戦中2
冒頭のセリフが映画からの抜粋と、軽いものに感じますが、宇垣纒の心情が思いっきり出ていると思いここに使いました。見てない映画なので、いつか見てみたくなりますよ〜
「死んでこい」、これは、命令の限界を超えている。しかし、戦争が続く限り、私は命じるだろう「死んでこい」と………
東宝特撮映画 「連合艦隊 」宇垣纒中将より
1
8月15日………が来てしまう。
蝉の声が響く熱い日の正午の事。
たまたま、俺は整備兵から聞いてしまう。
戦争が終わったらしいと、その噂は多くの兵たち噂をしていた。
ラジオで聞いたと整備兵が言ったのだ。
そんな事を俺達、特攻隊員は聞いてない。
特攻隊員は土手で待機していた為に、いわゆる玉音放送は聞くことはなかった。
ほんとうか、ほんとうなのか?
その事を真実かもしれないと思うと、俺は今まで張っていた糸が切れてしまう。
「そうか……終わったのか」
熱い地面の土の感触を俺は忘れられなかった。
終わった事に信じられなかったのだろう。
信じられず兵が暴れている騒動があった。
「まだ、俺達は戦える。戦えるんだ!」
「そうだ、戦争は終わっていない」
そこに宇垣閣下の命がおりた。
顔が青ざめていく………
戦争は終わったはずなのに……ウソだろ!
「これより、沖縄へと出撃するぞー!」
端的にいうとこんな言葉が耳にはいる。
こんな所で命令が下されのか?
書かれている指令書にはこうあった。
命令内容は『701空大分派遣隊 艦爆五機をもって、沖縄敵艦隊を攻撃すべし。本職これを直率す。第五航空艦隊司令長官 宇垣纒』とあった。
指揮官は中津留達夫大尉だ。彼だって、妻と生まれたばかりの娘がいたはず……一度しかあっていないと聞いた。それでも行くのか………おい!
その言葉は口には出せない。
彼は颯爽とした美丈夫で当時としては長い髪が額を撫でている。
愛する妻とはおしどりだと聞いた。
やがて、艦爆の彗星が滑走路に引かれていく……十一機の全てがそこに並んでいた。
俺も行かなければいけないのか………本当に?
足がビクつき震えている。
自体と時間は変化していく。
ほかの特攻隊員は高揚の中で、盛り上がっている。
その中で俺だけは違う空気をまとっていた。
死にたくない臆病なウサギのようだ。
やがて、午後3時頃に黒板に搭乗割が発表される。
皆が食いつくようにみつめていた。
俺はやがて、その黒板を恐る恐るみいる。
「お。俺の名は…………?………ない…………」
2
俺は崩れ落ちた。名を見つけられなかった者も地面に伏していく。
おなじように安堵したと思っていた。
「なぜ……俺の名前はない……」
そんな馬鹿げた、言葉をはいている。
戦争は終わったのに……
付した特攻隊員は指揮官の中津留大尉につめよる。
「どうして、俺の名前はないのだ!」
胸ぐらをつかみ、今にも殴りかかりそうだった。
しかし、中津留大尉は彼らの言い分を柳のように受け入れている。
そこで初めて明かされた
「今日は宇垣閣下も一緒だ」
明かされた真実に、司令長官みずから特攻するということに、皆どよめいた。
暑い外気がさらに若者の熱気により燃え上がっていく。
俺は思った……これが最後の特攻なのだと………彼は死に場所を探していたことは知っていた。
同時に特攻隊員を送り出すことに罪の意識を負っていたのは知っていた。
だから………
3
黒塗りの車か宇垣閣下と幕僚が降りてくる。中には青ざめた顔の中泉少佐もいた。
瞬間、宇垣閣下の顔を見ると、皆が敬礼して、整列する。
先程まで、中津留大尉に殺到していた彼らも離れていた。
俺は声をあげずにその光景を端から見ていた。
まるで、部隊の上の演者を観るように……
一瞬、宇垣閣下は驚いたように彗星を見た
「命令では五機と命じたはずだが?」
そうだ、指令書には五機とあったはずなのに……
困惑する宇垣閣下に中津留大尉は口を開く。
「長官が特攻をかけるというのに、たった五機とは何事ですか! わが隊全機の彗星でお供します!」
中津留大尉の言葉とともに搭乗員に選ばれた彼らは胸を張っていた。
「こんなについてくることはない! 偵察員はのこれ!! 」
しかし、彼らは引くことなく、決心を翻すこともない、俺と違い立派な軍人だった。
「操縦員とは、いつも生死を共にしてきました。私たちも一緒に行きます!!」
その心意気に折れたのは宇垣閣下だった。
涙を潤ませて、司令長官としての最後の命を発していた。
「命令を変更する。彗星艦爆十一機をもって沖縄に特攻をかける!」
こうして、最後の特攻ご幕を開けた。
4
俺を放置したまま進む。
宇垣閣下は、山本五十六元帥よりいただいた短剣を胸に抱き覚悟を訓示していた。
まるで、どこぞのシェイクスピアのように。
「一億総決起の模範として、共に死のう!!」
その訓示の後で、宇垣閣下さ彗星に乗り込む。
彼の第三種軍装から階級章をちぎり取り、一特攻隊員と変わりない覚悟で決めていくという。
宇垣閣下は今まで見たことのないほど満ち足りた笑顔を向けて、最後の陸地を満喫していた。
しかし、彗星に宇垣閣下を乗せるために後部の席を開けなければいけないが、遠藤秋章飛曹長は乗ることはできない。
しかし、彼は降りる事を拒否し、閣下につめより、無理に彗星の後部座席に乗ることとなったのだ。
バカな 遠藤! 生き残れたはずだろ! どうして、お前は自ら乗り込む。バカだろ! おい、自殺志願者の閣下に譲れよその位置を!!
そして、対照的に後から行くと言っていた中泉少佐の姿は消えていた。
お前は惨めに生きるのだな……俺の心が慰められていた中泉の卑怯な姿に癒された。
その言葉も口にできず、舞台は進む。
「それでは行こうか諸君!」
最後の盃は白鶴だったと聞く。だからか、俺は戦後、白鶴を飲めなくなってしまっていた。
「はっ!!」
やがて、割り当てられた搭乗員が彗星へと乗り込んでいく。
俺はいたたまれもなく、一人の特攻隊員の手をつかんだ。
それは、割り当てられた搭乗員の大木正夫上飛曹だった。
「なじょした?」
福島なまりの強り言葉で俺の行動を問うていた。
澄んだ死を覚悟した目の素朴な青年、
俺はただ首をふり、真実を伝えていしまう。
「もう、戦争は終わったんだ……だから……」
俺の手を彼は優しく振りほどく。
「しってる。そだ事は関係ねえ。げんとも、おらは飛び立づべと思う。この国の意地のためさ」
そんの馬鹿げたことのためにか? 閣下の責任感のためにか? おかしな事を言う。
ここを飛ばなければ、生きていけたというのに……
午後五時頃、宇垣閣下の乗る彗星が離陸準備を初めていた。
西日に照らされた滑走路から、最後に残った彗星は飛び立っていく。
皆、手旗をふり、その最後の勇姿と悲哀を憐れみ表現するように。
その中で俺だけは宇垣閣下に向けて叫んでいた。
「死ぬなら、一人で死ね!!」
一瞬を皆が黙り込み、俺を見た……俺は泣き崩れるように滑走路の土を握る。
「バカヤロウーーーーーー!!」
この宇垣纒の私兵特攻は正しかったとは言えませんが、彼の責任の取ったと思います。一人で責任を取ればと言うのはも同時に間違ってなかった。この話を資料として読むと、終戦を知っていたのか知らなかったのかと、分かれた書き方をされてます。私は知っていたと解釈して書き進めました。書いてみて、もっとしっかり書きたい話でした。個人としての宇垣纒を書き入れていない。たぶんこの遠さは私と宇垣纒との距離なのでしょう……キャラにもできず。かといってそばに寄れない。その距離がもどかしい人です。