闘和学園1
次の日の早朝、ユリーナが調べてくれたルートで早速闘和学園へと向かうことにした。
最短ルートで行けば半日くらいで行けるようだが少し危険な道も通るため、そこは除外され最も安全な道のりとなる。そのため丸一日かかってしまうわけだが、まあ、経験の面でまだモンスターと戦える状況ではないので仕方がないだろう。
歩きと乗り物での移動を繰り返しているうちに外は真っ暗になってしまったので、今日の旅はこれぐらいだろうか。
丁度道沿いあった、少し年季の入った宿で今晩は過ごすことにしよう。
「すいませーん。誰かいますか?」
中に入るとすぐに受付カウンターがあるが店員はいなかった。すでに部屋が満室とかで受付終了しているのだろうか。チェックインの時間が過ぎている……にしてはそこまで遅い時間でもないような。
特に応答がないので仕方なく宿を出ようとした時、カウンターの奥から慌ただしく近付いてくる音が聞こえてきた。
「すいません! お待たせしました!」
元気よく店の奥から出てきたのは、この古びた宿からは想像できない綺麗な若い女の子だった。年齢は今の俺と同じくらいだろう。
「あの、今日って泊まれますか?」
「ちょっと待ってくださいねー。いくら急用って言ってもいきなり店番やれって無茶苦茶だよ」
はっきりと俺にも聞こえているが、視線は宿帳に集中しているので、恐らく独り言だと思われる。
「今晩だけで大丈夫ですか?」
「はい、明日の早い時間には出発しますので」
「食事の提供もできないんですが……」
そう言いながら彼女は宿帳から顔を上げて初めて目があった。
「あ、イケメン……」
「えっ?」
「あー! なんでもないです! すいません。私ってすぐに心の声が出てしまって……」
今間違いなくイケメンって言われたよな? 目が合って見つめられたよな? いやー前世と違って快感だね。イケメンバンザイ。
「はは、食事もいらないです。寝れればいいので」
「あ、はい! では大丈夫です! 2階のお部屋です。どうぞ」
木のプレートで年代を感じる鍵を受け取り部屋へと向かう。階段や廊下も歩く度にギシギシと音がするが、一体築何年なのだろうか。
部屋に入ると少々カビのような、古い建物特有の匂いがするが、転生前の現代を思い出させる匂いだ。懐かしさを感じる。
寝具はキレイに整えられており、寝るには問題なさそうだ。試しにベッドに横になってみるが寝心地はなかなか良い。と、急に睡魔が襲ってきた。
まだ飯も食ってないしシャワーにも入りたいんだけどなぁ……。
「いい加減にしろ、いつまで待たせりゃ気が済むんじゃ!」
「お客様もおりますのであまり大声で……」
「なら早く借金返せ、借金! 返せないならお前の娘を貴重な労働資源としと貰ってくぞ? うひゃひゃひゃ」
少し眠ってしまっていたようだが、突如として一階の方から聞こえた怒鳴り声で目が覚めてしまった。思っていた通りだが防音性は皆無だな。
このやりとりだけでおおよそのことがわかってしまう程まとまっている。先程の娘さんのお父さんが帰ってきて、借金取りがきて、担保として娘を貰っていくぞという王道展開。
黙ってるわけにはいかない……が、実戦で闘気を使うのは初めてだし、相手が本当に強いという場合もある。
何も関わらないというのが正解なのは間違いないが……転生してまでそんなカッコ悪いことはしたくない。何のための転生なんだよ。
覚悟を決めて騒ぎ声のする一階へと向かった。




