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アメイジング・グレイス  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第一話 オウルニィの少女

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1−4 この世界の魔術師

この国の魔術師の事が明らかになります。

「父さん、この国に魔術師ってどれくらいいるの?」


 私は家族との晩餐の時に先程の疑問を父さんに聞いてみた。


「魔術師?また珍しいものに興味を持ったね」


 ……珍しい?もしかして、私が想定しているより魔術師の数が少ないのかも。


「アリア様は本で読んで魔術師に興味を持たれたようですが、オウルニィには魔術師が居られないのでどうしてかと質問されました。私がお答えする事ができなかったので、旦那様に尋ねてみたらどうですかと……」

「なるほど」


 クリスにフォローをしてもらいつつ、私は質問を重ねていった。


「ふーむ、ケルト王国には魔術師は三百人いるかいないか程度ではないか?」

「そうですわね。魔術師は全員国王直属の魔術師団に入団させられますから。オウルニィに魔術師が居ないのも当然です」


 伯父さんも伯母さんも貴族学校の卒業生だから、そのあたりには詳しいようだ。


「父上、それじゃあ子供の魔術師もいるのですか?僕、一度手合わせしてみたいです!」


 ……アルウィン兄さん良いこと言った。私もそれが聞きたかったの!


「はっはっはっ!やはり、お前もそう思うか!若い時の俺にそっくりだっ!」

「兄さん、笑い事では済まされませんよ!もし、そんな事したら国王陛下にどんなお叱りを受けることになるか……」

「アルウィン、魔術師は国王陛下直属の臣下です。魔術師は数が少ないため、欠員が出てもなかなか補充もままなりません。その為、魔術師への私闘は固く禁じられています」

「ああ、それに子供の魔術師はほぼいないと思ってもいいよ。魔力が発現するのは早くて十二、三歳、遅い人だと二十歳くらいだ。それに魔力が発現しても魔術が使える人はその中のごく僅かで、しかも殆どの人が手品位の術しか使えないようだよ」

「じゃあ、魔術師団に入団できる人は凄い人なんですね!」

「そうだね、魔術師団は巨大な魔物討伐や国家間の戦争のような時しか派遣されないからね。魔術師は戦局を左右させられる程の力があると思ってもいいかもしれないね」


 今、非常にマズイ情報が飛び込んできましたよっ!子供の魔術師はいないだってっ!


『……ねえ、クリス。七歳でこの世界を壊せるような神霊術持ちの子供って、ここの人達にどう思われるのかなぁ?』

『……そうですね。普通に神の化身とか破壊の権化とか思われるんじゃないですか』


 ……神の化身じゃなくて、本物の神様なんですけどっ!


「……えっと父さん、国はどうやって魔術師になれそうな人を見つけるの?」

「それは、本人の自己申告だね。魔力が発現した時は自分でわかるそうだから、それをその土地の代官や領主に申告して魔力量を調べるんだ。うちも魔力を測れる道具は持っているよ」

「……魔力持ちっていうのを申告しない人はいるの?」

「それはどうだろう?魔術師は平民がなれる最大の出世コースだからね。よっぽど後ろめたい事がない限り魔力量を計りにくるんじゃないかな」

「叔父上、貴族でも魔術師になった人はいるんですか?」

「当然いるよ。ただ、貴族に比べて平民の人口の方が圧倒的に多いからね、どうしても平民の方が魔術師になる確率が高くなるのさ」

「……アリアは何か気になるの?……もしかして、魔力が発現した?」


 ……母さん、おっとりしているようでなかなか鋭い!


「いえ、ただ疑問に思っただけで……」

「そうだよっ!アリアは父さんとずっとここで暮らすんだよねっ!」

「……ずっとは暮らさないけど、魔力持ちだと親と離れて暮らすんですか?」


 父さんはちょっと残念そうにしながら答えてくれた。


「魔術師になれそうな魔力を持っていた場合、王都にある魔術師学校に入学することになるからね。そこでみっちりと魔術を修行するんだ」

「ああ、魔術師学校は王宮にある魔術師の塔と同じ敷地にあるから貴族の立ち入りは制限されていて、ある意味禁足地だ。親子ですらなかなか面会できないらしい」




 家族団欒もそこそこにして、私は自室に戻ってきた。


「……どうしたものか」

「どうしたとは?」

「私が神霊力持ちだってバレない方法……」

「姫様には無理ですね」


 ……はうっ!クリスってば、バッサリと切らないでっ!


「姫様は息をするように神霊術を使うじゃないですか、私から言わせれば隠す気が本当にあるのか疑問ですよ」

「……そんなにバレバレなの?」


 確かに、部屋に帰ってすぐに防音の術を速攻でかけたりしているけど、こんな話誰にも聞かせられないじゃん!


「姫様はどうなさりたいのですか?それを聞いてみないとアドバイスもできませんから」

「私は普通に暮らしたいの!前世でできなかった普通の女の子の生活をしてみたいのよっ!」

「普通の女の子?……それは前世基準の普通でしょうか?それともこの世界の標準的な準男爵の令嬢としての普通でしょうか?」


 ……そういえば考えた事がなかったね。


「前世基準ですと、この世界では不可能です。社会通念も男女の役割も違います。地球と比べたら文化レベルが低いのですから、同じような生活を求めるのは間違ってます」


 確かにその通りだ。全くぐうの音も出ない。


「そして準男爵の令嬢としての普通の女の子は、成人したら結婚し子供を産み育てる事です。結婚相手が下級貴族になるか、富豪の平民になるか位の差はあるかもしれませんが、まあ姫様が考えている普通には程遠いのではないですか?」


 こちらも全くもって反論できない。

 という事は、私の考えている普通って……


「この世界では普通ではありませんね」


 ……がーーん!

 頭を殴られたようなショックだよっ!


「……ど……どうしたら」

「……姫様。姫様にとっての普通とは、自分のやりたい様にやりたい事が出来る環境ではないのですか?姫様はこの国の王の元では、それができないと考えておられるのですよね?」

「そうかも……。父さん達の結婚の話を聞くと貴族のしがらみって、私には合いそうもないし……」


 好きな人と好きなように結婚できなんてと私は思ってしまうけど、この世界にとってはそれが当たり前なんだよね。それにこの世界は、基本的に男尊女卑の世界だ。男の人が外で仕事をして、女の人が家を守るのが普通なのだ。女性には職業選択の自由もないし、学習の機会も少ない。だけど、私はそれを当然だと思えない。つまり、私はこの世界にとっての異物で、前世に毒されている異端者だ。


「姫様は行動の制限に縛られず、尚且つ身分にも縛られず、さらに結婚相手を自由に選択したいと……」


 ……この世界からしたら、物凄く非常識な考え方だと私も思う。まあ、結婚はまだ当分先の話だけど。


「まあ、それ位ならば問題ないかもしれません」


 ……ん?問題ない?


「……簡単ですよ。姫様がこの世界にとっての『特別』になればいいのですから」

クリスの言う『特別』とは一体何なのでしょうか?

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