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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第六話 入学前の慌ただしい日々

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6−16 ケネスとの再会

ケネスさんを忘れている人の為のケネスさん情報!


ケネスさんはオウルニィに出入りしていた行商人で、カフカースの領主の命令でアリアを誘拐しようとしていた人だよ!思い出したかな?

 ようやく魔術師学校への入学準備が終わり、ほっと一息つきたい所なのだが、気が付けばあっという間に王都への引っ越しの日の前日になっていた。

 そんな訳で私がオウルニィの町で自由に過ごせる時間は今日一日しか残されていないのだが、いざ何かしようと思っても何をしたら良いのか全く思いつかなかった。なので、今日一日オウルニィの町を散策してこの町の風景を記憶に残すことにした。……つまりは行き当たりばったりのノープランって事だね。


「まずはどちらに参りましょうか、姫様」

「そうね、まずは礼拝所からスタートしましょうか。祭司様にもしばらく会えない事を伝えたいし」


 取り敢えず私達は礼拝所からスタートして市場を散策し、市場近くのお店でお昼ご飯を食べて後は成り行き任せに散策するプランで行動することにした。……まあ、あくまでも予定だけれど。

 礼拝所の中に入り精霊像に手を合わせて祭司様に魔術師学校に入学する事を伝えた。

 私が精霊の弟子になってからは毎回祭司様が私に向かってお祈りしてくるのだが、それを丁重にお断りするのがいつものパターンなのだが、今日は私に会うや否や私の目の前で跪きポロポロと涙を流して嗚咽し始めた。


「祭司様、一体どうなされたのですか!?」


 クリスが私を庇う様に前に立ち祭司様に尋ねた。……クリスが動揺する位だから、やっぱり異常事態だったか。


「精霊様のお弟子様であり使徒でもあらせられるアリア様がオウルニィからいなくなると思うと涙が流れるのを止められませんでした。ああアリア様、我らをお捨てになられるのですか……?」

「……祭司様、私は魔術師学校に入学するだけですよ。魔力が一定以上ある人は全員入学しなければならないので、ケルト王国民の義務みたいなものです。それにオウルニィは私の故郷ですから、いつになるかは断言出来ませんが必ず帰ってきますから。だから、捨てるとか捨てないとかそんな悲しいことは言わないでください」


 私はあれこれと言い訳を言って祭司様を慰めてはいるが、本当は心の中でドン引きしていた。

 私はなんやかんやあって神様になり、いずれこういった事も起こるかもしれないなとうっすらと思っていたのだが、いざ目の前で大声で泣かれると動揺するよりも場違いな空気感に居た堪れない気持ちになってしまった。クリスも無表情を装ってはいるが、心の中では大爆笑しているのではないだろうか。……クリスさんや、もうちょっと表情を取り繕いなさい。祭司様に対して失礼ですよ……。

 私はなんとか祭司様を慰め、必ずオウルニィに戻る事を約束して礼拝所を後にした。


「……オウルニィにいる最後の休日のはずなのに、入学準備で忙しかった日々よりも精神的に疲れるのってどういう事なのかしら」

「もしかしたら、市場でも同じ光景が繰り返されるかもしれませんね」

「……勘弁してちょうだい」




 市場ではそんな心配していた様な事はなくて、みんながお祝いと激励の言葉をかけてくれた。……これだよ!こういうのが欲しかったんだよ!

 そして食事処の店主から入学祝いとしてランチをご馳走してくれるというので、少し早かったがお昼ご飯を食べることにした。

 私達は店の中に入り一番奥の席につき料理が出されるまで女将さんが出してくれたお茶を飲みながら佇んでいた。すると、私達の席に近づいてくる男性が話しかけてきた。


「お久しぶりだね、アリアちゃん。いやここではアリア様と呼んだ方が良かったかな」

「お久しぶりです、ケネスさん。呼び方はケネスさんが好きなように呼んで構いませんよ。今日はお仕事でオウルニィに来たんですか?」

「……いや、仕事はちょっと訳あって休業中なんだ。ここにいるのはオウルニィに引っ越そうかと思って家族を引き連れてきたんだ」

「引っ越し?ケネスさんはカフカースの商業組合に登録していましたよね?オウルニィでも商売は出来るんですか?」

「私は行商人だったからね、行商人は領を跨いでも商売できるんだ。店を構えたり何処かの商会に就職する時はまた登録し直さないといけないけれど、一から登録するよりは安上がりになるんだ」

「ケネスさん、食事が終わったら何処かでお話しできませんか?カフカースの事とか色々と聞きたいことがあるので」

「……わかったよ。その時は家族と一緒でも構わないかい?家族にとっては初めての土地だからね、それにあんな事があったからあんまり離れたくはないんだ」

「もちろん構いませんよ。……ケネスさん、私の事はご家族にどう話されていますか?」

「……精霊の弟子である事と、魔術師である事は言ってある。この前の事は私を哀れに思った精霊様が弟子であるアリアちゃんに助けるように命令したって事にしているんだ」

「わかりました。では食事の後にニュートン商会でお話ししましょう。アポイントメントはこちらで手配しておきますので」


 私はクリスに目配せをして確認をとった。クリスは小さく頷き、自身の分身体をニュートン商会に走らせたようだ。もちろん、クリスの神霊術が他人から見られるようなヘマはしていない。

 これで心置きなくランチが楽しめるってもんだ。

次回、ケネスさんからオウルニィに引っ越したい理由とカフカースの現状について語られます。

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