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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第二話 学生生活

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2−8 魔力制御の授業

 魔術基礎の初日の授業は実に退屈な時間を過ごす事になったが、今日は実技という事で再びやる気が上がってきた。

 ショット先生が教室に入ってきた。さて、本日はどんな授業内容なのだろうか?




 ……うん、知ってた。そうだよね、初めは魔力の制御から始めるよね。


 私は全員に配られた魔術具を死んだ魚の様な目で見つめた。

 この魔術具には台の上に三つランプの様なガラス製の球体が付いていて、そのランプ部分を指で触りながら魔力を流すと灯りを灯す事ができる。ただ、魔力量が大きくても小さくてもランプは灯らず、ちょうどいい量の魔力を流さないと成功しないみたいだ。

 私はものの数秒で全てのランプに灯りを灯しショット先生に別の魔術具は無いかと尋ねてみた。


「……本来なら、新入生がこの魔術具の灯りを灯す様になるまでには一週間程はかかるものなのだが」


 そんな不思議な生物を見る様な目で見られても、出来ちゃったものはしょうがないじゃん。

 周りを見渡すと、自己紹介の時に魔術が使えると豪語していたトッド君も、まだ一つも灯りがついていないね。

 トッド君すらこんな調子なのだから、他の新入生の魔術具にはまだ一つも灯りが点灯していない。唸ったり、力んだり、息を止めてみたり、瞑想してみたりと色々な方法で魔力を制御しようとしているが私が見た所、魔力が動いている人はごく僅かだ。

 マーベルは全く動いていないし、シーラは魔力が動いているが動かしている魔力が多かったり少なかったりときちんと制御できていないみたいだ。

 そんな周囲の様子を観察しながら、私は合計で五つの魔術具を点灯させて午前の授業が終了した。




 お昼休みとなり、私とマーベルとシーラは食堂に行き一緒に昼食を食べていた。

 本日のメニューはサンドウィッチとオムレツとコールスローと牛乳だ。


「ねえアリア、何かコツがあったら教えてくれない?このままだと、何日あっても終わらない気がするの」

「そうだよなー、このままじゃ埒があかない感じだよな」


 ふむ、コツか……。

 私がタカアマハラで練習した時はどうだったっけ?お姉様がやたらとスパルタ教育をやらされていた記憶にないんだけど。

 私は『叡智の書』を起動し、私のタカアマハラで行った神霊力の制御の練習方法を検索してみた。


「そうね、まずは自分の体の中で魔力が動く感覚を掴む練習から始めてみたら良いと思うわよ」

「自分の体の中で魔力を動かすの?」

「そう、まずは魔力を動かすという事に慣れておいて、その後で体外に魔力を出す練習をした方が効率が良いと思うわ」

「うーん、魔力なんて意識して動かした事がないからなー」

「マーベルは授業中、全く魔力は動いてなかったわね。シーラは動いてみたいだから感覚としてわかるんじゃない?」

「そうなの?……そういえば、なんとなくだけど体の中の熱みたいのが動いたり止まったりしていたような」

「人によって魔力が動く感覚は違うみたいだから、私がそうだとは断定できないけれど、おそらくシーラが感じたのは自分の魔力が動いているためだと思う」

「ううう、シーラ。クラスメイトでありルームメイトの私を置いて行かないでくれ……」

「……ちょっとマーベル、大げさよ」

「まあまあ、マーベルにも魔力を動かす感覚を知ってもらう方法はあるから」

「本当か!」

「……まあ、ちょっと荒療治だけどね。ここだと邪魔になるかもしれないからオープンテラスの方に移動しましょう」


 私達は食器を片付け(私の分はクリスがやってくれた)、オープンテラスに移動した。

 春にはなったがまだまだ屋外は肌寒い。そのおかげでオープンテラスには人はおらず、ここならば多少騒いだところで問題はないだろう。


「アリア、どんな事をするんだ?」

「マーベル、私の手を握って、両方ともね」


 私とマーベルは向かい合って席に座り、私の小さな手を包み込むように握りしめた。


「私が今からマーベルの体に魔力を流し込むから、それで魔力が動く感覚を感じて」

「アリアの魔力を?」

「そう、だけどこの方法は結構キツイからほんのちょっとだけね」


 本来ならこの方法は神霊力を持つ私よりも同じ魔力を持つ者がやった方が体の負担は軽くなるのだが、今回は魔力を流す事を頼める人が存在しない。

 強すぎる魔力は人体にとって有害なものだ。しかも、今回マーベルの体に流すのは魔力ではなく神霊力なので体の負担は相当大きな物になるかもしれない。なので治療術を施しつつマーベルの体に私の神霊力を流す事にしてみた。しかも流す量はごく僅かで、マーベルに施す治療術の方がよっぽど神霊力の量が多いだろう。


「じゃあいくね」


 治療術をまずかけて、私は手のひらからちょっぴり神霊力をマーベルに流してみた。

 するとマーベルの体は電気ショックに打たれたようにビクンと大きく跳ね上がり、大きく目を見開き両手で口を覆いながら植え込みの隙間に潜り込んで胃の中にあった内容物を全て吐き出した。


「……マーベル、大丈夫?」


 私はマーベルの背中を摩りながら再び治療術をかけていった。


「……ああ、まだクラクラするけどひとまずは……、ううっ」


 そして再びえずき始めた。既に胃の中の物はすでに全部吐き出してしまっていたので、マーベルの口からは唾液や胃酸が出るくらいだった。

 ようやく落ち着いたのか、マーベルは立ち上がりフラフラとしながらも椅子に近づいて身を投げ出す様にどかっと座った。……私はその間にマーベルが吐き出したものを洗浄しておいた。


「アリアー、あんなにキツイなら最初にちゃんと言っておいてくれよ……」

「え?ちゃんとキツイって言っておいたけど?」

「……そうだったか?覚えたないや。ああ、マジで死ぬかと思った……」

「もうすぐ午後の授業が始まるけど、マーベルは保健室でお休みする?」

「……いや、授業に行く……。こんな目にあったのに何も身に付かなかったなんてしたくないからな」

「本当にマーベルは男前だねー」

「……うるせっ!」


 午後の授業でマーベルは魔術具を点灯させる事はできなかったが、魔力を動かす事には成功していた。……私はショット先生に断って別の勉強をしていた。

 結局、本日の授業で魔術具を点灯させた人は、私とトッド君の二人だけだった。

因みに、アリアがマーベルに魔力の流れを教える方法ですが、アリアはお母様であるナクロールやお姉様であるフリンに実際にやってもらった事があります。本来はアリアの様に母親などの家族が幼い子供に行うやり方ですが、本人と近い魔力(神霊力)を持っているので少し変な感じがする程度なのですが、アリアとマーベルの魔力は違いすぎているのであの様な結果となりました。

マーベルは死ぬかと思ったと言っていますが、実際アリアの治療術がなければ死んでいたかもしれません。

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