表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 閑話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/125

閑話 2 封印からの脱出 (教皇視点)

時系列的には第六話の「模擬戦の反省会」の直後、回想シーンは物語が始まるよりも遥か昔のお話になります。

「……全く、忌々しい体だ」


 私はベッドの上で熱に浮かされながら、一人悪態をついていた。

 あの模擬戦の後、私の体は悲鳴を上げ続け今では身を起こす事も辛い状況が続いている。


 ……だが、我々の決断は間違ってはいなかった。幼いとはいえ神の一撃に耐える事ができたのだから。


 私達がフーシ様が施した結界に囚われ、無明の空間で幾千年費やし、そして断腸な思いで下した決断の全てが報われた気持ちだった。

 あの時、あの瞬間に感じた後悔や悲しみ、そして怒りや憎しみは決して忘れることはできないだろう。

 そう、私があの封印から逃れた日の事を決して忘れてはいけないのだ。




 私が仲間達の多大な犠牲のもと、フーシ様の結界から辛くも脱出する事が出来た。


 ……私達が持つ全ての神霊力を使い、更にこれだけの犠牲を払っても自分だけしか封印を抜け出す事が出来ないとは。


 封印の外に広がった景色はかつて私達が作り出したドリームランドの風景とは異なっていた。しかし、そんな事を考えている余裕などなかった。何故なら封印から脱出した途端に私の体を焼き尽くす様な熱と痛みが全身に広がっていったからだ。


 ……まさか、フーシ様はこの地を物質界に変化させたのか!


 物質界は例え神であろうとも勝手に介入できないように造られた精霊以外の生命体が蔓延る世界だ。それ故に精霊である私は物質界から排除する様にこの世界から攻撃され続けている。


 ……たとえ封印から脱出できたとしても、今度は物質界からの攻撃を受ける。フーシ様はある意味二重の封印を施していたのか。


 だがここで倒れるわけにはいかない。私の中に仲間達に託された想いがある限り、諦めるわけにはいかなかった。

 幸いな事に私は原初の精霊だ。ナクロール様より神器である『煤竹の笛』を与えられ、創造を行使する事によってナクロール様までとはいかないが肉体の創造ができる。

 私は神霊術を使って急遽肉体を創造し、その肉体に私自身を魂として宿した。

 私が肉体を得た途端、物質界からの攻撃は止んだ。

 この世界に来てからようやくホッとした瞬間だったのだが、そんな時間は長くは続かなかった。今度は、私が創り出した肉体から異常が発生したのだ。全身から倦怠感と関節から痛みを感じ、意識が朦朧としはじめた。

 私は精霊だったので、今まで病気などによる体の不調を感じた事がなかったのでこの現象が発熱の症状だということがわからなかった。

 私は地面を這いずりながら巨木の根元にあった穴倉に身を隠し体を横たえた。

 全身から力が抜け、ようやく息が整いはじめ、初めて周辺の景色を見渡す事ができる様になった。


「……ここは、森の中だろうか?物質界ならば何かしらの生命体が存在するはずだが、付近には何も感じられない。鬱蒼とした森がかなりの範囲に広がっている」


 私は封印の礎から抜け出したと思っていたが、どうやら私が脱出した場所は礎がある場所ではなさそうだ。私一人が脱出するのに何千もの原初の精霊が必要となったのだ、仲間達全員を救い出そうとするのなら、やはり礎を破壊し封印を消し去るしか方法はないだろうか。

 いろいろな事を考えているうちに私はかつて私が創り出した眷属達の事を思い出した。


 ……彼等はうまく逃げられたのだろうか?


 私はこの肉体でも神霊術が使える事を確認した後、念話術を使って眷属達を呼び寄せてみる事にした。

 そしてしばらくの時間が経過してようやく現れたのはダゴンだけだった。


「主人様、よくぞご無事で……」

「……ああ、私一人だけだが、やっとの思いであの忌まわしい封印から抜け出すことができた。ところでダゴン、他の眷属達はどうしている?」

「主人様の眷属で残ったのは私が最後でございます。他の者はドリームランドと共に消滅したり、神によって裁かれたり、神霊力が尽きて消滅しました」


 原初の精霊の眷属とはいえ、神霊力が尽きれば消滅は免れない。眷属という存在の儚さなど今まで考えたことなどなかったが、この時は嫌というほど実感してしまった。

 そんな寂寥感を感じたせいなのか再び私の肉体が悲鳴を出しはじめた。


「主人様、大丈夫でございますか!」

「……ダゴン、どこか安全なところはないか?今の私は、殆どの神霊力を使い果たしこの肉体を維持する事すらとても困難な状態だ。どこか安全な所で休眠状態になり神霊力を蓄えなければならない。少なくとも数百年間、場合によっては千年以上眠りにつくだろう。ダゴンよ、その間私を守ってくれないか」

「畏まりました主人様、主人様がお眠りなさっている間に他の精霊様方の眷属達と合流し、捲土重来を図りましょう」




 その後、私は長い眠りにつき神霊力の回復に努めた。

 ダゴンはその間に宇宙中に散らばった原初の眷属達を呼び寄せ、トゥルー教なる宗教と立ち上げ、人間達を利用して封印の礎の捜索に当たっていた。

 そしてダゴン達は何故かこの世界に降臨していたアリア様なる神と対立し、模擬戦を行っていた。あの時、初めてアリア様と対面したが、あの表情から察すると私達が隠していた秘密に勘づいているな。だが、それを知っていても私を断罪しようとはなされなかった。もしかしたら、私に憐れみをかけたのか?それとも、私の事など歯牙にも掛けていないのだろうか。

 どちらにせよ、私は見逃され猶予が与えられた。暫くはケルト王国には手出しが出来なくはなるが、他国に干渉する事には言及がなかった。知っていて見逃したのか、それとも……。

 ここから先は神との化かし合いになるだろう。

 だが、この勝負に負ける訳にはいかない。

 私の身体の中には、多くの仲間達の無念が渦巻いているのだから。

次回は第一話以来登場していないメイド少女のアンのお話となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ