第20話:騒がしい日常は私達が護ります!
最終回です!
昼下がりのすいーつ道。
その扉がからん、と軽快な音を立てて開く。
「いらっしゃいませ……おや、これはこれは!」
カウンターの奥にいたウメムラが目を丸くした。入って来たのは、あの椿影組の面々――ヤトウ、ツバサ、カゲロウ、カゲツだった。
裏社会で名を馳せる幹部たちが、のんきに甘味処へ足を運んでくる光景は、何とも奇妙で微笑ましい。
「やあ、どうも」
ヤトウが柔らかな笑みを浮かべ、軽く頭を下げる。
「お前ら、来てくれたのか!」
店内のテーブル席にいたリュウジが立ち上がった。桜道組の組長らしからぬ、人懐こい笑みを浮かべながら。
席に着いたヤトウたちを前に、リュウジは感謝の言葉を口にした。
「武器の流通網をうちに協力してくれるって話、ありがたいぜ。あんたらが動いてくれるおかげで、裏社会全体も落ち着く」
ヤトウは頷く。
「こちらも、桜道組の質の良い武器に前から興味があったんだ。持ちつ持たれつだろう?」
カゲツがくいっと手を挙げる。
「…俺、……銃より刀が欲しいんですけど!」
それを聞いてツバサが吹き出した。
「カゲツ、またわがまま言ってる。……でもまあ、いいじゃない。せっかくだから交換会とでもしようか」
店内に笑い声が広がる。かつて命の奪い合いをしていた相手とは思えぬ、穏やかな光景だった。
ふとツバサが顔を上げ、タイガを見た。
「ねえ、今度一緒に出掛けない? 遊園地でも海でも、どこでもさ」
「おう! もちろんだ!」
タイガが豪快に頷く。
「俺も行きたいです」
カゲツがすかさず手を上げる。
それに便乗するように、カゲロウもぽつりと呟いた。
「……それなら俺も」
するとウメムラまで腕を組んで笑う。
「では私も参加させていただきましょうか」
最終的にリュウジとヤトウまで「じゃあ俺も」「俺も行こう」と言い出し、結局全員で出掛ける計画が持ち上がった。
「なんだこれ、遠足の相談かよ!」
タイガが豪快に笑い、店内はますます和やかな雰囲気に包まれていく。
そんな中、ウメムラがトレーを手に近づき、カゲロウの前へタルトを置いた。
「……! まだ注文してないのに、なんで分かったんだ?」
カゲロウが目を見開く。
ウメムラは微笑んで答えた。
「あなた、これが気に入っているのでしょう? 最近わかってきましたよ」
カゲロウは一瞬言葉を失い、少しだけ視線を逸らした。
「……ありがとう」
その様子を見たリュウジが笑いながら言う。
「お前らもすっかり仲良くなったな!」
かつて刃を交えた二人の間に、確かな友情の芽が生まれていた。
そこへ、店の扉が再び開く。
アキラ、リツ、ユウが入ってきた。
「親父、来たぞ……って、えぇ?」
リツが目を丸くする。
「わあ、皆さん集まってるんですね! 交流会ですか?」
アキラが嬉しそうに笑い、周囲を見回す。
「知らない人がいっぱいだぁ〜」
ユウは少し緊張した声で呟いたが、すぐにタイガとリュウジが手招きする。
「お前らも来い! 一緒に食おうぜ!」
気づけばテーブルは満員。桜道組と椿影組、そしてリツとユウまで加わり、にぎやかにスイーツを囲んでいた。
(これだけ男の人が集まってれば、カプも沢山できるぜ! 桜道組と椿影組の関係も、すっかり良くなったし、平和だなぁ!)
アキラは心の中でほくそ笑んだ。
しかしその時、アキラはふと店の裏から妙な気配を感じた。
笑顔を浮かべながらも、彼女は立ち上がる。
「ちょっと外の様子を見てきます」
「程々にしてやれよ」
リツが苦笑混じりに声を掛けた。
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裏口の周りを見渡すと、そこには怪しい影が潜んでいた。
男が短剣を構え、アキラへ飛びかかる。
しかしアキラはひらりと身をかわし、素早く銃を抜いて構えた。
「邪魔するなら帰った方がいいですよ」
真剣な瞳で敵を見据える。
「……若様と仲間たちの日常は、私が護ります!」
ここまで読んでくださりありがとうございました!
次の作品は「ヨフカシネムリ」ではなく、ユーザー名と同じの作者名で描くと思うのでそちらも読んでくださると嬉しいです!




