異世界知識ゼロ
俺の名前は織田龍二。
人気俳優の織田○二と、名前は似ているが、中身は全く似ても似つかない。
かっこよくも無いし、勉強もできない、
得意教科無し、運動もできない、体育も、どちらかというと苦手教科だった。
運動ができないから、苦手だからやる気が無い、やる気が無いから苦手のまま。
当然、異性にも相手にされるはずもなく、なんとなく学校生活を過ごしていただけだった。
学校の同級生に、やたらと異世界ファンタジーに詳しいやつがいた。そいつが自慢気に話すのを、横目で聞いていた記憶だけはある。
できることなら、本当に織田○二みたいに大活躍して、女子にもモテたかったんだけどな。
そして、卒業後はIT関連企業に就職した。
そして、情報処理の部署へ。取引先企業のデータベース入力などを、主に行った。
異世界とは全く無縁の人生を送るかと思われていた。ところが、あることをきっかけに、俺の人生は大きく変わる。
俺の家は、河川敷の近くにある。家の窓から川が見え、近くの鉄橋には電車が音を立てて走るのが見える。
そのすぐ横には、自動車の走る高架橋も架かっている。
ある夜。その日は夜更かしをしていた。
すると、雷が落ちたかのような轟音と、雷に打たれたような衝撃を体に感じたのと、次の瞬間、まばゆい光が包み込む。
次の瞬間、見たことも無い場所にいた。
「おいおい、ここはどこなんだよ。」
ここは、どう見ても河川敷ではなく、うっそうとした森の中だ。
川らしきものも無い。電車の走る鉄橋も無ければ、自動車の走る高架橋も無い。
いったい、ここはどこなんだ。方角もわからないまま、さまよい歩いた。
地図を調べようにも、調べようが無い。
どうやらここは、地図には載っていない場所のようだ。
森を抜けると、今度は草原が広がり、川が流れている。しかしやはり、電車の鉄橋も、自動車の高架橋も無い。
ふと、異世界ファンタジーのことを自慢気に話していた、あの同級生のことが頭をよぎった。もしかして、あいつが話していた、異世界とかいうところなのか?と思った。
これからこの異世界で、どうやって暮らしていったらいいんだと、途方に暮れたこともあった。
何しろ、こっちの世界では、俺たちの生きていた世界、つまり、現実世界の常識とか情報とかが、まるで役に立たないからだ。
今まで、情報処理の仕事をしてきて、いざこっちの世界に来てみたら、そんな堅苦しい情報なんか、必要無いんだとよ。
今までの仕事の中で得てきた能力も情報も、こっちの異世界では何の役にも立たないという、カルチャーショックを受けた。
しかし、気落ちしていられない。俺は、
この異世界での生活に順応するため、新たなスキルを手にした。
それが、『のんびり農業ライフ』と、『のんびり畜産ライフ』というものだ。
いろんな野菜や果物や穀物を育てながら、のんびり過ごす、時間に追われることも無い生活だ。
納期に追われることも無い。自分たちの育てた作物は、全て自分たちが売り買いしたり、調理して食べたり、加工して食材にしたり、あるいは、食肉、牛乳、卵、毛皮なんかも、自分たちで好きなようにしていいという。
そんなこんなで、のんきに日々を過ごしているのだが、この先もこんな生活が続いていくのか?
その日の夜は、とんかつと、採れ立て野菜のサラダを食べた。とてもおいしかった。
それと、これも採れ立てのオレンジの果汁
100%の、オレンジジュースを飲んだ。