0ー2 プロローグ 2
その声の主の顔は、髪色や瞳の色こそ違っていたが、私の顔に瓜二つだった。
以前、私の顔立ちは両親や兄達とはあまり似ていないと周りの人達に言われていた。だから小さい頃に「私だけ、捨て子なの?」と言って両親を悲しませた事もあった。
「まあっ!アリアったら、とても驚いた顔をしているわ」
それはそうだろう。今まさにドッペルゲンガーと現在進行形で遭遇しているのだ。……確かドッペルゲンガーと会ったら、死が近いんだっけ?それって死んだ後でも有効なの?
「初めまして、アリア。私はフリン。あなたの双子の姉よ」
姉?しかも双子?
「……あの。私には兄ならいますが、姉はいませんけど」
「それは人間だった時のことでしょ。私達の関係は精霊としてよ」
益々意味が解らない。精霊?それって絵本とか御伽噺とかに出てくる、何だかフヨフヨとした存在な奴でしょ?
「フリン。それではアリアには理解できませんよ。きちんと説明してあげないと」
私を抱きしめたまま、美女の人は私に瓜二つな人を嗜めた。
「私はナクロール。あなたの母です。そして、この方はフーシ。あなたの父です。と言っても今の貴方には解らない事だらけでしょう。こちらに来て座りましょう。お茶を飲みながら説明しますね」
そこで私は、今テラスのような所にいる事に気がついた。……このテラス、広っ!このテラスだけで体育館ぐらいあるよっ!
ナクロール……お母様?は私から離れて、フーシ……お父様?にエスコートされて部屋の中に入っていった。
私がぼーっと突っ立っていると、フリン……お姉様?が手を繋いできて部屋に案内してくれた。
お姉様は私と双子の姉妹と言ったが私よりもずっと背が高く、年齢も二十歳前後に見えた。
私はお姉様にエスコートされ席についた。……生まれて初めてお付きの人に椅子を引かれたよ。もしかしたら、自称私のお父様って偉い人なのかも……。
お茶の準備も給仕の人が全部やってくれた。私は黙ってされるがままになっていた。
「アリア。まずは其方に謝らなければいけないことがある。まずは神の身でありながら人間として生まれてしまったこと。そして、神が故に人間としての生活が儘ならなかったこと。それはどちらも我らの失態だ。アリアにとっては許し難いことだと思う。申し訳なかった……」
……今、物凄い爆弾発言がありましたよっ!
「あのっ!私って神様なんですかっ!」
「そっか、アリアは最初に人間として生まれたから、その辺りの事は解ってないかも……」
「なるほど。ではそこから説明することにしよう。まずは私は・・・」
えっと、お父様は万物の祖でこの宇宙そのもので、お母様は、創造神でその御力で多くの精霊を生み出し、精霊達が住まうこの精霊界とその他の生物達が住まう物質界を作った。そしてお姉様は、精霊達を統括し精霊界と物質界の秩序を守り、物質界の生き物に叡智を授け、その世界の文明を起こすきっかけを作る叡智の女神なんだとか。……とてもついていけない話なんだけど、揶揄われているって事でもなさそうだ。
「えっと、どうして私は人間として生まれたのですか?」
お父様によると、私はお姉様は双子としてお母様のお腹に宿ったらしい。お姉様はしばらくして何の問題なく生まれたが、私は全く生まれる兆候すらなかったらしい。胎内で死んでいるのかと疑われたが、神として生まれた精霊は死を超越した存在であるため、まだ胎内で成長しきってないのだろうというのが大方の見解だった。
「この子は、のんびり屋さんなのねと、その当時は思っていたのだけど……」
……ちなみに、神様の妊娠は人間とは違ってお腹が大きくならず、悪阻などの体調の変化はないそうだ。胎内に生命が宿っている感覚があるだけで、ほとんど普段と変わらない。しかも出産は苦痛がないという、何とも羨ましい限りである。しかし、今回は体調が変化せず、出産に苦痛がないことが裏目に出てしまった。
お姉様が成人してからも、私が生まれる事はなかった。お母様も私が胎内にいる感覚が日常になり過ぎて、もう然程意識しなくなっていたという。そして今から十五年前、宇宙の端の方にある物質界のひとつを管理する大精霊から、人間から強力な神霊力を感じるとお姉様に報告が上がって来た。あわててお母様に連絡したところ、お腹の中の私がいなくなっている事に気がついたらしい。……お母様、流石にのんびりしすぎですよっ!
「でも、神様が人間になるのっておかしくないですか?姿を変えたのならまだわかりますが……。もしかして、私は人間に転生したのですか?」
「ふむ、そうだな当たらずとも遠からずと言ったところか……。人間、いやこの場合は生物と言った方が良いか。生物とは何をもって生きているとされる?其方の世界にロボットとかアンドロイドとかいう物があったであろう。身体があり人工知能によって考えたり学習したり出来るが、それでその者は生きていると見做されるか?」
……いきなり話がSFとか哲学っぽくなっちゃったな。確かに、私が生まれてきた時代ではそういった物は生物とか生きているとは見做されなかった。時代が進めば、そう言った考え方が変わるかもしれないけど。
「物質界では、生命には必ず精霊が宿る。つまり人間でいう所の魂という存在だ。精霊界では、精霊は精霊のまま存在出来るが、物質界ではその地に存在する生命に宿らないと存在できない。神と精霊は基本的な所は同一なのだが、同じネコ科の動物でもトラとネコが違うように、神と精霊は別の種族と言っていい。そして、物質界で生物に宿る魂の精霊は、精霊界で暮らす精霊達よりもかなり弱い精霊になる」
お父様は、随分と私にわかりやすく説明してくれている。……けれど、話の内容が突拍子すぎて理解が追いつかないんだよ!




