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箱物語  作者: 胡虹こいろ
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箱――


幼い私の生きた箱。


たくさんの悲しみと悦び、歪みを生んだ箱。


私たちの、はじまりの場所。





「さあさあ、そろそろ会合ですかな? (はる)さん」


そう私に問うてくるのは(りん)。一応私の妹だけど、同じ十四歳で、多分私より聡明だ。どちらかというと相棒みたいな感じだと勝手に思っている。


普段の落ち着いた声の調子のまま、どこかおどけたような口調で言ったのは、皆が目を背けていたいことを考えるのに、始まりくらいは少しでも明るくと考えたのかも知れない。


「しょうがないよねえ、するかぁー」


私もせっかく凜が作ろうとしてくれた空気を壊さないよう声色を明るくする。


「はい、集まるー」




会合、という言葉は大袈裟で、実のところは私と凜、それから弟の(あんず)と妹の(ゆき)を合わせた兄弟四人で話し合いをするだけのものだ。いつ誰からか「会合」と呼ぶようになっていた。


宿の小さな部屋の真ん中に、四人で向き合って座る。


膝を抱えてじっと座っている杏、座布団を抱いて黙って床を見つめている雪を見て、私と凜は顔を見合わせる。

これは本当に、楽しくない時間だから。


私たちの考えたくないこと――それは、今いる村を出ていくかどうか。


私もそっと、重い息を吐いた。


「じゃあ、はい。私良い?」


すっと手を挙げたのは凜だ。


「ここ、子どもには働かせてくれないでしょ? あと二年自立できないのはきついな」


「確かに、それは思ってた。この村、良いにも悪いにも子どもをすごい大事にするよね」


私が頷くと、いつの間にか顔を上げていた雪が、ぱっちりとした黒目がちの目をこちらに向けている。


「お願いしたら、働かせてくれるかもよ?」


人懐っこく別れの苦手な雪は、村を離れないことに寄った意見を言うことが多かった。


「でも子どもなのに働いて可哀想だとか思われるのは嫌だな」


凜の言葉に全員がなんとなく頷く。


「ここはちょっと、大人にとって子どもが守るだけの対象な感じあるもんね。大切にしてるのは分かるけど」


「そうそう」


少しの沈黙が流れる。

見えてきた結論を口に出すか迷う時間。



「……出る?」



私がそっと言うと、誰かの小さく息を吐く音だけが聞こえた。


誰も、表情は変えない。

それが返事の言葉より先に、考えの一致を示していた。


「私はいいよ、ここで妥協するんだったら他にもあった気がする」


「俺も」


最後に雪が頷くと、自然とふっと空気が緩む。会合はこれでおしまいだ。



「なぜか色々教えてくれるのは良いけどね、読み書きとか作法とか」


軽くのびをしながら言う杏に、凜がにやりとしてみせる。


「もうちょい吸収してから出る? 後々役に立つかも」


「やだよ余計出にくくなるじゃん」


弟に不機嫌な顔を向けられる凜を見て思わず笑うと、雪も笑っていた。


「早めに出よっか」


言うと、雪が切り替えるようにぽんと軽く膝を叩く。


「じゃあ明日!」



「「賛成」」


皆がばらばらと動き、荷造りが始まる。




村を出るのはもう慣れたものだ。村を点々とし始めてもう五年になる。長くいた村もあるが、どこも最後には離れる選択をしてきた。今回も、きっと次も。



旅の終わる日なんて想像もできないまま、私たちは居場所を探して、旅をしている。




これから話すのは、そんな私たち四兄弟の歩いた道の、ほんの一部。



ここまで読んでくださってありがとうございます。


ためるのが苦手なので少しずつ外に出していきたい気持ちで投稿を始めてみた物語です。草稿の段階に近いかもしれない。予期なく大幅な内容変更だって有り得ます。


それでも良いよって方がいらっしゃったら

ありがとうございます。これからよろしくお願い致します。


胡虹こいろ

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