1−3 エトワール・ド・ラ・リフィ参上!
正義のヒロイン、エトワール・ド・ラ・リフィが初登場します!
そのメイド姿をした女性は空から突然舞い降りた。
顔には謎の仮面、衣装はメイド服、長く伸びた金色の髪はまるで天の川、そして立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花を地でいく様な佇まい、まさに只者ではない。
彼女は右手にレイピアを構え、船上で暴れている河蜥蜴達の前に立ち塞がった。
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!我こそは謎の仮面の使者、エトワール・ド・ラ・リフィ!冥土の土産に覚えておけ!」
クリス……、なんでそんな古臭い口上を使ったのよ。それよりも、何故クリスは平家物語の藤原景清の口上を知っていたのかしら?
そして、何でエトワール・ド・ラ・リフィなの?フランス語でエトワールは星でラ・リフィはリフィ河だから、リフィ河の星?もしかしたら、『ラ・セーヌの星』っていう古いアニメからパクって来たの?
当然ながら魔物には言葉は通じない。それなのに冥土の土産に覚えておけるはずがないのだ。もしかしたら、メイド服と冥土を掛けた高度なダジャレのつもりなのか?
色々とツッコミどころ満載な口上だったが、船上で戦っていた船乗りや公爵子息の護衛にはそれなりのインパクトを与えた様だ。……全員、ポカンとしているしね。
色んな事を考えてるうちにエトワール・ド・ラ・リフィの戦闘は始まったようだ。
河蜥蜴に素早く近づき左手で相手にチョップを喰らわせて次々と河蜥蜴達を吹き飛ばしていく、後ろから不意打ちにで突いてきた槍を躱しながら右脇に抱え込み、槍を突いてきた河蜥蜴を蹴り上げて空中に高く蹴り上げると奪った槍を投擲して串刺しにした。
エトワール・ド・ラ・リフィは河蜥蜴達を千切っては投げ、チョップやパンチで頭や心臓などの部位別に叩き潰して絶命させ、河蜥蜴の死体を次々と蹴り飛ばし神霊術を使って爆散させていった。
最後、死体に偽装していた河蜥蜴の一匹がエトワール・ド・ラ・リフィを背後から不意打ちを喰らわそうと襲いかかったが、エトワール・ド・ラ・リフィが裏拳を喰らわせて絶命させた。
河蜥蜴の掃討にかかった時間はわずか二、三分というあっという間の出来事だった。
……あの、右手のレイピアは何で持っていたの?全部肉弾戦でやっつけた意味は何なの?
「何処のどなたか存じませんが、おかげで助かりました。申し訳ありませんが、少々お待ちくださいませんか。我らの主を呼んで参りますので」
「礼など不要です。全ては正義の為に行った事ですから。それではごきげんよう!」
とうっ!と言ってエトワール・ド・ラ・リフィは飛び立っていった。
船上にいた男達はその姿をずっと目で追い、手を大きく振って見送っていた。
ありがとう、エトワール・ド・ラ・リフィ!
いつの日かまた会う時まで、負けるな、エトワール・ド・ラ・リフィ!
「……姫様のご要望通りに河蜥蜴を撃退してきました」
「ご苦労様。色々と突っ込みたい事はあるけど、ここにいるとあらぬ疑いを持たれるかもしれないから場所を移しましょうか、エトワール・ド・ラ・リフィ」
「……その名前は恥ずかしいので言わないでください」
私達は防水壁から降りて繁華街に向かった。
リフィ河の北側は上流階級の平民達や貴族しか住んでいないので、ゴミの回収や下水道が配備されていて街の中はかなり清潔に保たれている。
変わってリフィ河の南側にある下町は下水道の整備はまだそれほど進んでおらず、ゴミや糞尿などを路上に捨てている為に町全体が汚く、ひどい悪臭が漂っている。そして路上に捨てられた生ゴミなどを処理するために豚が放し飼いにされている。町中にゴミ処理用の豚が飼われることは中世のヨーロッパではよく見る風景で、時折放し飼いの豚が幼児に襲いかかり、裁判にかけられて処刑される事もあった。
私達は繁華街にある喫茶店のテラスで優雅にティータイムを楽しむことにした。
自分達の周りには不自然にならない程度の防音結界を張り、先程の魔物襲撃についてクリスと話し合ってみることにした。
「あれから、何か変化はあるかしら?」
「……新たに魔物達が集まって来てはない様です。流石にあの数ですとこの周辺の河蜥蜴の全てがあの場に集まったと考えて良いと思います。河蜥蜴はこの辺りの魔物では最も強い魔物です。その河蜥蜴が倒されたのですから、他の弱い魔物達は寄り付かないと思います」
「なら結構。それにしても、魔物が船を襲撃する事はあるにしても、あの集団行動には疑問が残るわ」
「……調査しても構いませんが、おそらくはかなりの厄介事の可能性が高いですよ。姫様が関わるべきではないと思います」
「そうね、ユピテルが原因なのかケルト王国が原因なのか、それともただの偶発的な襲撃なのかわからないけれど、前者の場合だとすると私は関わりたくはないわね」
「モリガンには河の警備の強化をしてもらう様に言っておきますので、この件はこれで終わりに致しましょう」
「えらく私を関わらせたくないみたいに聞こえるけど、そんなに心配しなくてもこの件には関わる事はないわよ、多分」
「……その多分が怖いのです。姫様がこの様な事件に関わると大事になる予感しかしませんので」
「そうだったかしら?」
「カフカースの事はお忘れでしょうか?」
「……なるほどね、大丈夫よ今度は王都を吹き飛ばす様な真似はさせないから」
「その様な事態になる様な事はお控えくださいと申しております。少しは自重してくださいませ」
「そうね、今度、あんな事になりそうな時は私の代わりにエトワール・ド・ラ・リフィを派遣しましょう」
「それは勘弁してください!」
エトワール・ド・ラ・リフィの次の活躍の場は果たしてあるのだろうか?
それは、作者にもわからない!だって、その場のノリで書いちゃったからね!!




