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アメイジング・グレイス  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第一話 オウルニィの少女

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1−3 ケネスの情報と諸々な疑問

ケネスさんからもたらされた噂話の続きが語られます。

『……クリス、今の話ダグザから聞いてる?』


 私は念話術を使ってクリスに尋ねてみた。


『ダグザからは何とも。ただ精霊は人間との接触は皆無ですから、噂話の類までは収集できていないのではないでしょうか』


 確かにその通りだ。それにダグザの管理地はキボリウム山脈周辺なのでニヴルヘイムの情報は集まってもミズガルズは担当外なのだ。そこまで求めるのは流石に可哀想だと思う。


「ニヴルヘイムとミズガルズの戦争は本当なのか?流石に俄かには信じ難いが……」

「さあ、あくまでも噂話ですから。ただカフカースの領主様は備えあれば何とやらって事で熱心に武器を集めてるみたいです」

「……カフカースは大事な取引先だが、流石に急に倍の数は無理だ。他所との兼ね合いもある。出せて三割り増しが限界だ」

「へい。領主様もそこはわかっているみたいで、集められなくても無理強いはするなと……」


 実際、まだ戦争が始まったわけでもなければ国境を脅かされてるわけでもないのだ。それなのに無理を通して武器を集めるとなると領地間の問題にもなるし、国も見過ごせない事態になるだろう。そうなってしまうと、困るのは強引に武器を集めようとしているカフカースの方になる。


「……私の方からウェズリーの領主様に報告しておくよ。カフカース侯爵様にも詫び状を出すから、また明日にでも受け取りに来てくれないか」

「わかりました。では、失礼しますね」


 ケネスさんは、そそくさと応接室から出ていった。父さんも頭が痛いとばかりに右手を額に当てながらソファにどかっと座った。


「……はあっ、アーリーアー。もう父さんは疲れたよー。父さんを甘やかせておくれー」


 そう言って頭から私に突っ込んできたが、私は両手で父さんの頭を押し留めた。


「……ハイハイ。そういうのは母さんにやってください」

「……クリスー。僕の娘が冷たいんだけど……」

「そうやって私に責任転嫁をするのはおやめください。あんまりやり過ぎると、将来ウザがられますよ」

「将来じゃなくて、もうウザいんですけど」


 父さんは相当ショックを受けたみたいで、その場にしゃがみ込んでいじけてしまった。……いい大人なのに。


「さあさあ、そんな所でいじけていないでお仕事をしてください。お手紙を書かなきゃいけないのでしょう?」


 父さんを執務室へ追い払い、私も本邸の私室に戻った。

 一応、部屋に防音結界を張ってクリスにもう一度尋ねてみた。


「父さんは戦争の情報を掴んでいなかった。ケネスさんより父さんの方がこういった情報を把握しているはずだから、少なくとも社交界では噂にすらなっていないはず……」


 父さんは結構な頻度で伯父さんの代わりにパーティに出かける。そこで貴族学校時代の友人や恩師などの王都で活躍している友人達と情報交換をしているのだ。

 父さんは武器商人なので、あまり下手な所に武器を下ろすととばっちりがこっちにも降りかかる。だからそういった情報には敏感なのだ。

 もちろん、今回のケネスの話がガセネタとも言い切れない。現にカフカース領主は大量に武器を買い漁っている。


「現在確定している情報はカフカースが武器を集めている事だけです。たとえジョン様が正確な情報を持っていたとしても、ケネスには聞かせないでしょう。戦争の情報なんて国家レベルの機密事項です」


 そうだ、そんな情報ならケネスどころか子供がいる所で口にすることはないだろう。子供が下手に大人の前でガセ情報を口にしたら、情報発信者が罰せられてもおかしくない。どうも前世の記憶があるせいで、自分がまだ子供だという自覚に欠けている。


「じゃあ、私がどうこうする話じゃないね……」

「ですが、情報は集めておいた方が良いかもしれません。いつどのような形で災いが降りかかるかわかりません。備えは万全にしておいた方が良いでしょう」

「じゃあ、ルーにも声をかけておいて。ミズガルズはルーの担当なんでしょ」

「かしこまりました。ついでにダグザにも再度情報を集めさせます」


 なんだかちょっときな臭いけど、私が出来ることはこれで全部だ。あとは父さんとクリスに頑張ってもらうしかない。


「やっぱり自分で何にも出来ないから、選択肢が少なすぎると思うのよ」


 最大の問題は、私が町の外に出られない事だ。おかげで情報集めも人任せだし、何よりも異界に来てから神霊術の練習も碌に出来ていない。

 ……私が持つ神霊力で術が失敗すると、シャレにならない規模の被害が出そうだし。


「姫様はまだ七歳ですしこのあたりは魔物も出ますから、ご両親の許可は降りないでしょうね」

「そうなのよ!伯父さんが毎日毎日魔物を狩っても、次から次に湧いて出てくるからいけないのよ」


 魔物は文字通り湧いて出てくる。

 この異界の魔物は封印された原初の精霊達の『創造』の権能で作られた生き物だ。

 魔物は他の生物と違って、本来の生物にある自己の生殖機能で肉体を創り、その肉体に魂の精霊を宿してはいない。肉体も魂も『創造』で作られている。しかも、この箱庭の生物を害する為だけに生み出されている存在なのだ。なので魔物は問答無用でこちらに襲いかかってくる。


「私が神霊術で身を守れるってわかったら、父さん町から出るのを認めてくれるかなぁ?」

「どうでしょう?この世界の魔術師のレベルがわかりません。子供の魔術師が魔物狩りに参加しているかも不明です。この異界では魔力持ちが多いそうですから魔術師が職業として存在している事は確かなようです。ダグザからもそう聞いています。ですが、オウルニィの町には魔術師はいません。造られている武器を見てみても魔術師が持つ事を前提とした武器はないようです」


 そうなんだよね、クーパー男爵邸にある本を見ても魔術師の事は書かれている物もあるけど、騎士団と魔術師団の連携の仕方とかは書いていなかった。


「一度ご両親に聞いてみたらいかがですか?ジョン様もウィリアム様も貴族学校を卒業されているので、そのあたりの事情に詳しいのではないですか」


 ……なるほど!早速、夕食の時にでも聞いてみようっと!

次回、この世界の魔術師の事が色々とわかってきます。

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