闘和学園2
一応バレないように静かに一階へと向かったが相変わらず軋む床と階段の音により気配を察知され、争っていた全員が一瞬静まりかえりこちらの方へ視線が集まってしまった。
ありきたりな展開に対して予想通りと言うべきか、少し気弱そうな宿屋のご主人と、それに対してリーゼントのガラの悪い男が一人、パンチパーマの目つきがヤバイ強面の男一人が囲んでいるという状況だった。先程の綺麗な娘さんはカウンターの奥で震えていた。
それにしても、この異世界でもチンピラの髪型はこういう感じなんだなぁと少し感心する。
「おう、兄ちゃん。わりぃがいま主人は取り込み中なんでな。巻き込まれたくなければ大人しく部屋に戻ってくれないか」
リーゼントが少し優しめに言ってきた。一般市民にはさすがに理由もなく絡むようなことはしないらしい。
「あの……すいません。少し乱暴かなと思いまして。もう少しだけ待ってあげれないのでしょうか?」
出来ることなら穏便に済ませたいのでなるべく丁寧に言ったつもりだが、その気遣いはまったく意味がなかった。意見をしたことで一気にチンピラ二人の目つきが変わった。
「なんだおまえ。関係者じゃないよな?」
「はい、ただの客ですが」
「ほう、いい度胸してるな。こいつらの代わりに5000万ザック支払うなら大人しくしてやるよ」
ザック……? ああ、この国の通貨単位か。そう言えば本に書いてあったけどたいした気にしてなかったな。ザックは円に対して10分の1くらいだったから500万円の借金というわけか。結構な金額だな。この古びれた宿屋で借金を返すのは相当難易度が高い気がする。
ちなみにユリーナから貰った旅費は1000万ザックなので多少は返せるが全額は当然無理だ。
「すいません、手持ちはそこまでないのでとりあえず500万ザックで一旦この場はひいてくれないでしょうか」
店の中での争いは出来ることならしたくない。戦うことになった場合、実戦未経験で本当に勝てるのかという自信がないのももちろんあるが、俺の全開の闘気で建物ごと破壊しかねないという可能性もあるからである。
「ほうほう、なるほど。借金とは別にこの場を立ち去るというためだけの金でいいんだよな?」
「出来ることなら借金返済分にあててほしいですが、無理なら仕方ないです」
「無理だね。じゃあ金だけ頂いてくぜ」
さすが借金取り、まさに悪人と言った振る舞いだ。まあ、とりあえずこの場だけでもおさまってくれればよしとするか。
500万ザックを取り出してリーゼントに渡そうとした瞬間、思いっきり右腕を振りかぶって俺の顔面目がけて拳が飛び込んできた。
「この場は金に免じてひいてやるけど、お前生意気なんだよ! この程度の金で丸く済むと思ってる態度がムカつくぜ、うひゃひゃひゃ」
不意の攻撃により俺の体は激しく地面に激突した。その場に飛び散った500万ザックを拾うとリーゼントの男とパンチパーマの強面の男は店を出ようとした。
ふぅ……これってもう正当防衛だよな?
「これだけ下手に出てるのに殴ってくるとは本当に救いようがないな」
殴られる瞬間にぎりぎり闘気で体を覆うことができたため実はダメージはまったくなかった。いやー闘気って楽しいね。
無傷のまま平気な表情でゆっくりと立ち上がる俺の様子を見てリーゼントはさすがに想定していなかったのかかなり動揺している様子である。
「悪いけどそっちから吹っかけてきた喧嘩だからね」
可能な限り抑え気味に、体中から闘気を放出させるとその勢いで受付カウンター周りの備品や家具が吹き飛び倒れだした。予想通り外でやるような勢いで闘気の放出をやらなくてよかった。
まだ上手く加減はできないが、ガスコンロで例えると最低限の弱火程度ならなんとかできる。
「こいつ……闘気持ちだ! やばい、ザイロスを呼べ!」
パンチパーマの強面が大声でそう言うとリーゼントは外へ駆け出した。
「ザイロスって……まさかあの賞金首紫炎のザイロス……!」
宿屋の主人は今まで以上に恐怖に満ちた表情をしている。賞金首ってことはチンピラとかと違って戦闘のプロってことだよな。今の俺で対抗できるのだろうか。




