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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第一話 入寮式

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1−1 アリア、一寸だけ黄昏れる

第二章がスタートしました!


ですが、いきなりアリアのため息からのスタートです。

「……はぁ、私って家族運がないのかな……」


 私はリフィー河の王宮側の堤防に建てられている防水壁の上に立って川の流れを眺めながらため息をついていた。

 オウルニィから旅立って三日が経過していたが、私は未だに魔術師学校の敷地に入れないでいる。

 何故私が魔術師学校に行けないのかというと、魔術師学校は全寮制となっているのだが、寮に入る順番は基本的に後見人となる貴族の爵位が低い新入生から入寮する決まりになっている。だから私も後見人であるウェズリー辺境伯の序列に従って入寮しようとしていたのだが、私自身が男爵令嬢という事もあって寮に入る順番が一番最後になってしまった。学校側の言い分では、新入生は全員が平民だったから後見人がたとえ公爵であったとしても貴族令嬢よりも身分は下になる為だという。なので私の入寮は先の話となり、明日までは暇な時間になってしまったので、王都見学がてら色々と見て回っている。


 王都であるティル・ナ・ノーグは、ケルト王国のほぼ中央に位置していて、リフィー河の北側に広がる大都市だ。今ではリフィー河に橋が渡されて河を渡った南側に新たに平民階級の人々が暮らす下町が新たに造られている。

 リフィー河の堤防の上に建てられた防水壁はリフィー河から上がってくる魔物達や洪水から王都を守る為に建造されたのだが、普段は王都民達の憩いの場や散歩コースとして利用されていて私以外にもちらほらと散歩をしている人達とすれ違う。


「姫様、家族運がないとは……?」

「だってさ、前世では病気の為とはいえ小さい時以外はほとんど両親と離れて入院生活をしていたし、生まれ変わっても七歳で両親と離れ離れで暮らす事になるんだよ。これって家族運が無いとしか思えないんだけど」

「……姫様はタカアマハラで百年間ご両親と一緒に暮らしておりましたが?」

「でもそれって、神様感覚で言ったら一年とか一日みたいなものなんでしょ?」

「それはそうですが……」

「だったら、私は両親と一緒に過ごせない悪運の下に生まれたとしか思えないよ……」

「……ホームシックにでもなりましたか姫様?」

「……そこまでじゃ無いけど、ちょっと寂しいなって」

「そこまで慕われているなんて奥様や旦那様がお聞きになられたらきっと喜びますよ。それに、フーシ様やナクロール様にはこの世界での任務が終わりましたらずっと一緒に暮らせますから」

「……そうだけど、別に会いたいとか思っていないんだからねっ!ううううっ、本当にそんなんじゃないんだから!」

「ふふっ、照れている姫様も可愛らしいですよ」


 くそー、クリスったらそんなに揶揄わなくてもいいじゃないか。

 私だってちょっとくらいはセンチメンタルな気分になる事だってあるんだよっ!

 私は照れ隠しをするようにリフィー河にまたがる橋を見てみると何やら人だかりが出来ていた。

 橋の上に集まっていた人達の格好は豪勢に着飾っている人や鎧を着ている騎士たちが多く、普段着を着た人は誰もいなかった。


「……ねえ、橋の上にいっぱい人が集まって来ているけど、これから何かあるの?」

「ああ、何でもユピテル帝国から公爵閣下の令息がケルト王国に留学に来るのだそうです。おそらく、この人だかりはそのお出迎えではないでしょうか」

「公爵の息子?ユピテルからケルト王国に留学するって、その息子、ユピテルで何かやらかしたのかしら?」


 この世界の留学事情は地球の私が暮らしていた時代とは違って、そう簡単には留学が許されていない。基本的に留学が許されるケースは外交上の問題が発生した時、つまりは人質となったケース。それ以外となると、何かをやらかして国外追放になったのをオブラートに包んだ表現のケースとなる。

 人質のケースだと、ユピテルとケルトの間で戦争もしくはそれに近い何かが起こらないと発生しないのだが、ここ数年間はその様な出来事は起こってはいないので今回の留学には当てはまらないだろう。だとすれば、やはり何かをやらかした可能性が高くなるのだが……。


「そこまでは存じませんが、何やら裏がありそうなのは確かですね。調べましょうか?」

「うーん、まだいいかな。留学といっても入学するのは貴族学校だろうし、私には直接関係ないしね。まあアル兄さんには関係してくるかもしれないけど、他国の公爵の息子と子爵になりたてのアル兄さんでは多分接点はないでしょう」

「……そうだとよろしいのですが」

「……何よ、その疑いの目は?」

「いえ、姫様はフラグ立ての一級建築士でいらっしゃいますから」

「そんな訳ないでしょ。そんなに疑うんだったら、フラグが立つ前にこの場から離れましょう」


 ピーーーーーーン


 私の頭の中でやけに澄んだ金属音が鳴り響いた。

 これは私が常時展開しているパッシブソナーの探索範囲に魔物が入り込んだ時に鳴る警戒音だ。


「……流石は姫様、フラグ立ての一級建築士の異名は伊達ではありませんね」

「クリスは私のせいだって言いたい訳なの!いくら何でも私のせいな訳ないでしょう!」

「そうですか?ですが、その証拠に……」


 ピーン、ピーン、ピーン、ピーン…………


「……なんだか物凄く魔物の数が増えて来てるんだけど?」

「そうですね、ざっと五十匹以上が集まって来ていますね」


 なんでそんなに集まって来てるの?本当に私のせいなの?そんな疑問が私の頭の中によぎっている最中に、一匹の魔物が河岸に上陸してきた。

 その姿はまるでワニのような大きな口に固そうな鱗、そして二本の足で直立していて手にはお手製と思われれる不恰好な槍を携えていた。

 大きさは二、三メートルくらいはあるだろうか、そばにいる騎士達と比べるとまるで大人と子供くらいの差がある。


「……リザードマン?いえ、クロコダイルマン?」

「この世界では河蜥蜴と呼ばれているそうです」

「トカゲというよりも、見た目はワニなんですけど」

「ワニは南蛮樹海に生息している様ですが、この世界では一般的な生物ではないみたいです」


 南蛮樹海とは、この箱庭世界の南端にある巨大な熱帯雨林の森林地帯で、北のキボリウム山脈に並ぶ魔物発生地帯だ。


 その河蜥蜴は数匹は河岸に上陸したが、ほとんどはまだ河の中に身を潜めていた。

 上陸した河蜥蜴も辺りをキョロキョロと見渡し、何かを探している様に思えた。


「何を探しているんだろ?もしかして、私?」

「いえ、おそらくはあの船ではないでしょうか」


 クリスが指差した先には、河の上流に浮かんでいる大型船があった。そして、その船尾にはユピテル帝国の国旗が掲揚されている。


「もしかして、あの船って例の公爵の息子が乗ってる船なんじゃないの?」

「多分そうではないかと」

「魔物にまで目を付けられるって、その息子は何をやらかしたのよ!」

南蛮樹海はケルト王国の南側にあるログレス王国や、クン・ヤン教国や、西方地方の南端にある巨大な森林地帯となっています。


アリアが南蛮樹海に訪れる事になるのは相当先のお話となります。

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