1−8 貴族学校の入寮 (アルウィン視点)
アリアとは違い両親と共に貴族学校の寮に入るアルウィン。
何やらとんでもない事に巻き込まれたみたいです。
アリアや両親達と共に転移魔術によって王都にやって来たのだが、僕とアリアは寮に入れる日が違っていたので僕だけ先に辺境伯邸を後にした。
「アリアはしばらく辺境伯様のお屋敷に滞在するのでしょうか?」
「そうだな。とは言ってもアリアの入寮式は五日後だったかな、その位だったと思う」
「貴族学校には魔術師学校の様な入寮式はないのでしょうか?」
「ああ、貴族学校には入寮式なんてないぞ。魔術師学校の入寮式というのは実質、入学式の様なものだ。魔術師学校には保護者はおろか王宮に務める上級貴族ですら敷地に入る事は出来ないからな。入寮式のみ後見人を務める貴族の入場が許されるそうだ。とは言っても入れるのは寮の一室だけだそうだ」
「我が家の爵位は子爵ですから、アルウィンには二人部屋が与えられるでしょう。私が貴族学校に入学した時は騎士爵の娘として入学しましたから部屋は四人部屋でした」
「そうか、メアリーは四人部屋だったか、俺はアルウィンと同じ二人部屋だった」
「個室が与えられるのは伯爵以上になります。アルウィン、貴族学校は上級貴族が幅を利かせる場所です。くれぐれも用心しなさい」
「まあ、貴族学校は社交の訓練場の側面もある、失敗するなとは言わんが気を引き締めてかかりなさい」
「あなた、アルウィンを脅しすぎですよ……。アルウィン、貴族学校では様々な出会いの場でもあります。沢山のお友達と一緒に楽しく過ごしてきなさいね。けど、羽目を外しすぎない様にね……」
「わかりました、母上。そして父上、クーパー家の嫡男としてしっかり務めて参ります」
両親は僕を寮の部屋まで送り届けた後、そのまま馬車に乗って帰って行った。次に両親と会うのは貴族学校の入学式になる。
寮の玄関で僕の従者であるバスクが出迎えてくれていた。
バスクは僕よりも先に寮に入っていて、部屋を整えてくれていたのだ。
「バスク、出迎えありがとう。では、僕の部屋に案内してくれないか」
「……アルウィン様、緊急事態です。同じ部屋で同居するはずだった予定の生徒が変更になりました」
「えっ、確か予定ではゴート子爵家のキャボット様だったよね」
「はい、昨日まではその予定だったのですが、急遽、ユピテル帝国の公爵のご令息様に変更となりました」
「はあっ!公爵の、しかもユピテル帝国の留学生と同室なんていくら何でもおかしいだろ!」
「はい、お相手は公爵でしかもユピテル皇帝の甥にあたる方だそうですから王族待遇と同じでないとおかしいのですが、何やら先方の理由で多人数部屋にしてほしいそうでして」
「……先方の都合という事は百歩譲って理解したけど、何故僕の部屋なんだ?僕よりももっと相応しい人がいると思うのだけど」
「申し訳ありませんが、全くわかりません。これはあくまでも推測ですが、アルウィン様がユピテルの公子と同じ十歳なのと、旦那様の陞爵が理由かもしれません」
貴族学校の寮では複数人部屋の場合、原則的に同い年の人と同室になる。だから、ユピテルの公子と僕が同じ十歳だからという理由は納得出来る。
「旦那様の陞爵によってクーパー家の派閥が国王派であるという事が明確となりました。国王陛下は今のユピテル皇帝よりも先代の皇帝、そして今の皇帝の弟である公爵様とより近かったはずです」
「つまり僕は、ユピテルの公子と同じ十歳で、国王派だったから選ばれてしまったという訳か……」
「……あくまでも推測に過ぎません。真実はアルウィン様がユピテルの公子と心の内を語れる位信頼されたら、公子から直接話を聞けるかもしれません」
頭がクラクラしてきた……。
国際的な派閥争いに巻き込まれただけでなく、バスクの話を裏読みするとユピテルの公子からその辺りの内情を調べてこいと言われているに等しかった。
「……十歳の子供にあまり無茶な要求はしないで欲しいのだけど。それで、ユピテルの公子はもう部屋に入っているの?」
「いえ、近日中に王都に到着するそうです」
「……そうか、それじゃあ今日のところはゆっくりと過ごせるみたいだね。少なくても心の準備ができる時間があってホッとしたよ」
「……そうですね、その通りだと思いますよ」
アリアの精霊の弟子の騒動からようやく解放されたと思ったのに、今度はもっとややこしい事情に巻き込まれてしまったと思うと愕然としてしまった。
……僕って、これからも厄介事に巻き込まれる人生を送る羽目になるのだろうか?
アルウィンのトラブルに巻き込まれる人生はまだ始まったばかり……。
次回もアルウィン視点でのお話が続きます。




