闘和学園4
宿屋の主人がおどおどしい様子で近付いてきた。
「とてもお強いのですね。助かりました。ありがとうございます」
そう言うと主人は深々と頭を下げた。だが何か少し俺に対して恐怖心でもあるのか、先ほどまでとは違いやけに警戒心を感じる。
「騒いでて気になって、勝手に首を突っ込んでしまってこちらこそすみません」
「いやいやいや! 賞金首を一発で倒すなんて大したものです。……あの、おいくらぐらいになりますでしょうか?」
―――ああ、そう言うことか。この世界では依頼など関係なくして、こういう押し売りのような形でも料金が発生するというのが常識なのだろう。だから先程から怯えていたわけか。
「あー勝手にやったことなのでお金なんてとりませんよ。本当に気にしないで下さい」
「えっ……いいんですか……? 少なくとも500万ザックはとられてしまっているんですよ」
「そう言えばそうでしたね。まだ手持ちは500万ザックあるので大丈夫です」
不安にさせないようにわざと満面の笑みで応えると宿屋の主人の目には薄っすらと涙が溢れた。
「何もお礼が出来ず誠に不甲斐ないです……お礼になるかはわかりませんが、もし許嫁などがいらっしゃらなければ、私の娘のミレイでも如何でしょうか。親の私が言うのもなんですが容姿にも恵まれ色々と気の利く―――」
「お父さん! 何言ってるの!」
主人のセリフを遮って娘さんが言葉を発した。そう言いながらも娘さんの表情には嬉しさ恥ずかしさの両方が感じられる。これがよく聞く、満更でもないという状態なんだろう。
もちろん可愛い子だとは思うが、転生したばかりだしまだ身を固めようとは思えないな。
「ご好意はありがたいですが、今後プロとして世界平和のために戦っていこうと思ってますので……」
娘さんを傷付けないためにはこの理由が一番だろう。
「そうですよね……わかりました。何かありましたら全力で協力させて頂きますので!」
「助かります。早速なんですが、賞金首を捕まえたらどうすればいいんですか? あまりこういう経験がなくて」
ロープで縛っているとは言え、できるなら意識が戻る前に処理を終わらせたい。
「あ、そうですよね。世界ギルドに連れて行くか、連絡すれば来てくれますよ。連絡しますか?」
「是非お願いします」
今後賞金首で生計をたてるなら拘束系の魔法も習得しないとなぁ。
連絡してから10分程で男性二人と女性一人がやってきた。
女性は受付担当といった風貌だ。男性二人は戦闘担当で拘束のために来たのだろう。
「ご連絡ありがとうございました。私達は世界ギルドです。こちらで拘束されているのが賞金首ですか?」
「ザイロスっていう名前で懸賞金5000万ザックと本人は言ってましたが」
「お調べしますね。お待ち下さい」
女性はそう言うとスマホのような端末を取り出し調べだした。まさかこの異世界でその形状の機械を見れるとは思わなかった。
「はい、照合終わりました。懸賞金4800万ザックでしたが間違いなく手配されてますね」
こいつ……200万サバ読みやがった。いやまあ、身長168センチを170センチだと言いたい気持ちはわかるけどさ。
「懸賞金ってこの場で貰えるんですか?」
「えっと、もしかして世界ギルドに登録してないのかな?」
「はい、初めて利用します」
「ではまずは登録が先になります。この場で簡単にできますので。ちなみにご質問の懸賞金については1億ザックまでであれば振込でもその場でのお支払いでも可能で、それ以上は振込のみとなります」
そう言いながらも素早い手付きで端末を操作している。登録の準備をしているのだろう。
一緒に来た男性二人はすでにザイロスに鍵の付いた鎖のようなものを巻き付けていた。本で読んだが闘気を完全に封じる拘束具だろう。




