表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

第6話:これがパティシエの実力です!!

※軽い流血(コメディ調の鼻血描写)が含まれます。

 椿影組の刺客を倒し、リツとユウを見守り、敵対組を追い払い、事務所周辺を見張り、湧いて出たヤンキー共をシバき倒す日々…………


――アキラは疲れていた。


「…癒やしが……欲しい」


 彼女は椅子に突っ伏している。連日の護衛任務と戦闘により、目の下には見事なクマ。最早いつもの妄想すらできなくなっていた。



「アキラ殿、お疲れの様子でございますね。」


 前掛けエプロンの似合う、すいーつ道専属パティシエ兼 桜道組の若頭補佐であるウメムラが背後に立っていた。姿勢は凛としているのに、その目にはアキラを気遣う柔らかさが宿っている。


「そうなんですよ、ウメムラさぁ〜ん…。私もうヘトヘトなんです…。なにか癒やしになるものを注入したいのです……!」


「……食で癒されるのはいかがでしょうか。少々、実験的な試作品を用意してございます。」


「実験的?」


ーーーーー



「本日の趣向は、“対になる2人の甘味”でございます。」


 そう言ってウメムラが銀のトレイに載せてきたのは、二種類のペアスイーツ。

 一方は雪のように白いレアチーズケーキ。もう一方は艶やかな漆黒のガトーショコラ。


「ほう。白と黒の対比……」


「はい。互いに補い合い、存在を際立たせる……そうした組み合わせを意識しました」


 ウメムラは穏やかに説明しているが、アキラの頭には別の補完が走る。


(な、なんだこの……“受け”と“攻め”のような対比は!?!?)


 妄想する元気が無いはずのアキラだったが、極度の疲労によって、逆に何でもBLへ結びつけてしまう思考回路になった。

もう一度説明しよう。本能的に何でもBLに見えるようになったのだ。


(そういえば、ずっと攻めは若だと思ってたけど、ユウくんの可能性もあるよね!あの白いケーキのように天然でふわふわしてるように見えて、実は2人っきりになった瞬間グイグイ来るタイプ! 照れてる若様も見てみたいなぁ〜!!)


 アキラは完全に頭がおかしくなっている。こんなのもうただのヤバい人だよ。ケーキ見て鼻息荒くしてる上に別の意味でよだれ垂らしてるもん。



その時――。


「……なんかいい匂いするな」


「おおー、ホントだぁ! 甘い匂い!」


 リツとユウがすいーつ道へ入ってきた。アキラの腐女子センサーが大爆発する。


ーーーーー



「リツ様、ユウ様。よろしければ、ぜひご賞味ください」


「え、いいんですか? やったぁー!」


「わぁ、すっごい美味そうだな」


 二人はそれぞれケーキを受け取って座る。

リツは無意識にユウの方へ皿を差し出し、「こっち食う?」と気軽に声をかける。

 ユウは「じゃあ一口……」とリツのフォークから直接。




「――――――ッ」


 その瞬間、アキラの頭の中でリツとユウがケーキを挟んで見つめ合い、甘やかな時間を過ごす幻影が広がる。


 アキラの鼻から真っ赤な血が噴き出した。



「うわーっ!なに鼻血の滝 出してんだー!」


「ユウくんが黒い方かぁ……。それも良いかもぉ。」


「僕がガトーショコラ食べたのが悪かったの!?」


「いや、それは違うと思うけど」


せまくのはリツくんでもユウくんでも良い、という話ですよ…」


「どういう意味なの?」


「言ってることはわからんが鼻血の量がやべぇぞ!」


「ここは…川? あそこに立っているお婆さんはもしかして……?」


「これ大丈夫なの? 三途の川行ってない!?」


「もしかして、亡くなったばあちゃん?とかに会ってるのか!? おい、戻って来い!」


「……あの婆さん誰?」


「アッ、知らない人だったっぽい!」



 リツとユウは慌ててティッシュを押し当て、アキラの鼻血を止めようと大わらわ。

 一方でウメムラは落ち着いてお茶を差し出し、優雅に微笑むだけだった。



ーーーーー



 アキラの看病に二人が気を取られている隙に、ウメムラは音もなく席を立つ。

 扉を閉めて路地に出ると、そこには煙草をふかす見知らぬ男たちがいた。椿影組の者たちである。


「……やはりおられましたか」


 ウメムラは白手袋を外すと、しなやかな構えを取る。次の瞬間、燕が舞うような動きで敵の懐へ。

 拳一閃、脚一閃。倒れるまで時間は要さなかった。



「ぐっ……くそっ、こいつ……ただのジジイじゃねぇ……!」


「若頭補佐、梅村慎吾うめむらしんごと申します。お手柔らかにお願い致しますよ」


 残った一人の襟首を掴み、壁へ押し付ける。


「さて。お聞かせいただきたい。“眠らせ屋”を狙うその理由を」


 男は苦しげに笑い、口を開く。


「……俺たちじゃねえんだ……。眠らせ屋の力量を計るのは……“あの方”の役目だ……」


 その言葉にウメムラの瞳がわずかに細くなる。

 だがそれ以上は語らせず、彼は静かに気絶させた。


 ーーーーー



 再びすいーつ道へ戻ると、アキラは心身共にすっかり回復したようで、満面の笑みでウメムラに話しかけて来た。


「ウメムラさん、お戻りになられましたか!そうそう、やっぱり貴方様のスイーツは素晴らしいですねぇ!」


「ええ。それは良かったです。」


 何事もなかったかのように微笑む彼。

 だが胸中では、先ほどの言葉が重く響いていた。


(“あの方”……か。さて、どうするか……)


 甘やかな香りに包まれた店内の裏で、確実に不穏の影は濃くなっていた。


ーーーーー



 夜になって店の営業が終わり、シャッターが下りると事務所としての顔になる。

ユウを帰らせ木目の長机を囲み、桜道組の面々が集まっていた。



その場に、ウメムラが静かに立つ。


「さて――本日の件について、僭越ながらご報告申し上げます。」


 彼の声は、まるで執事が主人へ伝えるように柔らかだが、内容は硬質そのものだった。


「店の周辺を嗅ぎ回っていた椿影組の者を、ひとまず排除いたしました。

その際、ある言葉を聞き出すことに成功しております。」



 組長の目がギラリと光った。


「排除ってお前、まさか厨房に入るエプロンでド突いたんじゃないだろうな? 血のシミとか衛生的にも良くないぞ、ケーキに匂いついたらどうするんだっ!」


「……ご安心を。服は一着、戦闘用に用意してございます」


「戦闘用までしっかり準備してるんですか!?」


 アキラの発言を流しつつ、ウメムラは表情を引き締めた。



ーーーーー


「――“眠らせ屋の力量を計るのは、俺たちじゃねぇ。あの方の役目だ”。

 彼らは、そう申しておりました」


 部屋に沈黙が落ちる。

 組長は湯飲みを置き、初めて顔を曇らせた。



「“あの方”、か……」


「ええ。名は明かしませんでしたが、眠らせ屋――すなわちアキラ殿を試すため、別の者が控えているようです」


「試す……!?」 リツが思わず声をあげる。


アキラは腕を組んで唸る。


「ちょっと待ってくださいよ! 私、そんなバトル漫画みたいに“強さを測るための刺客”みたいな扱いされてるんですか? やだ怖い! というか面倒くさい!」



組長は静かに息をついた。


「……なるほど。椿影組はまだ“本命”を出していないわけか」


「はい。周囲を嗅ぎ回る雑兵はただの目くらまし。真に警戒すべきは、これから姿を現す者達でございましょう」


「……」


アキラは珍しく真顔になった。


「つまり、これから本気のやつが来るってわけですね……。一旦寝ても良いですか?」


「お前なぁ、大事な会議中に寝ようとするなよ」


「たまには休ませてくださいよ!過労なんです!

 労働基準法かなにかで訴えますよ!」


「それはすまん! 組長が給料上げてやるから許してくれ!」


藤吉明ふじよしあきら、しっかり働きます!」


「それでいいのぉ?」


ーーーーー



組長は笑みを戻しつつも、その目だけは笑っていなかった。


「……いずれにせよ、我らの子供たちを傷つけようとする輩は許さん。桜道組として、受けて立とうじゃないか」


 場の空気が一気に引き締まる。

 ウメムラは静かに一礼し、報告を終えた。


(――“あの方”。次に動くのは、貴様か)


彼の胸中だけが、静かに炎を燃やしていた。

作者も寝不足の状態でこれを描いたので、文章的におかしな部分があるかもしれません

読んでくださってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ