様に相談は向いてないと思うよ。結構考えなしな性格だから、伯父さんとは気が合うかもしれないけど」


 何処かから、お前が言うなって声が聞こえた気がするけど私の事じゃないよね?


「ハハっ、ダグザ様は兄さんと気が会うのか。なら、アリアを預けても安心できるけど何はともあれ挨拶は必要だよ」

「わかった、後で連絡しておくよ」

「ああ、よろしく頼むね。出来れば領主様がくる前に会いたいと言っておいてくれないか」

「はーい」


 私はダグザに連絡を取り、二日後にダグザと両親の面談が行われることになった。




 クーパー男爵邸の庭の四阿に父さんと母さんと伯母さん、そして私が並んでダグザが来るのを待っていた。……因みに伯父さんは領都からまだ戻ってきていなかったし、アルウィン兄さんは未成年なので出席できなかった。……本人は出席したがってたけどね。

 父さんは深い緑色のウエストコートに同じ色のブリーチズで、母さんは小豆色のドレス、伯母さんは紺色のドレスを着ていた。

 私はピンクのドレスで、レースが多用されていてフリフリな感じでとても恥ずかしかった。


「こんなに着飾らなくても良いのに……」

「そう言わずに我慢してね……」


 母さんは前回の騒動の現場を見ていなかったのでダグザを見るのは初めてなのだ。その為かとても緊張している。

 伯母さんも母さんと同じく緊張していたが、使用人たちにあれこれと指示を出していたのでとても忙しそうだった。


「まあ、たまには家族でこんな格好をするのも良いじゃないか。アリアは未成年だしメアリーは社交に出ないからね」

「……ごめんなさいジョン。あなたに肩身が狭い思いをさせてしまって」

「誤解しないでメアリー。別にそんな事思っていないさ。ただ君に窮屈な思いをしてほしくないだけさ」


 父さんと母さんは今日もラブラブだ。娘がそばにいる事にそろそろ気がついてほしい。

 すると、庭の中央の花壇の辺りの空間がゆらゆらと揺れ始め、その中からダグザがのっしのっしと歩いてきた。

 父さんが跪き、母さんと伯母さんカーテシーをしてダグザを出迎えている。私は本来ならカーテシーをしなければならないのだが、事前にダグザからやめるように言われていた。


 ……クリスもお辞儀してるのに、私だけ礼儀知らずみたいじゃない?


「ダグザ様、私共のお願いをお聴きくださり恐悦至極に存じます。この度はようこそおいでくださいました事感謝を申し上げます」


 まず、私の保護者である父さんが挨拶をした。……珍しく父さんの声が少し震えているね。でもしょうがないか。この世界で精霊と会うなんて、神様と会うのと同じ事だもんね。


「私はニュートン準男爵家の家長のジョンと申します。私の隣にいますのが妻のメアリー。その隣がクーパー男爵家の家長であり私の兄の妻でありますメアリー様です。どうぞお見知りおきください」

「ほう。義理の姉妹同士で同じ名なのか」

「はい。ダグザ様には紛らわしく感じるとは思いますので、義姉をメアリーと呼び、妻はダグザ様がわかりやすい名でお呼び頂けたらと」

「ふむ。其方らは普段はどう呼び合っているのだ?」

「私は義姉と呼び、義姉や妻はそのまま名前を呼び合います。アリアは妻の事は母さんと義姉は伯母と呼びます」

「我輩は親族ではないから、その呼び方は使えぬな」

「使用人達は家名で呼ぶ事が多いです。町民は義姉を大メアリー、妻を小メアリーと呼んでいます」

「ふむ、その呼び名は面白いな。では我輩も大メアリーと小メアリーと呼ぶとしよう」


 実は母さんたちもこの大小メアリーの呼び方をかなり気に入っている。本当の姉妹みたいで嬉しいのだそうだ。特に母さんは、孤児だったので姉妹とか家族に憧れを持っているのだ。


「ダグザ……様。お茶にしますので、お姿を変えてもらえませんか?」


 私はダグザに姿を変えてもらう様にお願いをした。ダグザもクリス程完璧ではないが人間の姿に変えられる術を会得している。

 ダグザは了解をして、姿を変える霊術を行使した。

 ダグザの姿が一瞬だけ輝き、次の瞬間には人間の姿になっていた。

 真っ白い長髪に長い髭、体毛と同じ青色のローブを着ていて、身長は父さんよりも高い190センチメートルはあった。……なんで老人の姿なのよ!

 精霊には私達神と同じく老ける事はない。その為、お父様やお母様の姿はいつまでも二十代前半のような若々しさだ。

 もしかして、この姿はダグザの趣味なのだろうか?

 そして、私達は四阿に入って席に付き、給仕にお茶の支度をしてもらった。

家族の紹介が終わったので、次回からダグザとの会談の本題となります。

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