2−6 一般教養と礼儀作法の授業
結論から言えば、私とシーラは試験に無事合格した。
マーベルは文字の読み書きはクリアしたものの、文章力の試験と四則計算の試験で不合格となった。
全ての試験に合格したのは、全体の三分の一程度しか合格できていなかったので、やはりと言うか平民の教育水準が低い事が判明した。
まあ日本でも義務教育制度が始まったのは明治時代からだし、近代的な学校制度が確立したのは十九世紀になってからだ。一概には比較は出来ないが、文化レベルで言うとこの時代のケルト王国は中世後期から近世前期の辺り、ヨーロッパが大航海時代の真っ只中辺りの文化レベルと考えて良いだろう。だとするならば、教育水準のバラつきは致し方がない。
試験に合格しいくつかの一般教養の授業を免除になったとしても、礼儀作法や歴史や地理などの授業は受けなければならない。この辺りは、平民にとっては無縁な教育なので私以外はほぼ横ばいなレベルなのだ。
そして、この辺りから授業について行けなくなっていた二人は私の部屋で頻繁に復習をするようになっていった。
私とほぼ毎日、復習と称した勉強会をした事によってシーラの成績がかなり上昇した。具体的な数字で言うと、新入生の中では三番目の成績になったのだ。……因みに一位は私で、二位はトッド君だ。
シーラの成績が上昇した理由を他の女子生徒達が聞きつけ、新入生の女子生徒全員が私の勉強会を受けたいと申し込んできた。
女子生徒全員と言っても全員で七人しかいない。今年入学した新入生の人数は二十三人なので約三割しか女子生徒はいないのだ。
だが、私の部屋で七人もの生徒が集まったらかなり手狭になってしまう。そこで、勉強会は寮にある自習室を使う事になった。
七人の成人年齢を超えている生徒達に教える教師役の私の年齢は僅か七歳。……何、このシュールな光景。普通、逆じゃないの?
しかも勉強会の度にお茶を何倍もおかわりして、お菓子もバクバクと食べるから私の出費額もバカにならないのだけど……。
だが、ここで文句を言ってしまえば「アリアって、貴族のくせにケチくさい」なんて言われてしまう。……ここは我慢するしかない、とほほ……。
一般教養の授業と並行して行われる授業はマナーや礼儀作法の授業だ。
将来的に王宮勤めになる魔術師にとって礼儀作法の授業はとても重要な意味を持つ。
そして、当然の結果というか、この授業を最も苦手としていたのはマーベルだった。
授業の為に着る事になったドレスをこんなに嫌がる女子は今までいたのだろうか?
ダンスやカーテシーはまだ体に覚え込ませる事で何とかクリアはするものの、言葉使いやマナーなどに関しては普段の言動が色濃く出てしまう。
「くっそー、何だよこのヒラヒラした袖は、邪魔で仕方がねえよ!」
「……マーベル、もっと上品な言葉を使いなさいね」
「うううっ、最近やっとスカートに慣れたと思ったけど、やっぱり私にはこんなの似合わねえよ!」
「似合うも似合わないも無いわ。これは淑女にとっての戦闘服よ。何の装備も無い状態で社交界に出れば即死は免れないわ」
「……アリア、礼儀作法の授業は、そんなに物騒ではないわ」
「シーラ、社交界では血は流れないけど、嫌味や妬みで心がダメージを負うの。それを躱したり避けたり耐えたりする為に礼儀やマナー、そしてドレスやアクセサリー、時にはパートナーの協力も必要なの」
「……私には、そんな事を言う七歳児の方が余程怖いのだけど」
……うん、そうかもしれない。
取り敢えず、マーベルにはクリスが手取り足取り教えた結果、何とか最低限の礼儀作法を覚えるのに成功したのだった。……クリス、ご苦労様でした。
次回は魔術の授業が始まります……。しかし、魔術を使うまでには至りません。……ごめんなさい。




