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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第二話 学生生活

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2−4 登校初日の風景 4

前回のお話の続きとなります。

 昼食を食べ終えた後、私達は勉強会を開催するために寮に帰ってきた。


「勉強場所は一階の自習室でいい?」

「あの……、お願いがあるんだけど」

「……何?」

「出来たら、アリアのお部屋を見せてくれない?私達の二人部屋と貴族専用の個室がどのくらい違うのか見てみたくて……」

「確かに!それは興味あるかもな」

「その位別に構わないわよ。私の部屋は五階の一番奥の部屋だから、準備が出来たら来てね」


 マーベル達とは階段で別れ、私はクリスを伴って自室に戻って来た。


「クリス、お茶の準備をしておいてちょうだい。それと、お菓子も忘れないで」


 考えてみれば、お友達を誘ってお茶会をするなんて初めてではないだろうか。

 名目は勉強会だったとしても、休憩時間にはお茶とお菓子を用意するし、実質お茶会と呼んでも過言ではないだろう。

 そうだ、前世から考えてもこの勉強会及びお茶会は、私が初めてお友達を招待した記念すべき出来事に違いない。

 そんな事を想像しながらウキウキしていた所、入り口のドアからノックの音が聞こえてきた。

 クリスがドアを開き、マーベルとシーラを部屋に招き入れた。


「うおっ、やっぱ、貴族の部屋は広いなー」

「マーベル、まずは挨拶しないと、アリア、勉強会に招待してくれてありがとうございます」

「さっき別れたばっかなのに、また挨拶するのかよ。礼儀作法ってめんどくせーな。まあ、ありがとうございます」

「どう致しまして。そんなに堅苦しく考えなくてもいいわよ。私もお友達を誘うのは初めてだったからワクワクしていたの」

「そうなの?お貴族様って友達とあんまり遊んだりしないものなのかしら?」

「私が住んでいたオウルニィでは同年代の子供は少なかったし、みんな平民の子供だったから余り私に近づいて来なかったの。他の貴族なんかは親同士の繋がりとかで交流を深めるみたいなんだけど、前に話した通り私の母さんはそういった交流をしてこなかったから……」

「……そうだったの、ごめんなさい、不躾な質問をしてしまって」

「ううん、いいの。同じ家に従兄弟がいたから寂しくなかったし、最近は色々とあって忙しかったから」

「ハハっ、そりゃ精霊様の弟子になったんじゃ忙しかっただろうな。そんな事よりさっさと勉強しようぜ、そんでもって授業の免除を勝ち取ろうぜ!」

「そうね、じゃあやりましょうか。そのテーブルを使いましょう。私が簡単な問題を出すから計算機を使って問題を解いてくれるかな、その後でアドバイスをするから」

「わかった、じゃあとっととやりますか」


 私が問題を出し、マーベル達が計算機で問題を解く。

 それを繰り返して二人が抱える問題点をブラッシュアップしていった。

 シーラは計算機の使い方がまだおぼつかないもののそれ程問題はなかったが、マーベルは計算機の使い方もそうだが、最大の問題点は数字を見間違える事が多い事だ。


「マーベルって、数字はどの程度読める?」

「……桁が大きくなると、結構ヤバイ」


 この国の数字はアラビア数字の様に桁が変わっても数字だけで表すのではなく、全て単語で表記されている。その為桁の数が大きくなると単語の数が多くなりとても読みにくくなってしまう。例えばアラビア数字の表記で123,456,789だったとしたら、日本語表記では一億二千三百四十五万六千七百八十九となる。古い数字の漢字である大字となると壱億弍阡参佰肆拾伍萬陸阡漆佰捌拾玖となり更に読みにくくなる。

 これを考えると、単純に数字を表記できるアラビア数字が如何に偉大だったかがよくわかるね。

 これだと買い物の時の値札の書き方がややこしいと思われるだろうが、通常、値札に書かれている金額は硬貨の枚数が表示されている。五枚か十枚で硬貨が変わるので千八百カードだと大銅貨一枚と中銅貨一枚と小銅貨三枚と表示される。


「……このままだと、明日の試験に合格出来ないのか?」

「こればっかりは記憶力の問題だから、頑張って暗記するしかないわ。きちんと授業を受けなさい。まあ、私とアリアは明日の試験に合格すると思うから授業が免除になると思うけどねっ!」

「うううっ、くっそー」

「……まあまあ、ずっと勉強をして疲れたでしょ。そろそろ休憩しましょう」


 クリスがお茶とお菓子を用意してくれて、一息つくことになった。

 ずっと集中して勉強していたせいなのか、マーベル達はお菓子を黙々と食べ続けている。


「いやー、お菓子なんて久しぶりだよ。甘いものってやっぱ美味いよなー」

「そうね、この季節だと焼き栗も良いわよね」


 そんな会話をしながら暫くゆっくりとお茶を飲んでいたが、突然シーラが沈んだ表情をして話し始めた。


「私達が魔術師になったら、戦場に連れて行かれるのかしら……」

「……ショット先生が言っていた事か、急に言われても実感が湧かないよな」


 二人の出身地であるメイヨー伯爵領は王都から東にあるそれ程大きくない領地だ。

 海にも山にも接していないから魔物の発生も少なく、国境線からも遠い土地だったのでケルト王国の中でもかなり平穏な地域で、小麦の生産量はケルト王国の中でもトップクラスに入る農業地域だ。

 マーベルは実家の鍛冶屋を手伝っている時に、シーラは染色工房で見習いとして働いていた時に魔力が発現し魔術師学校に入学する事になったので、今まで戦いとは無縁な人生を過ごして来たのだろう。


「私が暮らしていたウェズリー領にあるキボリウム山脈は魔物の発生の多発地帯だったから、伯父さんが騎士団を率いて魔物狩りに行く事が度々あるの。だからシーラ達みたいにそこまで深刻に感じなかったかしら」

「そうなのね、メイヨー領には自警団や衛兵は居たけど騎士団はなかったから……」

「あそこは田舎だしな。長閑と言えば聞こえは良いけど、何にも無い所だったから」

「だからメイヨー領はケルト王国の穀物庫の一つとして維持してこれたのよ。それは、この国にとってはとても重要な事だわ」

「そんなもんかねぇ……」

「話を戻すけど、私達が戦場に行ったとして、本当に役に立てるの?足手纏いにしかならない気がするの……」

「だから、それを勉強するんだろ。初めから何でも出来る奴なんていやしねえよ」

「そんなに焦る事はないんじゃない。私達がもし戦場に立つ事があったとしても、最短でも二年以上先の話よ。もしそれまでに私達が戦場に立つ事があったら、多分ケルト王国が滅亡する時だろうしね」

「……そんな事があったら洒落にならねえな」

「そうね、今は勉強するしかないもんね」

「そうそう、取り敢えずは明日の試験を頑張りましょう!」

「……せっかく忘れてたのに、嫌な事を思い出させるなよな、全く!」


 不貞腐れるマーベルを見て、シーラと私は笑い合った。

 そして、私達は再び勉強を再開した。

次回はアリアの同級生の男子であるトッドくん視点のお話となります。

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