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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第二話 学生生活

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2−11 ジャスパーとの練習試合 2

「それでは、これよりジャスパー・マスケリンとアリア・ニュートンとの練習試合を始めます。双方、準備はよろしいでしょうか?」


 審判役の男性が私達に確認してきた。


「構いませんよ」

「大丈夫です」

「では、試合を開始します。はじめっ!!」


 審判の合図と同時にジャスパーさんが試合場を真っ白な霧で覆い尽くし私の視界を遮ってきた。そしてその直後、霧の中からジャスパーさんが木剣を構えて私に突っ込んできた。私の脳天を割る様な強烈な振り下ろしの剣を左に躱し、追撃で来た左逆袈裟斬りを杖で受け止めた。


 ……有言実行、本当にジャスパーさんの剣に躊躇が全く無いね。


 ジャスパーさんは更に二、三度剣を振るった後、再び霧の中に身を隠した。

 周囲全方向からバタバタと足音が聞こえてくる。足音を消すのでは無く、全方向から足音を聴かす事によって位置の特定を防いでいるのか。

 そして、今度は私の背後から一文字斬りで斬りつけてきた。

 その攻撃を振り向きざまに杖で受け止め、逆に私が前に踏み込み押し返そうとした所、ジャスパーさんの左手に握られていた短杖から氷柱つららを創り出し、私のお腹に向けて放とうとしてきた。

 私はジャスパーさんと同じ大きさの氷柱を撃ち互いにぶつけてジャスパーさんの攻撃を阻止する。

 氷柱の攻撃が失敗したと見るや、ジャスパーさんは私から離れまた霧の中に隠れていく。しかも、追撃防止としての氷柱攻撃を左右から数発連発してきた。

 その後、ジャスパーさんは霧の中から氷柱攻撃を繰り返してくる様になり全く近付かなくなった。

 ならばこちらから近づこうと踏み出した時、私の足元が急激に凍り始めてきた。


 ……足を凍らせて動きを封じるつもりなのね。


 私は足元に杖を突き、石畳を振動させて凍結を阻止する。

 どうやら、ジャスパーさんは私をここで足止めをしたいみたいだ。

 ……その攻撃の意図は何なのか?

 どうやら、次の魔術にその答えがあるみたいだ。


 次の瞬間、細かい氷の粒が霧の中全体に乱れ飛び、氷の粒同士が激しくぶつかりあった。

 

 これは、霧じゃなくて……、そういう事か!


 そう思った瞬間、強烈な発光現象と爆音が鳴り響いた。

 所謂、雷が落ちたという現象だ。

 その後、二度に渡って雷が落ちたが、私の体は全く傷付いてはいなかった。

 雷が落ちる直前、私はジャスパーさんの魔術に気がつくと、地上から一メートル程浮かび上がり、水で出来た膜状の球体で私を包み込み、更にその内側にもう一つ不純物を全て取り除いた水……純水の膜で私を包み込んだ。

 雷のメカニズムは、雲の中で生み出された雹や塵などががぶつかり合って発生したプラス電荷とマイナス電荷の偏りを中和させる為に発生する放電現象だ。

 私に向かってきた雷は外側の水の膜を伝って電流を地面に逃し、内側の純水の膜で雷によって発生した熱と電流による二次被害を防いだ。

 おそらく、今の攻撃はジャスパーさんの必勝パターンだったのだろうな。


 ……なかなか興味深い魔術でしたけど、ダメじゃ無いですかジャスパーさん。魔術の制御が甘くなっていますよ。


 私は周りを覆い尽くす霧ならぬ雲の制御をジャスパーから奪い取り、雲の形を変えていった。

 雲の形が徐々に怪獣の様な姿に変わっていく。

 雲の全てがその怪獣に吸い寄せられて、ジャスパーは雲の中に隠れる事は出来なくなった。


「ジャスパーさんどうですか、霧の竜ならぬ、雲の竜、名付けてクラウドドラゴンのクドー君です」


 うん、このクドー君の造形は我ながら上手に出来ている。


「……や、やあ、クドー君、初めまして……」


 流石は魔術師団の副団長だけあって礼儀正しいな、私も見習わないと。


「じゃあ、ここからはクドー君と私による二人がかりの攻撃になります。クドー君は魔術で出来てるのでルール違反じゃないですよね?」

「……ルール違反ではないが、こちらとしては勘弁してもらいたいのだけど……」

「では、試合を再開しましょう」

「君は鬼かっ!!」


 ……鬼ではありません、神様です。


「クドー君、霜のブレスだ!」

「ガオーーーーー!!」


 私とクドー君の波状攻撃は避けるのが精一杯みたいで、ジャスパーさんの攻撃は徐々に緩慢になっていった。

 私は更にクドー君二号を追加して追撃しようとした所でジャスパーさんは降参した。


「降参!もう降参だよっ!!」

「……そうですか?ジャスパーさん。まだやれますって。続けましょうよ?」

「これ以上やったらボロボロになっちゃうよ!私はアリアちゃんみたいに若くはないんだから!」

「……私の場合、若いんじゃなくて幼いだと思いますが?」

「どっちでも一緒だよ!……まさか、サンダーボルトを防がれて、しかもクラウドゾーンを奪われるなんて思わなかったよ……」

「へえ、あの魔術って、そんなに格好良い名前だったんですね。まあ、私のクドー君も格好良い名前ですけど!」


 私の背後に控えていたクドー君とクドー君二号が一斉に唸り声を上げた。

 うんうん、クドー君達も喜んでいるよ。

 クドー君達と別れるのは寂しいが、試合が終わったので消えてもらう事にした。


 バイバイ、クドー君。また会えるよね、きっと……。


「……勝てないとは思っていたけど、もうちょっといい勝負になると思ったんだけどなー。全く歯が立たなかったよ……」

「……勝てないと思っていたのは意外でしたね。私ってそんなに強そうに見えますか?」


 ジャスパーさんはジトっとした目でこちらを見つめため息を吐いた。


「……前にアリアちゃんが見せてくれた魔術を見れば、私なんかじゃ歯が立たない事はわかっていたさ。しかも、魔術を放った後、アリアちゃんが言ったセリフを聞いて、私達がどれほど驚いたかわかってないでしょ」

「……私、そんなに変な事を言いましたっけ?」

「あんな凄い魔術を使っておいて、派手さが足らないから後何回か披露しましょうかって言ったんだよ。普通、あんなすごい魔術を何度も撃とうとは考えないよ……」

「あら、当時の私は大変失礼な話をしていたんですね。本当に若さって恐ろしいですね……」

「あの時から、まだ一年も経ってないんだけど……、それを若さで逃げようとしないで」

「じゃあやはり、当時の私は幼かったのでしょう。まあ、いずれにしても若気の至りという事で水に流しましょうよ」

「……もういいよ、それで。んじゃ、後は適当に訓練でもしておいて。時間が来たら黙って帰っても構わないから」

「……そんなに適当で、この魔術師の塔ってセキュリティとか大丈夫なんですか?」

「私の気持ちとしては、アリアちゃんの存在そのものを国家機密にしたいぐらいだよ」

「……それはちょっと嫌ですねー。まあ、私は誰にも喋りませんから問題ありませんが」

「そうして貰えると、こちらとしては大助かりだよ」

「じゃあ、続きをしましょうよジャスパーさん」

「……なんで?」

「適当に訓練しろって言ったのはジャスパーさん本人じゃないですか。だから、訓練がてらまた試合をしましょう。今度は二、三人追加しても良いですよ!」


 ジャスパーさんは私との練習試合を固辞して、代わりに訓練場にいた全ての魔術師を人身御供として私に差し出した。

 いやー、最初は乗り気じゃなかったけど、やっぱり体を動かすって気持ちがいいね!

次回はアリアの実力を目の当たりにしたトッド君のお話となります。

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