忙しいときに忙しいと言ってはいけないのなら、ちょっと論破してくれんか。
これはエッセイです。
小説だと思って読みに来てくださったんなら申し訳ない。
4分くらいで読めますんで、よかったらぜひ。
ごめん、4分は無理かも。
10分くらいでなんとか。
忙しい人が忙しいと言ってはいけないんなら、ちょっと論破してくれませんか。
えーまず、私こと古川アモロは毎日忙しいです。
だれと比べてかと聞かれたら困るんですが。
忙しいです。
忙しいって言いまくってます。
べつに言いふらしてるわけじゃありません。
聞かれるんですよ、いま忙しいですかと。
だからかならず正直に答えてました。
「はい、忙しいです」
えー……ちょっとその話は置いといて。
最近、たまたま地元の商工会の講演に行ったんです。
テーマはまあ、働き方改革のなんちゃらとかそんなんでした。
そこで議員さんや社労士さんなんかのお話を公聴したんですけどね。
なんか経営コンサルやってるらしい、キレモノ風のひとが言ってたんですよ。
「忙しい人ほど、忙しいと言わないですね」
「仕事がデキる人で、忙しいっていう人を見たことがないです」
OH WHAT?
私、マジで聞き間違えたのかと思って「WHAT?」って声出ました。
あいにく私は客席のほうにいたんで、そこから何かあったわけじゃないんですが。
しかし壇上にいる全員、べつにその意見にツッコむわけでもなく。
ウンウンみたいにみんな頷いて、そのまま次のテーマが始まりました。
……いや、言おうよ。
忙しかったらそう言おうよ。
ふだんなら別に気にならないようなことでも、他人が断言してるのを聞くと無性に引っかかる。
こういうのをカチンと来ると言います。
べつに、あの、アレです。
仕事が出来る人は忙しいと言わない。
↓
忙しいというやつは、仕事ができない。
↓
古川アモロは仕事ができない。
こんな論法を突きつけられた気分になって、ムカついたってわけじゃありません。
ほ、ホントなんだからね!
ホントなので、帰ってからネットで検索してみました。
■ 検索 「忙しい 言わない」
そしたらまあ出るわ出るわ。
気味の悪いほど検索に引っかかりました。
首をかしげたくなるような奇論空論が山ほどです。
いくつか読んだんですけど、マジですごいですよ。
トンデモなさすぎて「ヒッ」とか声出てしまいました。
思ったことがすぐ声に出る男、古川です。
よろしくお願いします。
さてみなさん。
私はここに提言させていただきます。
忙しかったら忙しいって言うべきです。
私はずっとそうしてきたし、それで困ったことになった覚えがありません。
これからもそのつもりです。
しかし。
しかしです。
まわりの人間、それも私より優れた社会人たちは、そろって私とは逆の考えなようです。
「忙しいと言ってはいけない」
なんと言いましょうか。
999999対1で、私が孤立してる気分と言いましょうか。
さすがに不安になってきました。
なぜ世の忙しい人は、忙しいという言葉を使うべきでないと発信するのか。
なぜ私は、忙しいという言葉を使うべきと意固地になってるのか。
それぞれの主張をまとめてみたんです。
① 忙しいと言う人には、次の仕事が来なくなるから。
A「すいません、いまお忙しいですか」
B「はい、忙しいです。なにかありましたか?」
Aの人は、Bの人に用事があった。
当たり前です、そうじゃなきゃ話しかけません。
しかしBは忙しかった。
だからありのままを答えた。
もし私が忙しいかと聞かれたら、一言一句Bのセリフを返します。
なんかこれがダメなんだそうです。
忙しいかの質問に、忙しいと返してはいけない。
なぜなら!
「忙しいと言う人には、仕事が来なくなるから」
「だって忙しいひとには、みんな遠慮して頼みごとができなくなるから」
↑
これは、とあるライターさんの主張です。
なんでもその人は、忙しいかと聞かれたら「ヒマです」と答えるとのこと。
忙しいときでも、決して忙しいと言わない。
むしろ「ぜんぜんOKです!」と返すそうです。
そう答えることで、周囲からスケジューリングの上手いひとだと思われるんだそうです。
「あの人は、いつも業務を手早くこなして余裕を作れる能力がある人なんだな」と思われるそうです。
結果、頼りにされる機会が増え、それが新たな仕事につながっていく……
だそうです。
ウ ソ つ け。
そのライターさん、ほかにも仕事に関する投稿をされてましてね。
ちょっとほかの記事も検索してみたんですが、笑ってしまいました。
べつの日に、真逆の内容の記事があったんですよ。
「仕事は忙しいひとに頼め!」
「忙しい人は時間管理が上手いから、どんどん忙しくなる」
「忙しい人ほど優秀だから、仕事は忙しいひとに頼むべし」
どっちやねん。
驚くべき二枚舌です。
というか、自分のダブスタを自覚せずに書いてるんでしょうかコレ。
私がなぜ、すぐに忙しいと言うのか。
言わなきゃ伝わらないからです。
みなさん、部活の経験はありますか?
私は学生時代、しょっちゅう練習で言われてました。
「声出していけ」と。
なぜか。
言わなきゃ相手に伝わらないからです。
チームメイトが自分の思うように動いてくれると思ったら大間違いです。
ちゃんと自分の行動・状況を、声に出すことが大切だと何度も教えられました。
いまでもこの教えは真理だと思ってます。
いま余裕がある。
あるいは、いまテンパってる。
それを知ってるのは自分だけなのです。
私「すいません、いまお忙しいですか?」
B「だだだだ大丈夫です! ヒマです!」
ホンマかいな。
いいですか?
あなたがトチって迷惑するのは、あなたの周囲なんですよ?
逆もしかり。
私のスケジュールの遅延で、相手に迷惑がかかるかもしれないんです。
① Aさんは、私に頼みごとがある。
② しかし私は忙しい。
③ なので即座に忙しいと伝える。
④ それならええわ、とAさんは別の人に頼る。
どうです、この流れるようなビューティフル。
もし私が ③ のタイミングで、忙しいと言うのを躊躇したらどうでしょう。
Aさんが ④ の選択に移る時間を奪うことになってしまいます。
そっちのほうがはるかに迷惑です。
☆ 忙しいと言うひとには、仕事が来なくなるから ☆
順番間違ってます。
すでに仕事が来てるから忙しいんです。
いけないのは、忙しくもないのに忙しいということです。
業務なんですからウソはいけません。
仕事を断る口実に、忙しいという言葉を使うのは、ただのサボりです。
私はそんなことしたことないです。
で……なんでしたっけ?
仕事をサボってはいけないっていう話ですよねコレ。
なんでそれが、忙しいと言ってはいけないなんて話に飛躍するんでしょう?
② 忙しいのはみんな一緒だから、忙しいと言ってはいけない。
みんな忙しい。
仕事なんだから当たり前。
それなのに、忙しいと言って現場の士気を下げてはいけない。
じゃあなんて言うのか。
A「すいません、いまお忙しいですか」
B「いまは手が離せなくて。なにかありましたか?」
って言えばいいらしいです。
……絶句です。
言い換えただけやん。
「い」「そ」「が」「し」「い」
この5文字さえ言わなければ問題ないルールだそうです。
あくまで言いかたの問題であって、忙しいというフレーズはよくない言葉なんだそうです。
忙しいという言葉を避けることが重要だそうです。
?
よくないってなに?
忙しいって、滅びの呪文かなにかですか?
放送コードにでも引っかかるとか?
なんか「忙しいと言ってはいけない派」の主張がピンとこないんですよね。
忙しい忙しいと言い続けたら、それが習慣になってしまうと。
だからダメなんだそうです。
そんなことあるわけないじゃないですか。
だって、私がそうですもん。
しょっちゅう忙しいと言ってる私ですが、いかなるときも忙しいって言ってるわけじゃないです。
かしこい九官鳥じゃないんだから。
忙しくないときには忙しいなんて言いません。
そも!
そもそも!
私が忙しいのは、複数の用事がほんの短時間に集中するからです。
午前の私:「ああヒマだ」
午後の私:「ああヒマだ」
夕方の私:「うおおおお忙しい!」
なんで一度にいろんなことが!
いそがしい!
ああ忙しい!
ハイ終わった。
ああ……ヒマになってよかったあ。
~ おしまい ~
どう忙しいかは、人によって違うと思います。
私の忙しいは「やること一気に押し寄せ」系です。
一度にいろんなことが起こって忙しい。
でも、それがこの世界の多忙のすべてではないはずです。
一日中、ベルトコンベアのように単発の仕事が入るから忙しいって人もいるでしょう。
あるいは瞬間接着剤を使う作業みたく、ぜったい途中で中断できないって仕事で忙しい人もいるでしょう。
「忙しいと言ってはいけない」っていう人は誤解してるんじゃないスかね。
みんな忙しいのは一緒だと。
一緒なわけねーじゃん。
忙しいにも、いろいろ種類があると私は思いますよ。
・瞬間湯沸かし系《することが一瞬で発生する》
・マシンガン系 《ぜったい中断できない》
・プール監視員系《その場を離れられない》
などなど。
私もそんなに世間のこと知ってるわけじゃありませんが、さすがにみんな一律一様ってことないんじゃないですかね?
他人がどう忙しいのかわからないのは、忙しいって言わないことによる弊害だと思います。
「みんな忙しいんだ!」
……みんなも忙しいって言えばいいんじゃないスか?
べつに私、そんなことで怒りゃしません。
ていうか逆に申告してほしい。
「みんな忙しいんだから忙しいと言うな!」
なーんか、他者の忙しさへの無理解を感じてしまいます。
③ 本当は忙しくないのに、忙しいと言ってる。
ムダな作業、ムダな時間、ムダな○○。
時間の使いかたに改善の余地があるにも関わらず、それをせずにてんてこ舞いしてる。
忙しいと言う人は、その工夫ができていない証拠だ!
という意見を見ました。
……えーっと。
忙しくなくなる方法ならありますよ?
ゆとりを持って仕事をする手段なら、ふつうにあります。
手を貸す相手を制限すること。
A「すいません、これをお願いできますか」
私「はい。いいですよ」
B「すいません、ちょっとよろしいでしょうか」
私「ダメです。いまAさんの頼まれごとしてますんで」
忙しいと言う人は、その工夫ができていない!
↑
これはマジで言ってんですかね?
それとも人を煽るために言ってんのかな?
昼に食堂でも行ったら、店員さんがてんやわんやしてる姿をイヤでも見れると思うんですけど。
さっきも書きましたが、断れない作業が集中するから忙しいんです。
それは当事者ではコントロール不可能なんですよ。
え?
店員さんが客に向かって忙しいなんて言ってるのなんか、聞いたことないって?
逆に聞きたいんですが、お客さんが店の人に尋ねてるの見たことあります?
「すいませんウエイトレスさん、いま忙しいですか?」
これで忙しいと返されて怒るような客は、ただの営業妨害だと思います。
誘導尋問もいいとこだ。
現場が忙しいのは、運営や店長の責任です。
店員さんは、ちゃんと忙しい旨を上に伝えましょう。
そういうのを、ホウレンソウっていうんじゃありませんか?
現場:「すいません、めっちゃ忙しいんですけど」
本部:「忙しいと言う人は、改善の工夫ができていない!」
現場:「いや、めっちゃ忙しいんですけど」
本部:「くどい! お客さんにもそれを言うつもりか!」
言っちゃえば?
もうマジで。
あ、誤解しないでください。
「そんなに忙しいと言いたいなら、古川アモロだけ言ってればいい」
というご意見もあると思います。
なんか違うんですよね。
そういうんじゃなくて。
忙しいと言ってはいけないという空気に、私はすごい窮屈感を感じてるんです。
だから忙しいを、みんなが気軽に言える社会になればいいなと思ってるんです。
④ 忙しいという字は、心を亡くすと書くから。
「忙しいという字は、心を亡くすと書きます」
「だから忙しいと言ってはいけない」
えー、いきなり自己啓発セミナーみたいなこと書いてすいません。
あの、べつにこれ私が言ったんじゃありません。
ユーチューブで同じように検索したら、これを言ってる人がいたんです。
忙しいという字は、心を亡くすと書きます。
だから言ってはダメー。
あー……
あー……なんでしょうこの、言語化しがたいこの気持ち。
なんでいきなり金八先生みたいなこと言い出すのか意味がわかりません。
こういうこと言う人たちって、ふだん鉄って言わないんですかね?
鉄という字は、金を失うと書きます。
だから言ってはいけません。
スチールと言いましょう。
えー……
イヤです。
意味不明だし。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
はい、以上になります。
どうでしたか、「忙しいと言ってはいけない」派の意見をざっと書いてみました。
あくまで私が調べた限りなんですが、その都度、私の意見も添えてみた次第です。
私にはとても下らない理由ばかりに思えました。
すいません、なんかものすごい口答えばっかしてしまって。
「忙しいという言葉を使うな」
これ要は、ネガティブな言葉を使わないようにしようよってことだと思います。
そこんとこでもう私と感覚がズレてるんでしょうね、きっと。
忙しいという言葉は、ぜんぜんネガティブじゃないです。
ただの形容詞です。
暑い。
寒い。
やわらかい。
美しい。
忙しい。
ぜんぜん使っていきましょうよ。
私はこれからも、忙しいときは忙しいとガンガン表明してまいります。
ですが、ちょっとだけ不安です。
忙しいって言われたほうは、はたしてどんな気持ちになってるんでしょう。
いえ、私は言われてもぜんぜん気になりません。
相手:
「いま忙しいです」
私:
「おっと! お忙しいところ失礼しました」
「また出直します」
それでおしまいです。
出直す余裕がないときは、食い下がって懇願します。
「ホント申し訳ないんですけど緊急なんです!」
「お願いします! かくかくしかじか……!」
作業中に割り込んだことを詫びつつ、話を聞いてくれとお願いします。
マジでそれだけです。
忙しいと言われても、べつに平気です。
だってお互いさまですから。
……私が変わり者なだけで、みんなは違うんでしょうか。
忙しいという言葉を聞いただけで、みんなは心が引き裂かれるような思いをされてるんでしょうか。
だとしたら私、今まですごい数の心をズタズタにしてきたことになります。
本気すいません。
さすがに気にしすぎだろと言ってほしい。
ですんで、忙しいときに忙しいと言ってはいけないのなら、ちょっと論破してくれませんか。
えらいひと:
「忙しいときでも忙しいと言ってはいけません」
「先輩や上司に、いま忙しいからと言われたらどんな気持ちになりますか」
「いつ話しかけたらいいのか、邪魔をしてしまって怒られるんじゃないかと、下の人間は報告を遠慮するばかりです」
「部下はホウレンソウをしにくくなり、そのため情報が上に来るのがどんどん遅れがちになります」
「結果的に全体の進捗管理が遅れるので、忙しいという言葉を使ってはいけません」
私:
「 I'm busy now 」
「 so sorry 」