1−9 ロムルスとの出会い (アルウィン視点)
アルウィンはロムレスと出会いますが、ロムレスはあの事件の直後なので疲労困憊で部屋に着いた早々倒れる様に寝てしまいました。
ユピテルの公爵令息は本当に入学式直前にやって来た。
どうやら、ここまで来る途中で大変な目に遭ったみたいで、部屋に来た時はぐったりとしていて、挨拶もままならなかった。
公子の従者である人にそれとなく尋ねてみたが、「話して良いのかわからないので、詳しくは殿下にお尋ねください」と申し訳なさそうに答えた。
……ちょっと待って、今、この従者の人、公子の事を殿下って呼んだよね。それって彼がユピテルの皇族だって事なんじゃないの?何でそんな高貴な人が二人部屋なんかを希望するんだよ!
夜が明けて、入学式当日になった。
僕よりも先に公爵令息は起きていて、きちんと着替えて暇つぶしなのか本を読んでいた。
「ああ、おはよう。昨日は挨拶もせずにさっさと寝てしまって、悪かったね……」
「いえ、そんな事は……」
「そういえば挨拶がまだだったよね。初めまして、私はユピテル帝国のヘーシオドス公爵の息子ロムルスです。これからよろしくね!」
「はい、よろしくお願いいたします、ロムルス殿下」
「……殿下とは呼ばないで欲しいな。まあ、ユピテルの事を調べれば私の事はすぐにわかっちゃうかもしれないけど、ここでは、そんなしがらみなんて忘れてしまいたいんだ」
「かしこまりました、ロムルス様。昨夜、ロムルス様の従者の方がそうお呼びされていましたので軽率にそうお呼びした次第です。申し訳ありませんでした!」
「あちゃー、こっちの失態だったね。マルコス、君も私の事は殿下とは呼ばないようにしてね。それよりも、君の名前を教えてもらえないかい」
「大変失礼いたしました。私はクーパー子爵の息子アルウィンと申します。以後、お見知りおきください」
「アルウィンか、格好いい名前だね。ではアルウィン、早速だが朝食を食べにに行かないかい。実はもうお腹がぺこぺこなんだよ……」
「昨日は夕食も食べずにそのままお休みになられましたから当然お腹も空くでしょう。しかし、公爵令息ともあろう方が食堂で朝食をとられるのですか?」
「ここでの私の身分はただの学生に過ぎないからね。君と同じさ。だからこれ以降、私に敬称を使ったり敬語で話したりする事は禁止だ」
「……ですが」
「君は私のルームメイトだ。ずっと一緒に暮らす事になるのにお互い遠慮しあっても辛いだけじゃないか……」
「それはそうかもしれませんが……」
「さあ食堂に行こうアルウィン。早く行かないと良い席がなくなってしまうぞ」
「わかりました……、いや、わかったよロムルス」
僕とロムルスは一緒に朝食を食べ、一緒に入学式に参加した。
入学式は恙無く進行し、何の問題もなく終了した。
入学式が終わった後、父上達にロムルスを紹介したら無茶苦茶びっくりしていたのが印象的だった。
そして日が落ち、僕達はお互いの自己紹介がてら色々と語り合った。
「そういえば、ロムルスはこっちに来るのがギリギリだったけど大丈夫だったの?」
「私の留学は極秘に進められていたんだ。今でも公にはユピテルの学校に通っているという事になっている。だからギリギリまで出国を遅らせた」
「……まあ、事情は聞かないし聞きたくないけど」
「それが懸命だよ。私も友人に我が国の事情を置いそれとは語れないからね」
「そんな切羽詰まった状況で旅立ったからこっちに到着した時、あんなにぐったりしていたのか」
「それはまた別だよ。ティル・ナ・ノーグに着く直前に魔物が襲って来たんだ」
「魔物?……そういえば今朝も少し話題になっていたね」
食堂で聞いた噂話によると、リフィ河に大量の河蜥蜴の集団が上陸したらしい。上陸した魔物は騎士団が討ち取ったそうだが、ユピテルの船も襲われていたと噂で語られていた。
「まさかロムルスが噂話の出所だったなんて夢にも思わなかったよ」
「……不本意ながらね」
「でも大丈夫だったの?うちも土地柄、魔物によく襲われるけど船の上だとまた勝手が違うんじゃない?」
「まあ私達だけだったら間違いなく全滅していただろうね。船の上も河の中も魔物だらけだったしね」
「それは正に絶望的な状況だね。でもどうやって助かったの?騎士団が間に合ったとか?」
「いや、何処からか現れた謎の女性の魔術師に助けられたんだ」
女性の魔術師……、何だか嫌な予感がする……。
頼むから、気のせいであってほしい!
「えっと、その女性の魔術師ってどんな人だったの?身長とか、顔とか……」
「そうだね、身長は成人女性よりも少し高めだと思う。顔は仮面をつけていたからよくはわからないけれど目と口元から察するとかなり美人なんじゃないかな。それとメイド服を着ていたね。あと、名前がエトワールと名乗っていたのだけど、多分偽名だと思うんだ」
「メイド服?随分と変わった魔術師だね……」
良かったー!とりあえずアリアじゃなくてホッとしたよ。
……けど、何処かでアリアが絡んでそうで気が抜けないんだよな。
「アルウィンはこの魔術師の事を知らないかい?もし知っていたら是非お礼がしたいと思うのだけど」
「僕は魔術師の事はよく知らないけど、今度アリアに会った時に聞いてみるよ」
「……アルウィンには魔術師の知り合いがいるのかい?」
しまったー!うっかり口を滑らせてしまった!
けど、いずれバレると思うから、この際全部話してしまおう。
「僕の従姉妹が魔力持ちでは今年、魔術師学校に入学するんだ」
「へえ、年上の従姉妹なんだね」
「いや、僕よりも三つ年下だから、今は七歳。春になったら八歳になるけど」
「……は?七歳だって!アルウィン、冗談も程々にしないと……」
「……それが冗談じゃないんだよ。ロムルスは聞いた事はないかな、最近、精霊の弟子が現れたって噂」
「そういえば、そんな事を耳にしたような……。まさか……」
「その精霊の弟子が僕の従姉妹なんだ」
ロムルスは絶句している。だよねー、僕も同じ立場ならそうなるもの。
「その、精霊の弟子という従姉妹さんはいつ魔力を発現したんだい?」
「さあ、自分でも覚えてないくらいだから、赤ちゃんの時なんじゃないかなって本人は言っているね」
またロムルスは絶句している。……わかる、アリアの事を聞くと誰もがそうなるのをずっと間近で見て来たから。
「その、従姉妹さんの魔術師としての腕前はいかほどなのだろうか?」
「うーん、僕はアリアの魔術を数回しか見た事はないんだけど、朱色熊は一撃で倒していたし、魔術師団の副団長はアリアの魔術を見てかなり驚いていたから結構凄いのだと思うけど」
「……朱色熊を一撃……」
ロムレスは朱色熊を知っているんだ?ユピテルにも生息しているのかな?
だったら、その朱色熊を一撃で倒すなんて普通は驚くだろうな。
……他の人がアリアの話を聞いてびっくりする光景は、流石に見慣れてきたけど……。
「君の従姉妹さん……アリアさんと言うのだったか、アリアさんの魔術の実力をそんなに言ってしまって大丈夫なのかい?私が言うのも変だが、こういった事は国家機密になるんじゃないか?」
「そうかもしれないかも……、でも、アリアはその位バレても平気だと思うけど。アリアの実力は魔術の事をよく知らない僕から見ても明らかに実力を隠しているから」
「実力を隠している?アルウィンが言った朱色熊を倒したと言うのも私には過大評価だと思っていたのだけど……」
「だって、アリアは自力で空を飛ぶし、物凄く遠くにいる人と魔術で会話したりするし、夏の旅行の時は馬車の周りだけ気温を下げて涼しくしたりするし、僕から見てもやっている事は無茶苦茶だからね」
ロムルスはあんぐりと口を開けたまま無言になってしまい、今日の会話は終了する事になった。
うーん、ちょっとアリアの事について喋り過ぎたかな。
でも、アリアの凄さってアレくらいじゃ済まないからなー。
僕の直感だと、アリアは精霊様よりも強いんじゃないかなと思うんだよね。
そんな事を考えながら、僕はベッドの中に入った。
アリアの事を喋りすぎてしまったアルウィン。
ロムレスはアリアに対してどの様な印象を持つ事になったのでしょうか?
これにて第一話は終了し、次回から第二話となります。




