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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第一章 精霊の弟子?  第六話 入学前の慌ただしい日々

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6−15 模擬戦の翌朝の会話

 模擬戦から数時間経ち、私は寝ぼけ眼を擦りながらベッドから身を起こした。

 うーん、私の魂は間違いなく神様で睡眠は必要では無いはずなのだが、今までの習慣だからなのか、それとも現在の身体が人間だからなのか再びベッドの中でスヤスヤと眠りたいという欲求が沸々と湧き上がってくる。


「姫様、早く支度をしませんと朝食に間に合いませんよ」


 いつもの起床時間ならば余裕があるのだが、模擬戦があったせいで就寝時間がかなり遅かった為にクリスもギリギリまで睡眠時間が取れるように配慮してくれたみたいだ。

 ありがたいとは思いながらも、人間の三大欲求の一つである睡眠欲に私は今にも敗北しそうだ。


「………………お願い……あと、五分……」

「待てません。さあ鏡の前に来て座って下さい」


 クリスは神霊術で私の体を浮かせて強引に鏡台の前に座らせた。

 鏡に映った私の表情は睡眠不足も相まって非常にブスッとしている。


「さあさあ、そんな不機嫌そうな顔をしないで、いつもの様な可愛らしい表情を思い出して下さいませ」

「不機嫌そうではなくて、今の私ははっきりと不機嫌って言えるわ」

「……まあ、普段は寝不足でもそんな事は仰らないのに珍しいですね」

「あんな不愉快な模擬戦の後ですもの、不機嫌にだってなります!」

「……そういえば、姫様はトゥルー教の教皇が来てから途端に不機嫌になりましたね。教皇に何かされたのですか?」

「…………別に何もされてません」

「では、教皇の何が不満なのですか?私が感じた印象では彼が原初の精霊である事は分かりましたけど、それは姫様も想定してたのではなかったのですか?」

「教皇が原初の精霊ではなくて、仮にお父様の隠し子だったとしてもここまで不機嫌にはなりません。まさか、教皇本人、いえ原初の精霊達があそこまで考えなしだとは思いませんでした」

「姫様と教皇が会ったのは今回が初めてだった筈です。教皇の考えを聞く暇なんてなかったと思いますが?」

「考えなんか聞かなくても彼の魂を見ればわかります」

「魂を見る……ですか?」

「これは、お姉様から頂いた『叡智の書』の力なのでしょうね。普段はそれ程見える事は無いのだけど今回はハッキリと見えてしまったの。そして彼がお父様を超える力を持つ方法もある程度想像できるわ」

「本当ですかっ!」

「クリス、声を荒げないで。それにおそらくこの方法は成功しないと思うから」

「……姫様は彼等が失敗するとお考えですか?一体、どの様なやり方をすればフーシ様を超える様な力が身につくのでしょうか?」

「……教える気はないし、言いたくもないわ。そして、そんな間違った方法で強力な力を得てしまったのだから今後もトゥルー教の活動は止まらないのでしょうね」


 おそらく教皇本人もこのやり方の欠陥に気がついているはずだ。だけど、まともなやり方ではお父様を超える様な力なんて到底叶わないだろう。彼にとってもこのやり方は一か八かの賭けなのだろう。


「姫様は、教皇を止めようと思っていらっしゃるのですか?」

「本人が覚悟を決めてしまっているもの、私が止めた所で聞くはずが無いわよ。そして眷属達は教皇の圧倒的な力に酔っていると言ってもいい。枢機卿達は教皇というカリスマを得てカルト的な考えが波及していると思う。幸いなことにその考え方が一般信者まで普及していないのが救いね……」


 教皇が私の攻撃を止めた時の枢機卿達の表情が頭にこびり付いて離れない。……全く、そんな表情を見たこっちの方が悪酔いしてしまいそうだよ。お酒なんて飲んだ事はないけど。


「それならば、教皇を殺せばトゥルー教は止まるのではないですか?命じて下されば……」

「やめなさい。私はテロリズムで未来を変える様な真似は許しません」

「ですが、奴等がしようとしている事はまさしくテロリズムではありませんか。わかっていながら止めないのも罪だと思いますが」

「先制的自衛権という考え方ね。私もその考え方は間違っているとは思ってはいないけど、賛成出来るかどうかは別問題ね。こういうジレンマはいつまで経っても無くならないものよ。だけど今回の場合は議論の余地すらないわ。教皇は原初の精霊よ、殺そうとしても死なないの。イタズラに彼等を刺激するだけよ」

「そうでしたね。申し訳ありませんでした」

「いいわよ、私も同じ事を頭に浮かんだけれど、私の性格的に受け入れられなかっただけだから」

「ならば、私達は教皇が失敗する事を見守るしか方法はないのでしょうか?」

「……彼等がこの方法を成功させようとするならば、鍵になるのはやはり封印の礎よ。どこにあるのかは知らないけれど、礎を死守するしかないでしょうね」

「封印の礎ですか。この世界の精霊達はフーシ様に命じられてこの地にやって来た者です、彼等なら知っているのではないでしょうか?」

「もし知っていたとするならば、トゥルー教の枢機卿達がその情報を掴んでいるのではないかしら。だけど、枢機卿達は礎の場所を把握してはいなかった。だから、多分だけど精霊達は知らないのでしょうね。もし知っているとしたら、お父様かお姉様の二人だけだと思うわ」

「なら、一旦フリン様に報告を行いましょう。何かご指示があるかもしれませんし」

「そうね、クリス悪いけどお姉様に報告をあげて頂戴」

「わかりました。……ですが、教皇の事を尋ねられたらどの様に報告致しましょうか?姫様は話したくはないのでしょう?」


 確かに、教皇の事をどう報告すれば良いのだろうか?

 お姉様ならば湾曲的な表現を使っても理解して貰えるかな?いや、して貰えるはずだ!だって、私のお姉様ですもの!


「……そうね?教皇の事は呪物とでも言っておいて頂戴。彼等がやろうとしている事はまさしく呪いそのものだから」

「……呪いですか?」

「ええ、ああ!考えただけで背筋がゾワゾワってしてきた!」


 こんな思いをするのも全部あの教皇のせいだ!

 あの時、さっさと帰らずに教皇の顔にビンタの一つでもお見舞いしておけば良かったよ!

教皇は呪物で、原初の精霊が行なっている事は呪い?一体どういう事なのでしょうか?


次回は久々のあの人が登場します。……モブキャラみたいでしたので忘れられているかも……。

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