俺たち
くしゅんっ。
誰かのくしゃみで目が覚める。
目の前の葉っぱの屋根から覗く眩しい光が目を刺して横を向いた。
朝だ……。
昨日一緒に寝たはずの三人は誰も隣にはいなくて、どうやら今日も俺が一番最後らしい。
跨っている太い木の枝はとても快適とはいえず、起きようとは思うものの、朝の身体というのはなかなか重くてそう簡単にはいかない。ろくに動けずにいると今度は瞼がまた落ちてこようとする。
皆、どこにいるんだろう……。
「お、は、よ! 寝坊助さん」
突然、目の前に凜の顔が飛び込んできた。
「……おはよ」
また寝てたのか。
仕方がなく力を振り絞って起き上がる。
「杏、ほんっと朝弱いよなぁ」
心配屋な姉に手を添えられながら、一歩一歩と地上へと降りる。
好きで寝坊助な訳じゃないんだけど、どうにも朝だけは駄目なんだ。他の早起きな姉や妹たちとは似ても似つかない。
「おはよう。起きてる?」「今日ちょっと早いね!」
話しかけてくる陽と雪に頷きながら、差し出された水の入った竹筒と干した果物を受け取って座る。
役に立たないな、俺。
昨日だって、女の陽があんな大きい奴と戦ってたのに、俺ときたら荷物持ってこっそり逃げることしかできなかった。陽は馬鹿みたいに強いから、俺が同じところに立てるなんて微塵も思ってはいなんだけど。あそこに入れるのなんて凜くらいだろう。
二人がどうしてそんな闘えるのかは、俺は知らない。最初からそんな感じだったし。
「身体、濯いでくる」
「おー」
運動がてら、手近な木に登り、水音のする方へと木伝いに進んでいく。俺じゃ姉二人のことは守れないけど、いざというとき自分の身くらいは守れるように、妹の雪くらいは一緒に逃げれるように、身体だけは動かせるようにしておくんだ。
途中木の中に見つけた木の実に手を伸ばす。
軽く握るとちょうど熟している具合だったので、干して備蓄にしようと決めて懐に入れた。
重くなった懐を軽く支えながら次の枝に跳び移る。
震動で降ってくる水が少し心地良い。せっかく乾きかけた衣が濡れたら姉たちに叱られるだろうかと少し考えるが、幸い今日は目が眩みそうなほどの快晴だ。きっとすぐ乾くだろう。
俺は俺のできることを探しながら、いつか平和にゆったり暮らせたらなんて、なんとなく思っている。
仲が良いからって、何があってもずっと一緒にいられるのかなんて、誰にもわからないから。