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復活8

「意識のあったのは1週間程度ですが、この数十年本当にありがとうございました」


 事実をそのまま言ったが、変なお礼の挨拶だなと思う。

 リハビリに付き合ってくれた看護師や、長年診てくれていた医者が玄関口まで見送りに来てくれた。シエノは昨日退院したようで最後に会えなかったのが残念である。

 

「まさかこんな元気に退院する姿が見れるとは……!」


 そう言う看護師の目には薄っすらと涙が見えた。まだ若いし、きっと2、3年程度の付き合いだと思うが、そんなに感激してもらえるとは嬉しい限りだ。


「皆様の治療のおかげです。本当にありがとうございました」

「しばらくは私が面倒見るので心配しないでください。何か体調に変化があればすぐに連れてきますので! ありがとうございました」


 ユリーナが深々と頭を下げた。本当に礼儀正しい良く出来た妹だ。


「それなら安心だね。何かあれば遠慮なく来ていいからね!」


 病院にはあまり何度もお世話になりたくはないな。


「とてもありがたいですが、またお世話にならないように健康には気を付けます!」

「あはは、そうだね。じゃあ、頑張ってね!」


 病院から出ていく俺とユリーナに対して、看護師は最後まで手を振ってくれていた。




 ユリーナに連れられるまま数十年ぶりに我が家へと帰宅することとなる。転生後の俺は当然初めての場所なので懐かしさとかは何も感じないだろう。

 もしユリーナがいなければ、もしかしたら行こうとは思わなかったかもしれない。実家と言っても知らない場所には変わりないわけだ。孤独な転生ライフを避けられただけでも、ユリーナの存在は本当にありがたいと思う。



 自動運転の車のようなものに乗り、1時間ほどすると小さな村に到着した。何件か家を通り過ぎると、奥の方にある一軒家の前に停まった。どうやらここが家らしい。乗り物から降りると自動運転の車はそのまま元来た道を戻っていった。

 家の感じは日本の鉄筋コンクリートとは違う。石のようなレンガのような見た目をしており、ドアは木製だ。


 壁を触ってみると見た目よりも丈夫そうな印象だ。記憶はなくても体が懐かしさに反応するかと思ったがそういうこともなさそうだ。普通に初めて訪れたという感じだ。


「あまり記憶にないよね。ここでお兄ちゃんは生まれ育ったんだよ」


 ユリーナが内ポケットから鍵を取り出して玄関ドアを開けた。

 中に入るとすぐに居間のような大きな部屋があった。広い居間の中に台所と暖炉もある。


「そんな緊張しないでよ。自分の家だからね。くつろいでいいんだよ」


 初めて訪れた家で、すぐにくつろげるほどの順応性はない。とりあえずは食卓テーブルの椅子に座ることにした。


「まずはご飯の準備でもしようかな」


 ユリーナはすぐに台所の方へと向かった。


 さて、今後の人生だ。このままユリーナに守られながら生活を過ごすのも悪くはない、が、せっかく転生してただのニート生活をするというのはやはりもったいない。

 まだ目覚めていないだけできっと俺には最強になれる可能性はあるはずなんだ。


「あのさ……少しいい」

「ん? どしたの?」

「やはり俺も世界平和のために戦いたいんだよ」

「それは……前にも言ったけどまずはある程度強くなってからじゃないと……」

「ユリーナの気持ちもわかるし、本当はそうしたいんだけど、そこまで待ってたら救える命も救えなくなってしまう。俺らみたいな悲しい思いをする子供をこれ以上増やしたくない」

「それはそうだけど……」


 どう言えばユリーナの説得に成功するかを考えた時、情に訴えるのが効果的だと思った。しかし決して口から出任せではない。

 最初は最強になった自分を見せびらかし、頼りにされる充実した人生を過ごすのが目的だった。しかし思っていた以上に荒れているこの世界を知り、俺の力でどうにか平和なものにしたいという思いも芽生え始めていた。


「ほとんど死人同然の俺が、このタイミングで生き返ったということは、何か意味があるんじゃないかなと思ってる。世のために何かできるんじゃないかって」


 台所で料理をしていたユリーナの動きが止まり、何かを考えているのか俯いてしまった。


「ん? 何かあった?」

「実は私……お母さんと約束したんだ。もしお兄ちゃんがいつか目が覚めたら、今後の人生は静かに平穏に、幸せに過ごせるように守ってほしいって」

「ユリーナ……」


 なるほど、だから前にもシエノからの勧誘を強く断っていたのか。そう言えばあの時も約束がどうこう言っていたな。


「お母さんの約束も守りたいし、お兄ちゃんの言ってることもわかる。一つ提案なんだけど」

「提案って?」

「今まで私が培ってきたことを教えるから、お兄ちゃんも強くなってほしい。戦いの場に出る以上いつ強敵が出て大怪我したり……死なないように強くなってほしい」


 なるほど、要はユリーナによる修行というわけか。こちらとしては願ってもないことだ。いくらポテンシャルがあってもそれを生かせないことには意味がない。魔法とか早く使ってみたいし。


「もちろん。とてもありがたい。そう言えばユリーナはなんでそんなに強くなれたんだ? そんな簡単にSランクとかなれないんだよね?」

「なんでだろう……正直わからないんだよね。努力はしたけど、完全な自己流だし……才能みたいなのもあるのかな……って考えるとお兄ちゃんは私よりもきっと強くなりそうだね」


 話しながらもユリーナは台所でテキパキと動き出していた。


「とりあえず今日は休もうよ。いま夜ご飯作ってるからさ。修行は明日からね」


 慣れた手付きで材料や調味料を取り出し調理をしている。次第に美味しそうな匂いがしてきた。

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