1−7 魔術師学校の女子寮
入寮式が終わり、アリア達は魔術師学校の寮に移動します。
私とクリスは寮監である妙齢な女性と共に、これからの生活の場となる女子寮にやって来た。
建物の高さは五階建てで、日本にある学生寮とそう大きさは変わらない感じだ。……まあ、日本みたいな鉄筋コンクリート製の建物ではなくて、煉瓦造りの建物なのだが。
「アリア様、あなた方は今日からこの寮で生活していただきます。ご実家に比べたら粗末な部屋とは存じますが、何卒ご容赦くださいませ」
「ルーザ先生、私は魔術師学校の生徒になるのですから敬称は不要です。これからは、アリアとお呼びください」
「では、私の事もルーザさんとか、ルーザおばさんで結構ですよ、アリアさん」
「わかりました、ルーザおばさま」
「まあ、おばさまなんて呼ばれたのは生まれて初めてですよ。やはり、育ちが良いと違いますね」
ルーザおばさまはふふふっと微笑みながら寮の中に入って行った。
寮の中は煉瓦造りの無骨な外観とは違って、貴族の屋敷のような豪勢な作りになっていた。
玄関を入ってまず目に入るのは、大きなホールと目の前にある大きな階段だ。
ふかふかな絨毯が敷かれていて階段の手すりにも細かな彫刻が施されている。
「豪華な内装ですね。本当にここは学生寮なんですか?」
「皆さん、玄関を入った時に驚かれますね。とは言っても、豪華な内装なのは一階と貴族令嬢が入ることになる最上階だけですね。ここは王宮や魔術師の塔のお役人が来られる事がありますので特別なんですよ」
なるほど、言われてみたら納得する話だ。
ここの学生は言わば魔術師の見習いにあたる。つまりは未熟ながらも国王陛下の直属の兵士なのだ。高等科の優秀な生徒だったら魔術師の塔の手伝いなんかに駆り出される事もあるのかもしれない。
「一階には食堂と多目的ホール、娯楽室や自習室、それと会議室と応接室があります。学生の皆さんは普段はこの一階にいる事が多いですから、アリアさんもここでお友達と過ごしてみるのも良いかもしれませんね」
「そうですね、そうさせてもらいます」
果たして、私にお友達は出来るのだろうか?
一応、この前のお披露目でマーベルやシーラとは知り合いにはなれたが、ここのいる生徒達はもれなく全員五歳以上年上なんだよね。……学生時代の先輩後輩関係はずっと尾を引くって言うからなあ。
「アリアさんが入る部屋は最上階である五階です。小さいアリアさんには階段の上り下りは辛いかもしれませんが我慢してくださいね」
「大丈夫です。私はこの間まで平民と変わらない暮らしをしていましたから、こう見えて足腰は丈夫なんですよ」
はい、ここ、普通に嘘ついてます。
本当は身体強化を使って脚力を強化していますから。
いくら田舎暮らしだからって、五階まで階段で上がるのは普通にキツイですから!
だけど、私は一応貴族令嬢、キツイ苦しいは顔には出せないのです。
ようやく五階に辿り着いた時、ルーザおばさまはふぅと大きく息継ぎをして呼吸を整えていた。
「……ようやく辿り着きました、この五階はお貴族様専用の区画となっておりまして、今入居している方はアリアさんだけになります。少し寂しいですが大丈夫ですか?」
「大丈夫です。流石にこの歳になって夜泣きなんてしませんよ」
「ふふっ、そうですわね。アリアさんの部屋は右側の一番奥の部屋になります」
私達は廊下を進み、一番奥の部屋の前まで来た。
「こちらがこの部屋の鍵となります。予備の鍵は私が持っておりますので鍵を無くした時は私の所まで来て下さいね」
ルーザおばさまは部屋の鍵をクリスに渡し、クリスは鍵を使って扉を開いた。
「わぁ、なかなか落ち着いた雰囲気の部屋ですね」
家具や小物などは父さんや辺境伯が揃えたものだが、壁紙や天井の照明などは備え付けのものである。
「そうですね、元々魔術師学校の生徒の皆さんは成人近い年齢の人達ばかりでしたから内装も少し大人びた内装になってしまうんです。アリアさんみたいな小さい生徒さんが入学されたのは初めてですから、ご不満があるかもしれませんがご容赦下さい」
「いえ、私はこの壁紙の雰囲気は嫌いではありません」
「そう言ってもらえると助かります。それでは私はここで失礼させて頂きます。より良い学生生活を陰ながら応援しますね、アリアさん」
「はい、ルーザおばさま、これからよろしくお願いします」
そう言ってルーザおばさまは部屋から出て行った。
「この部屋は、姫様には相応しくありません。作り替えましょうか?」
「やめなさいクリス、確かに今までの部屋とは雰囲気がまるで違うけど、私はこういった大人な雰囲気の部屋に憧れていたのよ!」
私の部屋の内装は、前世、タカアマハラ、現世を通じて可愛いで統一されている。
前世では病弱だったために、自分の部屋の内装を変えるような事は出来なかったし、誕生日や何かしらの理由をつけてプレゼントされたぬいぐるみに部屋の一角は埋め尽くされていた。
タカアマハラ時代は私の扱いが赤ん坊なのだ。私はこの扱いを断固抗議したいのだが、お父様やお母様はおろかお姉様までもが、私の事を赤ちゃん扱いなので部屋の内装を変える事なんて当分ないだろう。
現世でも私の扱いはほぼ変わらない。特に父さんは私を溺愛しているし、一族全員、私の事を着せ替え人形かの様に扱っているのだ。
まあ現世では、私も人並みに成長するだろうし、いずれ立派なレディになる事は間違いないはずだ。これからの私の成長にご期待ください!
「そんな事はどうでも良いから、クリスは部屋を見て不都合がないか確認して来てちょうだい。これから何年もここで生活することになるんだからね……」
「……畏まりました」
私の魔術師学校での生活が幕を開けた。
これからどんな学校生活が始まるのだろうか?ワクワクが止まらないよ!
次回は視点を変えて、貴族学校に入学することになったアルウィンのお話となります。




